平成25年度室蘭工業大学入学宣誓式 告辞

 北国ではまだ早春とよぶに相応しい本日、ご来賓ならびに名誉教授の諸先生のご臨席のもと、平成25年度入学宣誓式を行いますことは、室蘭工業大学すべての教職員、学生の慶びとするところであります。本年度入学者は、工学部学士課程の676名、大学院博士前期課程が215名、博士後期課程の7名、合わせて898名のみなさんです。この中には海外からの留学生が学部に17名、大学院に12名、合わせて29名含まれております。また学部入学者640名中、女子学生は61名、率にして9.5%、日本人学生の出身地は36都道府県に及びます。

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。また長い歳月にわたり勉学の環境を整えられ、本人たちの努力を支えてこられたご家族ならびに関係者の方々にも、心から敬意とお祝辞を申し上げます。

 

 さて入学宣誓式の本日は、大学在学中にどのようなことを心がけるべきかについて、新入生のみなさんに私からの期待を述べてみたいと思います。

 

 みなさんも実感しておられるように、今世紀に入ってから、世界も日本も、構造的とも言えるような大きな変化に遭遇しております。その一つは、経済のグローバル化で、これにより日本の経済や政治も、地域の産業や雇用も、地球規模の金融や経済の動きに、より敏感に、より深く影響を受けるようになってきました。もう一つは、技術革新に関連する国際競争の激化で、こちらはつい先ごろまで日本が優位に立っていた製品や技術が競争力を失ったり、先端技術や開発途上の有望な新技術に手強い競争相手が現れたりと、やはり厳しい現実に直面するようになりました。経済や科学技術だけが社会の構造的な変化をもたらしている要因ではありません。わが国では、急速な少子高齢化がこれに加わります。生産年齢人口の減少がすでに始まっており、わが国が歩もうとしてきた成熟社会の前途に厳しい状況が生まれてきております。またエネルギーや資源の安定的確保、あるいは地球規模の気候変動や核の拡散、国際的テロリズムの脅威なども、日本の将来を不確実にしている要因として挙げられます。

 

 それでは、このような予測が難しい将来を生きるみなさんにとって、これから始まる大学生活で、どのようなことを心がけるべきでしょうか。この問いに私なりの考えを述べてみたいと思います。

 

 ハンガリー系英国人の電気工学者・物理学者、ホログラフィの発明で1971年にノーベル物理学賞を受賞したデニス・ガボールは、その著書「成熟社会-新しい文明の選択」の中で、次のように述べています。

 「未来は予測できないが、未来は発明できる。人間社会を形作る発明をするのは人間の能力である。」

 

 いつの時代にも未来は見通しがたく、国の進路や政策の選択は困難に満ちており、ときには誤りさえ犯しました。それにも関わらず、国は将来への希望とビジョンを国民に示し、ガボールが言うように、自らの手で未来を発明しようとさまざまな政策を展開してきました。地方政府、経済界、産業界なども、それぞれの分野や守備範囲で、新たな未来を切り開こうと方策を練り、手を尽くしております。これらは民主主義に則り、あるいは市場を経由して、国や地方政府、各界のリーダーにその判断を委ねるしかありません。

 

 それでは翻って、未来を発明するために私たち自身がしなければならないことは何でしょうか。それは入学したみなさんに心がけていただきたいことにもつながります。結論から先に言いますと、それは「主体性」、「社会性」、そして「創造性」の三つに要約される、と私は考えます。

 

 そこで、最初は「主体性」です。目指すところは、生涯にわたり自分を持続的に成長させることができるように、生涯学び続け、主体的に考え、それを行動に移せるようになることです。自己管理力、生涯学習力、リーダーシップなどを身につけることが具体的な目標となります。大学では、授業や課外活動、就職活動など、キャンパス内外のすべての活動に「主体性」が求められます。ですから大学生活自体が「主体性」を鍛えていく機会とも言えます。大学在学の期間をみなさんは是非有効に活用して下さい。

 

 次は「社会性」です。目標は、異なる言語、世代、ジェンダー、立場を超えてコミュニケーションできるようになることです。グローバル社会、女性や高齢者の参画が一層拡大する今後の社会では、コミュニケーション能力が各段に重要になります。異なる言語的・文化的背景の人びとへの理解と共感、さまざまな立場の人びとと協調・協働して行動できること、それらの前提となる確かな倫理観、市民としての社会的責任などが、「社会性」の具体的な中身になります。本学には現在、アジアを中心に10カ国、100名を超える外国人留学生がおります。また女子学生の比率も10%近くになります。少数とはいえ社会人の大学院生もおります。さまざまな年代と出身国、多彩な職種の教職員がおります。大学はさながらグローバル社会の縮図となっていることを実感すると思います。教室や実験室で、図書館や研究室で、大学会館や課外活動で、これらの多様な人びとと交流し、異文化理解とコミュニケーション力の向上に努めて下さい。

 

 三つ目は「創造性」です。最近は政府からも経済界からも、大学に対して、グローバル社会で活躍できる人、「グローバル人材」、イノベーションを創出できる人、「イノベーション人材」への期待が高まっています。これらの合唱は、大学卒業者を社会の各方面で必要とする人材とみなしての発想です。それ自体は理解できますし、私たちは国立大学の一員として養成の責任を負っております。しかし、私が思いますには、これを裏付ける「創造性」は、みなさん自身、将来自らの未来を発明するうえで、基幹となるからこそ、心に留めてほしいのです。「創造性」は幅広い教養と深い専門知識を前提としますが、それだけで獲得できるものではありません。想定を超えるような困難な事態、答えのない問題に解を見出していく際に、それまで蓄えた経験も含め、あらゆる能力を結集して突破する力、その源泉が「創造性」です。ですから、「創造性」を育むことこそ、大学教育の本命と言っても決して過言ではありません。

 

 室蘭工業大学は、学生一人ひとりの多様な才能を伸ばし、幅広い教養と国際性、深い専門知識と創造性を養う教育を行います。

 室蘭工業大学は、総合的な理工学に基づく教育を展開し、未来をひらく創造的な科学技術者を育成します。

 

 室蘭工業大学は、創造性を養うために、特色のある学部教育と大学院教育のプログラムを用意しております。それらはかなり洗練されたものと自負しており、また外部からも高い評価をいただいておりますが、まだ進化の途上にあります。新入生のみなさんは、室蘭工業大学の恵まれた学習環境と優れた教職員の指導体制のもとで、一歩、一歩、自分の成長を確認しながら、工学の道を歩んで下さい。これまで分かった科学と技術に関する知の体系と方法を学び取るとともに、みなさんの挑戦を待ち受けている未知の問題を発見することも忘れないで下さい。また大学院生のみなさんは、創造の世界を存分に冒険して下さい。ときには退却や再出発もあるかもしれませんが、それは発見や発明の代償であると想い定めて下さい。

 これから始まる室蘭工業大学での生活が、みなさんの「自主性」、「社会性」、「創造性」を育む、実りの季節となることを期待し、入学式の告辞とします。

 

                              平成25年4月5日

                               室蘭工業大学学長 佐藤 一彦

 

 

更新年月日:2013年4月5日

作成担当部局:総務グループ総務ユニット

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