令和元年度 卒業生・修了生の皆様へ(学長告辞)

 

 今年度は新型コロナウイルス感染症対策の影響で学位記授与式を挙行できない事態となり、卒業・修了の晴れ舞台となる学位記授与式を心待ちにされていた、学部卒業生、大学院修了生の皆さんには、心よりお詫び申し上げます。

 さて本日、晴れて学部を卒業し学士(工学)の学位を得られた方は597名、大学院博士前期課程を修了し修士(工学)の学位を取得された方は237名、また大学院博士後期課程を修了し博士(工学)の学位を授与された方は7名です。そして卒業生・修了生の中には外国人留学生が45名おられます。

 これら841名の皆さん、学位の取得並びに卒業・修了を心からお祝い申し上げます。また皆さんの入学から今日まで、修学を励まし支えてこられたご家族並びに関係者の方々に敬意とご祝辞を申し上げます。

 学位記授与に当たり、卒業生・修了生の皆さんに、私からの期待とメッセージを述べさせていただきます。

 

 昨年末から今年の年頭までは、日本そして世界の株価は好調を維持し、日本そして世界の経済は落ち着いておりました。現在は、新型コロナウイルス感染症の世界的広がりにより、大変不安定な状況となっておりますが、世界中の皆様とともに、長いトンネルを抜けるためには、現在が頑張りどころでしょう。一方、学部生そして博士前期課程修了生の皆さんの就職状況は、慢性的な労働者不足の影響もあり、大変良好といえる情勢でありました。

 さて、皆さんは大学という社会からプロテクトされた環境から、社会・産業界の先が見えにくい荒波のなかに旅立つことになります。

 十分な覚悟と準備が整っているでしょうか。

 今、世界が直面している新型コロナウイルス感染症をとっても、どのような手段・対策が正解なのか?そもそもどのような「解」があるかも明確ではない問題に直面し、その解を見つけ出そうと皆、頑張っているところです。

 皆さんは既に、本学において様々なタイミング・観点から、本学が力を入れている課題解決型の授業、演習や自ら考える授業のなかで、あるいは実験やその後のレポートの考察の際に、そして卒業研究や大学院での研究課題に取り組む際には、正解どころかそもそも答えがあるかどうかわからない問題に遭遇した経験が何度もあったのではないでしょうか。答えがあるかどうかわからない問題・課題と立ち向かい、答えに近づく、チャレンジするのはとても勇気がいることです。なぜなら、もし答えにたどり着けなければ、あるいはどんなに頑張っても、そもそも答えがないかもしれないという不安に打ち勝つのはまさに容易なことではありません。このようなとき、どのように対処されたことでしょうか? 思い出してください。

 私は本学の強みは、「確かな研究力をベースとした教育力」にあると強く信じています。例えば本学のホームページでも取り上げていますように、2018年 9 月にロンドンに拠点を置く Times Higher Education(THE)の世界大学ランキング(「研究力」を主な指標として、Teaching、 Research、Citations、Industry Income、 International Outlook の4つの観点から評価される)に1001+ 位で初めてランクインし、2019年 9 月には軒並み日本の主要大学が苦戦する中、801〜1000位に上昇しました。この結果は、全国の国立大学では13位タイであり、我々と同じグループとなる国立の11工科系大学でみると、TOP の東工大 に次いで、東京農工大と並んで 2 位の評価となります。これは単に評価の一つの切り口ではありますが、大変素晴らしいことです。 加えて、コンピュータ科学分野の論文被引用指数は、なんと2年連続で日本一に輝いています (朝日新聞出版:大学ランキング2019年度版、2020年度版)。さらには、情報系の董冕雄教授と太田香准教授が科学・社会科学分野における世界最高峰の研究者を選出したHighly Cited Researchers 2019(Clarivate Analytics)に選出されており、日本から3名のうち2名が本学の教員という快挙でありました。

