2020年 学長の年頭挨拶

2020年1月6日

室蘭工業大学長 空閑 良壽

確かな研究力をベースとした教育力

 

 教職員の皆さま、明けましておめでとうございます。

 年末年始の10日間のお正月休みの間、皆さまリフレッシュされて、令和2年を迎えられたことと思います。

 本日は、令和2年度の予算情報とともに、本年が第3期中期目標期間の4年目そして5年目となる仕上げ期間として非常に重要な時期となりますので、あらためまして、本年、取り組むべき課題についてお話しさせていただきます。

 

 まず、令和2年度の予算関連の動きをご紹介します。本学の施設関係の大きな予算として、学内の安心・安全対策の一環として、老朽化が進んでいた学内全体の道路舗装整備費が措置されました。他大学にもおおむね同様な措置がされています。

 そのほか研究面では、機能強化経費(共通政策課題分)として今回初めて、航空宇宙関連で共同利用・共同研究体制の充実として、ロケットスレッド実験設備を活用したLiner Hyper-G環境学術領域の創成が、さらに基盤的設備等整備分として、航空宇宙用エンジン統合実証研究設備費がつきました。本学が力を注いでいる航空宇宙関係の研究・教育の活性化にはたいへん素晴らしいお知らせです。

 

 国立大学法人全体の運営費交付金等総額は、平成16年度の法人化以降28年度までに20%程度下がり、令和2年度は約1兆1000億円となり、そのうちの約10%すなわち1100億円が競争的評価予算枠となり、本学でいえば2億5000万円以上の大きな金額が評価配分対象となります。

 昨年も申し上げましたように、教員の人件費に換算するとおよそ25 人分の金額を競争的に獲得する必要があることとなります。また、少子化により18 才人口の減少が顕著となる一方で、進学率の上昇も鈍化が始まり、センター試験受験者数は2018年をピークとして減少に転じています。質の高い志願者の確保は、国立大学全体の喫緊の課題です。このような背景の下、本学は北海道に位置する国立の工業大学としての機能や特徴を大きく打ち出して、その存在価値を高め、社会にアピールしていくことがこれまで以上に重要であることは言うまでもありません。

 

 本学は、昨年4月より「工学部」から学士(工学)と学士(理工学)を輩出する創造工学科とシステム理化学科の大くくりの2学科体制の理工学部へと大きな教育改革を行いました。ここではまず、ものごとの本質をつかみ、探究心を養うために自然科学・理学教育を全学的に充実させました。さらにICTやAIの本質を理解して使いこなしMONO・価値づくりに貢献できる学生諸君を育てる工業大学ならではの情報教育を、学部共通そして学科共通の必修科目を多数充実させることに全学体制で推進しています。今後はその実質化が重要であることは言うまでもありません。さて、本学の教育を推進する際のkeyとなるものは何でしょうか?

 

 私は本学の強みは、「確かな研究力をベースとした教育力」にあると強く信じています。例えば、世界的論文のデータベースの一つであるScopusに登録された論文数でみると、平成16年の法人化以降、第1期6年の平均は164報/年、第2期6年の平均は203報/年、第3期(H28-30までの3年間)の平均は255報/年と着実に増加しています。

 さらに、論文の質(分野補正をした被引用数が高い論文)を考慮したFWCI ×論文数でみると、この傾向はさらに顕著になり、第1期6年の平均は107 point/年、第2期6年の平均は145 point /年、第3期(H28-30までの3年間)の平均は335 point/年と飛躍的に向上しています。

 また、世界のTop10%の論文数でみても、ほぼ同様な傾向であり、第1期6年の平均は年間9報、第2期6年の平均は年間13.7 報、第3期(H28-30までの3年間)の平均はなんと年間30報と素晴らしい増加傾向です。

 

 ロンドンに拠点を置くTimes Higher Education (THE) のTHE世界大学ランキング(「研究力」を主な指標として、Teaching, Research, Citations, Industry Income, International Outlookの4つの観点から評価される)では、2018年9月に1001+位で初めてランクインし、昨年9月には軒並み日本の主要大学が苦戦する中、801〜1000位に上昇しました。この結果は、全国の国立大学では13位タイであり、道内大学では北大に次いで、札幌医大と並んで2番目です。

