原子炉の安全性を向上させるSiC/SiC複合材料製燃料被覆管の開発

環境・エネルギーシステム材料研究機構 (OASIS) 機構長 香山晃

 

 環境・エネルギーシステム材料研究機構(OASIS)は2010年に発足した、学内でも比較的新しい組織です。OASISの目的は、環境を維持しながら人類が安心・安全に暮らせる社会を実現させ、更なる生活基盤の強化を可能とする高品位のエネルギーシステム及びシステム材料の開発を行う事です。OASISでは今日までの活動が実を結び、現在4つの大型国家プロジェクトを推進しています。このうちの2つのプロジェクトはSiC/SiC複合材料製燃料被覆管の開発に関するもので、厳しい環境で優れた性能を発揮する先進セラミックス系複合材料であるSiC/SiC複合材料開発の一部です。

 

SiC/SiC複合材料とは?

 身近な「セラミックス材料」としては、茶碗やガラス、レンガなどがあります。SiCもセラミックであり、軽く、金属よりも高温まで強度を維持でき、酸化に強く、放射線に強いといった特徴から、先進エネルギー分野(原子力・核融合、地熱発電・深海発電など)や航空宇宙分野(ロケットの推進ノズルなど)において、金属に代わる材料として期待されています。しかし、セラミックス材料は脆い(割れやすい)という致命的な弱点をもっています。そのために、SiCセラミックスにSiC繊維を複合・強化したSiC/SiC複合材料にすることでSiCの長所を生かし弱点である脆さを補い、システム及び材料の安全性・信頼性を向上させます。SiC/SiC複合材料の実用化には最終製品の形状に近い形で成型する「ニアネット成型」と呼ばれる製造技術の確立、気密性の確保、形状・寸法の自由度の確保、経済性・生産性の充足などが求められます。OASISではSiC/SiC複合材料の実用化を目指し、国際的にも突出した特性が認知されているNITE法(我々の保有する国際特許)によるニアネット成型技術開発に加え(図1)、量産化技術を研究しており、世界唯一のSiC/SiC複合材料製造のパイロットプラントの整備を進めています。(図2)

 

 

図1

図1 ニアネット成型により作製したSiC/SiC複合材料製ロケット推進用ノズル(「N;ニュートン」は力の単位で、物体(例:ロケット)を移動させる(例:飛ばす)事に用いられる推力の単位としても使われています。500Nクラスは国産のH1ロケットに使われています。)

 

図2

図2 OASISで保有するSiC/SiC複合材料製造装置の一例

 

SiC/SiC複合材料製燃料被覆管の開発

 OASISの大きな活動の1つとして原子炉の安全性を向上させる技術開発を行っています。現在の燃料被覆管に用いられているジルカロイという合金を金属SiC/SiC複合材料に替える事で原子炉・炉心の安全性は画期的に高まります(例えば、福島の原子力発電所で発生した水素爆発や炉心の溶融などの重大災害の抑止)。OASISでは図3に示すようなSiC/SiC複合材料燃料被覆管(外径12mm、肉厚1 mm、長さ200 mm)を月10本以上のペースで製造しています。これは世界トップの製造能力になります。さらに世界に先駆けた研究としてSiC/SiC複合材料製燃料被覆管の原子炉内環境下での耐久性試験を来年度より開始する計画です。これら活動によりSiC/SiC複合材料製燃料被覆管の原子炉への早期適用を目指し、原子炉の安全性の飛躍的な向上に貢献します。

 

図3

図3 作製したSiC/SiC複合材料製燃料被覆管

 

 OASISでは複数の大型国家プロジェクトに加え、国内および国外の大学、研究機関、企業と多くの共同研究を実施しています。各プロジェクトの詳細や他の研究に興味のある方は是非、OASISのホームページをのぞいてみてください。

 

環境・エネルギーシステム材料研究機構(OASIS)Webサイト:

http://oasis.muroran-it.ac.jp/

 

 

 

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更新年月日:2013年11月29日
作成担当部局:総務グループ総務ユニット

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