 また、北海道地域への研究面からの貢献も素晴らしく、2016年度から2019年度まで 4 年連続で本学の若手教員が北海道科学技術奨励賞を受賞しています。

 このような、エビデンスに基づいた「確かな研究力をベースとした教育力」の成果も皆さんや皆さんの先輩たちの社会での活躍に現れており、例えば、有力企業の人事担当者から見た学生諸君の印象も好評であり、北海道・東北地域で 5 位、全国で 33位(日経キャリアマガジン特別編集 価値ある大学2020年版就職力ランキング(2019年 6 月/日経 HR)企業の人事担当者から見た大学イメージ調査)に入っています。さらには、卒業生の皆さんの活躍となりますが、一級建築士合格者(国家試験)数は、北海道・東北地域で 3 位、全国で38位(朝日新聞出版:大学ランキング2020年度版)、技術士の合格者でみると、北海道・東北地域で5位、全国で48位と、本学の実学面での強さも誇りです。  

 本学教員の真摯な研究指導のもと、皆さんは卒業研究、修士論文、博士論文研究のなかで、それぞれの未知な課題への解決を自ら体験・習得しました。答えがわからない課題にぶつかったときの体験、そこから何を調べれば良いか? ゼミの同僚、先輩、そして指導教員とのdiscussionのなかで、ヒントをもらったり、課題解決へ向かった体験をもっていることでしょう。必ずしも、解決に至らなくても、課題解決に向かうプロセスや費やした時間そのものにも皆さんは価値を見いだせます。それぞれの立場で未知の課題への解決に立ち向かった、チャレンジした経験こそが、皆さんの本学での学生時代の貴重な宝物です。

 

 さて人生の先輩の一人として、私からもう一つ、大事な言葉を贈りましょう。それは「攻めと守りのバランス感覚」です。大学執行部の仕事を始めてそろそろ11年が経過します。その間、様々な計画・施策の実施に携わってきました。この間、私は極力、EBPM (Evidence Based Policy Making)を心がけていました。大学運営において、確かなエビデンスが示せて、プラスになる成果や実現可能性を期待できる計画立案ができれば、教職員の皆さんの協力を期待できることになります。ただ、解決すべき課題が多すぎたり、良くあることですが十分な検討時間がとれない場合、いつも十分なエビデンスを用意できるとは限りません。その際には、少ないエビデンスから判断して決断をすることになります。このときに、積極的にでるか保守的に行くか、「攻めと守りのバランス感覚」が重要となります。最近はつくづくそのようなことの重要性を感じています。

 また本学で皆さんは各自の専門分野を学び、それぞれの学位を取得されたわけですが、学びはまだ終わっていません。皆さんは、これまで学んだ20数年間の何倍も長い期間、社会を生きぬき、自らを磨き、切磋琢磨していくことになります。私ごとで恐縮ですが、私は鞄の中には、いつも学長宿題というファイルが入っていて、予習・復習を行っています。まだまだ勉強です。皆さんも、本学で身につけた専門分野を一つのベースとして、社会で活躍するためにさらに専門を深めたり、あるいは幅を拡げ、新たな先端分野を学んだり、社会・産業の状況に応じて学び続けて、これからの人生を有意義に過ごすための準備をしてほしいと思います。

 

 冒頭で述べたように外国人留学生の皆さんに関して、45名が学部卒業・大学院を修了します。そのうち帰国する留学生諸君はわずか13名(31%)、残りの32名は日本で活躍されると聞いています。すでに17名は国内企業に就職、本学大学院への進学が11名、さらに2名は本学の博士研究員として残ります。このように留学生諸君の母国での活躍に加えて、日本国内企業で活躍する学生諸君が増えてきていることは大変頼もしい限りです。今後とも本学での学びを活かして、これまで以上に日本や本学と関わっていただけるよう期待いたします。

 

 最後になりますが、皆さんの周りにはたくさんの応援団、仲間がいます。

 本学の同窓生は皆さんも加えると既に述べ39000人に達しており、産業界・社会で実績を残して、活躍している先輩たちが皆さんを温かい目で見守っています。この歴史ある卒業生の社会での活躍とそこからの応援、そして室蘭工業大学で共に学んだ皆さんの経験こそが、これからの皆さんの力となります。

 室蘭工業大学は、これからも皆さんと共に、日本、そして世界の輝かしい未来を築くべく、教育と研究そして社会への貢献を大きな柱として歩みます。

 この度は、皆さんに直接メッセージを伝えることはかないませんでしたが、皆様のご健勝とこれからの輝かしい未来でのご活躍を祈念し、学長告辞といたします。

 

                              令和2年3月23日

                          室蘭工業大学学長 空閑良壽

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