応用理化学系学科バイオシステムコースの教育・研究最前線―生物の力を利用して化学物質のかたちを変える―

応用理化学系学科バイオシステムコース 上井幸司

 

 応用理化学系学科バイオシステムコースは、現在12の研究室で構成されており、バイオテクノロジー、合成化学、地球環境を主な分野として化学と生物の専門知識をもとに、生物利用技術の工業化や環境と調和した科学技術の創出に貢献できるような研究と人材育成が活発に行われています。そのうちの一研究室で行われている研究内容を紹介します。

 

 生体の中では、エネルギー供給、代謝、解毒、発光などが行われています。それを主に行っているのが生体内での化学反応の場である酵素です。また、酒や味噌、醤油などの製造には古くから微生物の力が利用されています。どちらも生物が持っている能力により化学反応を行っているのですが、近年ではこの能力が食品、香料や医薬品原料の製造や洗剤の洗浄能力向上などにも用いられており、私達の生活と極めて密接に関わっています。

 

 これらの生物の力を使った化学反応は、有害な薬品を使用せず、生物の生育環境に近い緩やかな条件で反応を行えるため、環境に優しい極めて有用な方法です。私達は、この生物の力を最大限に引き出し、上手に化学反応へ利用することで、これまでにない化学物質の製造法へと繋げたいと考えています。

 

 アルデヒドという物質は、「酸化」という化学反応を行うとカルボン酸という物質に、「還元」という化学反応を行うとアルコールにすることができます。身近な例は、アセトアルデヒドという物質を「酸化」するとお酢の成分である酢酸に、「還元」するとお酒の成分であるエタノール(いわゆるアルコール)になります。この「酸化」と「還元」を行うためには、通常、それぞれ別に重金属を使ったり、厳密な条件で行わなければならないのですが、私達が現在研究しているある種の微生物(図1)を使うと、水の中で混ぜるだけで、「酸化」と「還元」のどちらも行うことができます(図2)。この微生物を使った化学反応により、医薬品や香料などの製造に応用することが期待されます。

 

 また、広く生物が持っているリパーゼという酵素は、脂肪を分解する働きを持っていますが、これ以外の化学反応も起こすことが知られてきました。そこで、私達は、リパーゼが密かに持っていて、まだ知られていない能力を引き出し、医薬品合成に役立てることを目指して研究を行っています。

 

 私は、研究を行うにあたり、大切な要素であると考えていることは、夢とアイデアと継続です。研究の下地となっている知識を継続的に収集、修得し、その集約の上にアイデアが生まれ、そのアイデアを実現するための継続的な取り組み。そして実現できたら成果を使ってどのように人々の役に立てるのかを想像する力(夢を持つ)ことです。

 

 応用理化学系学科バイオシステムコースでは、この研究以外にも多くの熱心な教員が活発な教育・研究活動を日夜行っています。詳しくは応用化学コースのページ(http://www.muroran-it.ac.jp/rikagaku/bs/index-j.html)をご覧ください。

 

 

 

図1 酸化も還元も行う微生物

 

図2 微生物を使った新しい化学反応方法

 

  

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更新年月日:2012年12月21日
作成担当部局:総務グループ総務ユニット

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