 我々のよく比較対象となる11工科系大学(北見工大、室工大、東工大、電通大、東京農工大、東京海洋大、名工大、豊橋技大、長岡技大、京都工繊大、九工大)でみると、TOPの東工大に次いで、東京農工大と並んで2位であり、他の大学よりも上位にいます。

 これは単に評価の一つの切り口であり、他大学にこれから追いつかなければならない観点(教員一人あたりの論文数や外部資金獲得額など)も多数ありますが、私は大変素晴らしいことと捉えています。

 加えて、コンピュータ科学分野の論文被引用指数は、なんと2年連続で日本一に輝いています(朝日新聞出版 大学ランキング2019年度版、2020年度版)。さらには、情報系の董冕雄教授と太田香准教授が科学・社会科学分野における世界最高峰の研究者を選出したHighly Cited Researchers 2019 (Clarivate Analytics)に選出されており、コンピュータ科学分野では日本から3名のうち2名が本学という快挙でありました。このコンピュータ科学分野の優れた研究力は必ず本学の教育力に活かされると大いに期待しています。

 

 一方で、北海道地域への研究面からの貢献・活躍も素晴らしく、2016年度から2019年度まで4年連続で若手教員が北海道科学技術奨励賞を受賞しています。徳楽清孝准教授は認知症予防に関してバイオエンジニアリング×情報学で、有村幹治准教授は都市計画に関して土木×ビックデータで、山中真也准教授は家畜伝染病予防に関して農業×微粒子工学で、董冕雄教授は災害支援システムに関して、防災×IOTという、それぞれが専門を活かした分野×情報工学の融合分野でラボラトリのリーダーや主要メンバーとして活躍しています。

 地域中小ものづくり企業を結集させ室蘭工大がまとめ役となる清水一道教授の鋳物シンジケートの取り組みもイノベーションネットアワード2019において文部科学大臣賞を受賞しました。さらには、岸徳光特任教授の社会基盤管理工学講座と板倉賢一特任教授の未利用資源エネルギー工学講座という2つの寄付講座の活動も大いに地域に貢献いたしております。

 

 また、有力企業の人事担当者から見た学生諸君の印象も好評であり、北海道・東北地域で5位、全国で33位(日経キャリアマガジン特別編集 価値ある大学2020年版 就職力ランキング(2019年6月/日経HR)企業の人事担当者から見た大学イメージ調査)に入っています。

 さらには、卒業生の活躍となりますが、一級建築士合格者(国家試験)数は、北海道・東北地域で3位、全国で38位(朝日新聞出版 大学ランキング2020年度版)、技術士の合格者でみると、北海道・東北地域で5位、全国で48位(朝日新聞出版 大学ランキング2020年度版)と、本学の実学面での強さも目立っています。

 

 ここにあげた本学の最近の活動、強みはほんの一例であり、まだまだ沢山あると思います。このような強みは、これまでに輩出した3万余名の卒業生の社会での活躍と本学の先生方のevidenceに基づいた「確かな研究力をベースとした教育力」にあります。

 この強みを活かして、優秀な学部そして大学院の入学志願者の確保が最重要の課題であります。さらに一歩踏み込むと、優秀な留学生の確保とダブルディグリー制度の整備など、グローバルな環境を整えることが課題です。

 そして、本学を選んでくれた学生諸君を、確かな研究力をベースとした教育力で大きく育てていきましょう。

 

 そのほか、本学がまだまだ弱い、科学研究費や公的補助金、民間との共同研究などによる外部資金の獲得、全体的な論文数の底上げも重要な課題であり、教員及び職員の皆さんお一人、お一人の力の結集が重要です。

 理工学部への改組の趣旨を十分に盛り込んで、本学の、そして北海道の研究の未来像を夢を持って語るMONOづくりビジョン2060も昨年6月に発表しました。この中でも、従来の研究センター以上に、より柔軟で機動的なMONO情報基盤技術部門とソリューション部門のラボラトリ制を導入して、本学の研究の活性化を推進したいと考えております。

 先ほど述べた4人の若手教員もこのラボラトリの主要メンバーとしてご活躍していただいておりますし、さらに岸上順一教授、渡邉真也准教授らのAIラボラトリは、本学が力を入れている組織対組織の企業との包括連携においても引っ張りだこの大活躍中です。

 もちろん私を含めた執行部は、優秀な教員・職員をサポートする支援体制を含めた研究環境を充実させる努力を惜しません。

 

 今年は皆さん一丸となって、室蘭工大の飛躍の年としましょう。

ページトップ