人の知能と、コンピュータの知能

情報電子工学系学科コンピュータ知能学コース 渡部 修

 情報電子工学系学科の情報システム学コースとコンピュータ知能学コースは、以前の情報工学科から発展してできたコースです。ここではもちろん、プログラミングやネットワークといったコンピュータ技術を中核とした教育研究を行っていますが、これだけではありません。コンピュータの利用技術は情報科学を専攻して身につく能力の一つにすぎません。大学で情報科学を専門とする我々は、すでに広く実用化されている技術を習得・発展させるだけではなく、まだ存在していない全く新しい概念や計算理論を生み出していく役割も担っています。

 

 たとえば、「情報処理」を行うのはコンピュータだけでしょうか? よく考えてみると、答えはNoではないでしょうか。誰もが同意できる最も身近な例に、わたしたち自身があります。我々は、記憶・学習・認識など様々な機能を持っており、外界から得られる情報を常に解析しながらその経験を蓄積し、知的活動を実現しています。最近、人の言葉を理解するシステムや、表情を認識するカメラなどが実用化されています。これらは機械が行っているので「すごいな」と感じますが、人が同じことを行っても誰もほめてくれませんし、むしろもっと柔軟にやれと指摘されるかもしれません。その機能は脳で実現されています。巨大なスーパーコンピュータではありませんし、莫大な電力もつかいません。たかだか1リットルちょっとしかない脳は、ツナサンドていどの燃料を与えることで、実に巧妙な情報処理を実現するのです。我々は、我々の脳がどうやってその機能を実現しているのかまだ知りません。しかし、そのメカニズムの解明は「脳と心の理解」へ我々を導くとともに、新たな情報処理原理を手にする可能性を持っています。

 

 我々のコースでは、脳科学・心理学を専門とする教員もそのスタッフに加え、脳の情報処理機構の理解やコンピュータの知能化を含む学際的な教育研究体制を実現しています。例えば私の研究室では、視覚心理実験と数理モデル化という二つの手法を組み合わせて、脳の視覚機能の解明に取り組んでいます。心理実験といっても、いわゆる心理テストやアンケート調査とは様相が異なります。ここで言う心理実験は、下の写真のように実験条件を厳密に統制した暗室中で行われ、物理量(視覚の場合は輝度、色度、時空間周波数など)と感覚量(視覚システムの限界を表す閾値など)との関係を定量的に測定するものです。これは心理物理学と呼ばれており、脳の計算理論を科学的に検証する際の強力な手段になります。そして、これらの実験データを基に人の視覚機能を数理モデル化し、脳が用いている計算原理を絞り込んでいきます。

 

 今日の情報科学は、単なる「コンピュータ学」にとどまりません。数学、心理学、自然科学など多様な専門性を持った科学者が集まる学際的な分野になっており、常に新しいものを生み出そうとチャレンジしています。新しい情報科学の広がりを、ぜひ知って頂けたらと思います。

 

視覚心理実験の様子

 

教育・研究の最前線 過去の記事

2012.06.22東京都市大学との戦略的大学連携支援事業

2012.06.07国際交流センターの活動

2012.05.23バーチャルリアリティソフトウェア開発環境「仮想現実工房」を利用した実践的演習の取り組み

2012.05.10応用理化学系学科 応用物理コースの教育・研究最前線―新奇誘電体材料の開発と物性評価―

2012.03.16ロボットアリーナ := 「ロボットの今と未来がみえてくる。」

2012.03.02ものづくり基盤センターの活動

2012.02.15航空宇宙機システム研究センターの教育・研究最前線

2012.02.02災害時に有効な支援体制を目指して

2012.01.26短時間でインフルエンザウイルスのサブタイプを判定する光センサーの実現に向けて

2011.12.13環境・エネルギーシステム材料研究機構の研究紹介

2011.11.16難分解性汚染物質の原位置浄化を目指した処理システムの実用化開発 ー新環境型汚染修復システムの構築に向けてー

2011.10.25大学の研究と発明・特許 -室蘭工業大学 知的財産本部の役割-

2011.10.07高機能炭素ナノ材料の創製と電気化学エネルギー変換デバイスへの応用 ー持続可能な社会の構築に向けてー

2011.09.09バイオガスの放電プラズマ改質による水素生成技術開発 ー低炭素社会の実現に向けてー

2011.06.21FDワーキンググループの活動

 

 

 

更新年月日:2012年7月24日
作成担当部局:総務グループ総務ユニット

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