応用理化学系学科応用化学コースの教育・研究最前線―粉砕法を利用した機能材料の開発―

応用理化学系学科応用化学コース  山中 真也

 

 粉砕は、大きな塊を砕いて、小さな固体粒子の集合体(粉体)を得る操作です。例えばソバの実を挽いて蕎麦粉を作ったり、大きな氷の塊を削ってカキ氷を作ったり、シャープペンシルや鉛筆を使って紙に字を書いたりする(紙との摩擦で芯が削られる)のも粉砕の一種です。製品化されている多くの粉体は、粉砕という操作で製造されています。しかし、形をコントロールしたり、とても小さなナノサイズの粒子(ナノは10-9メートル)を作ることが難しいとされています。私たちは、黒鉛やホタテの貝殻を対象として、この課題を解決するとともに、粉砕を利用したモノづくりを行っています。

 私たちが開発した技術で黒鉛を粉砕すると、薄いシートを作製することができます(図1参照)。絶縁性の樹脂と、形を制御した黒鉛少々を混ぜた材料を合板の接着剤として用いることで、電気の力で発熱する合板ができあがります。この合板は、通常の床暖房システムよりも安く製造できる利点を持ちます。私たちは、北海道立総合研究機構林産試験場と共同して、家具(図2)や、融雪屋根下地(図3)など暖房製品への応用・商品化を目指して研究を進めています。

 小さな粒子の利点は、質量あたりの表面積が大きくなることです。ナノサイズの粒子になると、わずか1 gの粉体でテニスコート一面分もの表面積を持ちます(最近ではサッカー場くらいの面積を持つ粒子も開発されています)。この莫大な面積を利用して、有害な物質を除去する吸着剤や、化学反応を促進する触媒などに応用できます。私たちは粉砕操作で作ったナノサイズのホタテ貝殻を吸着剤や触媒へ利用できないか研究しています。なぜホタテ貝殻か。ホタテ貝殻は、道内だけでも年間20万トン以上が産業廃棄物として発生して、産業上の有効活用が求められているからです。冒頭に粉砕でナノサイズの粒子を得るのは難しいと書きました。しかし最近私たちは、粉砕したホタテの貝殻にある処理を施すとナノサイズの小さな粉体が得られることを発見しました。

 研究を進めていく上で最も重要なのがその独創性です。これを打ち出すには、今まで成されてきた研究を調べ、何がどこまで分かっている(分かっていない)かを知る必要があります。他の競合研究、これまで行われてきた研究とはどこがどう違うのか、この研究を進めると何が生まれるのか・・・など。加えて、それまでに学んだ基礎学問と専門教科の知識も必要です。研究背景の調査で得たことと、頭の中の“引き出し”を活用して初めて新しい研究目的が誕生します。

 ここでは、応用化学コースの研究室で行われている研究の一例を紹介しましたが、他にも環境・資源・エネルギーをキーワードに、独創的な研究が日々繰り広げられています。詳しくは応用化学コースのページ(http://www.muroran-it.ac.jp/rikagaku/ac/Research/index-j.html)をご覧ください。応用化学コースでは、特徴ある研究と専門教育を通して、循環型社会の構築に貢献する創造性豊かな人材を養成しています。

 

 

図1:原料黒鉛(a)と、粉砕操作で得られたシート状の黒鉛(b)の電子顕微鏡写真

 

図2:暖房機能をもつ木製椅子

 

図3:融雪性能をもつ屋根下地材

 

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更新年月日:2012年9月6日
作成担当部局:総務グループ総務ユニット

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