平成29年度学位記授与式 告辞

   雪解けも急速に進み,春を感じ始めた本日、ご来賓並びに名誉教授のご列席のもと、学部卒業生、大学院修了生およびご家族、ご親戚の皆さまとともに平成29年度学位記授与式を行いますことは、室蘭工業大学にとりましてまことに慶ばしく、ご列席のみなさまとともにこの喜びを分かち合いたいと存じます。

 本日、晴れて学部を卒業し学士(工学)の学位を得られた方は592名、大学院博士前期課程を修了し修士(工学)の学位を取得された方は237名、また大学院博士後期課程を修了し博士(工学)の学位を授与された方は16名です。そして卒業生・修了生の中には外国人留学生が31名おられます。

 これら845名の皆さんに、学位の取得並びに卒業・修了を心からお祝い申し上げます。また皆さんの入学から今日まで、修学を励まし支えてこられたご家族並びに関係者の方々に敬意とご祝辞を申し上げます。さて本日は学位記授与式に当たり,卒業生・修了生の皆さんに,私からの期待とメッセージを述べさせていただきます。

 今年年頭から日本の株価,米国の株価は急激な上昇を見せましたが,現在はやや乱高下しているものの,日本の経済は一応落ち着いてみえます。学部生そして博士前期課程修了生の皆さんの就職状況も,本州勢を中心とする活発な求人志向により,たいへん良好といえる情勢でした。ただ,今後については経済一つをとっても,先行きを予測することはたいへん難しく,変化が激しい状況がつづくと考えられます。さて,大学という社会からプロテクトされた環境から,社会・産業界の荒波のなか旅立つ皆さんには十分な覚悟と準備が整っているでしょうか。

 本学での学びにおいても,最初は基礎から入りますので問題や課題には,たいていは正解が存在していたと思います。一方で課題解決型の授業や,演習や自ら考える授業のなかで,あるいは実験中やその後のレポートの考察の際に,そして学生時代の学びの仕上げとなる卒業研究や大学院での研究課題に取り組む際には,正解どころかそもそも答えがあるかどうかわからない問題に遭遇した経験が幾度となくあったのではないでしょうか。答えがあるかどうかわからない問題・課題と立ち向かい,答えに近づく,チャレンジするのはとても勇気がいることです。なぜなら,もし答えにたどり着けなければ,あるいはどんなに頑張ってもそもそも答えがないかもしれないという不安に打ち勝つのは容易なことではありません。私も若き研究者の頃,そのような不安を感じながら研究をつづけていたことがありました。ただし,自らの教育や修行そのものに意味がある学生時代は,たとえ答えに到達できない課題にぶつかったとしても,課題解決に向かう過程や費やした時間そのものに価値を見いだせます。一方で,一般的な社会・企業では結果や成果のみが問われますので,答えにたどり着けなかった過程や時間は無駄と判断されてしまうかもしれません。より厳しい社会ですね。皆さんは,学生時代に答えがわからない課題にぶつかったときの体験,そこから何を調べれば良いか? ゼミの同僚,先輩,指導教員と相談したり,ヒントをもらったり,課題解決へ向かった体験をきっともっていると思います。学生時代の貴重な経験を会社や次のステージで,形はともかく,経験値として大いに活かせるときが必ず来ると思います。

 さて学部修了の皆さんは,大学での1年間の卒業研究を含む4年間の学びを,博士前期課程修了の皆さんは2年間の学びと修士論文の研究,そして博士後期課程修了の皆さんは,さらに3年間の研究と,それを世界で初めての科学的・工学的知見を含んだ論文としてまとめ,世界に公表する経験を積んで,本学を旅立って行くことになります。学士課程の卒業研究,博士前期課程での修士論文研究,そして博士後期課程での博士論文研究,それぞれレベルの差異はありますが,答えが見えない課題に対して,オリジナリティをひねり出したり,あるいはひねり出そうと努力した体験を持っています。この経験を時に思いだし,それぞれのステージで,また頑張っていただけるよう,期待しています。

 ところで,皆さんは人生100年時代という言葉を聞いたことがありませんか?ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授がLife Shift100年時代の戦略を唱えています。安倍総理も自らが議長となり「人生100年時代構想会議」を立ち上げ,100年時代を生きぬく人材育成,人づくり革命を目指しています。実際,平成28年生まれの日本人男性の平均寿命は81歳,女性は84歳となっています。男性の50%は84歳まで,女性の50%は90歳まで人生が伸びており,まさに人生100年に近づいています。100年間を有意義に生きぬく人生の戦略が必要となっています。皆さんは,幼稚園,小学校,中学校,高校そして学びの集大成として大学で高等教育を学んだわけで,これから長い社会人時代が続くことになります。本学で皆さんは各自の専門分野を学び,学士,修士,博士の学位を取得されたわけですが,これまでは学びはこの時点で終了だったかもしれません。しかし人生100年時代ともなると,皆さんはこれまで学んだ20数年間の3倍も4倍も社会を生きぬき,自らを磨き,切磋琢磨して行くことになります。時代時代により,必要な専門知識はどんどん変わっていくことでしょうし,これからの人生の途中,途中で,新たな知識,専門分野の充電,学び直しを行う時期が訪れるかもしれません。本日,卒業・修了される皆さんの学びの時間は,今日でもう終わったと思われてるかもしれませんが,実はそんなことは全くありません。私ごとになりますが,私は学生時代,勉強することが好きだったわけではありません。しかし,職業として研究にそして教育に携わることになり,ある意味生きる糧として勉強・学習をつづけて,今日に至っています。大学執行部の仕事が主体となるにつれて,仕事の内容は教育・研究から大学運営へと変化しましたが,学生時代から学長になっても,毎日宿題を持ち帰って,宿題をやっています。けっこう,学びつづけていますね。これは教員という職業のせいも多少はあるかもしれませんが,人生100年時代を生きる皆さんは,大学を卒業しても,やはり学びつづけることになります。学び直しのため,再び本学を訪れることがあるかもしれませんね。皆さんが本学で身につけた専門分野を一つのベースとして,社会で活躍するために,さらに専門を深めたり,あるいは幅を拡げ,さらには新たな先端分野を学んだり,社会・産業・時代の状況に応じて学びつづけて,これからの人生を有意義に過ごすための準備をつづけてほしいと思います。

 さて冒頭でも述べましたように,本日旅立つ学生諸君のなかにも,外国人留学生の皆さんが31名います。日本に残って活躍する人もたくさんいますし,自分の国に戻って活躍する人と様々でしょう。室蘭工業大学や室蘭の地とのつながり,日本とのつながりは,皆さんの大きな財産ですし,是非大事にしてください。また留学生の皆さんのおかげで英語でのコミュニケーション,異文化交流など本学キャンパスのグローバル環境も少しずつではありますが整いつつあると思います。ありがとうございました。

 さて最後になりますが,皆さんの周りにはたくさんの応援団,仲間がいます。本学の同窓生だけでも30000人を超えており,産業界・社会で実績を残し,室蘭工業大学のコミュニティを形成し,活躍している先輩たちが皆さんのこれからの活動を期待と温かい目で見守っています。 室蘭工業大学もこれからも皆さんとともに,日本のそして世界の輝かしい未来に向かって,教育と研究そして社会への貢献を大きな柱として歩みます。皆さんのご健勝とこれからの輝かしい未来でのご活躍を祈念し、学長告辞といたします。

 

平成30年3月23日

                    室蘭工業大学学長 空閑良壽

 

 

更新年月日:2018年3月23日

作成担当部局:総務広報課総務係

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