応用理化学系学科バイオシステムコースの教育・研究最前線 —新触媒の力で医薬品分子の右と左を作り分ける—

応用理化学系学科バイオシステムコース 中野博人

 

 日常使われる医薬品などの生物活性有機化合物は、植物などの生物が生産したものを取り出して用いられる場合もありましが、人間の手によって化学的に合成(有機合成)されているものも数多く存在します。有機合成の利点は、原料となる生物の大量の確保が必要ではないこと、その乱獲による環境問題への影響が少ないこと、さらに、大量の確保がいつでも可能であることです。天然からは入手困難な生物活性有機化合物を大量に合成でき、また、天然から見つけ出された有効成分を化学的に修飾してより優れた効き目をもつ新薬を創製することもできます。有機合成は、工学部の使命である「ものづくり」に大きく結びついています。

 

 生物活性有機化合物の基盤となるのは炭素です。炭素には4本の手があり、その4本の手がそれぞれ異なった原子あるいは原子団と結びついている炭素を「不斉炭素」と呼びます。この不斉炭素をもっている有機化合物には2個の物質が存在します。この2個の物質は、鏡に映した2個の鏡像関係、丁度、互いに重ね合わせることができない右手と左手のような関係を持っています。このような関係にある物質を「鏡像異性体」の関係にあるといいます。この鏡像異性体を持つ有機化合物は数多く、その鏡像異性体同士で機能性が異なる物質も数多く存在します。たとえば、植物が作るリモネンは片方がレモンの香りを、もう片方がオレンジの香りを発します。

 

 

 また、医療分野においては、サリドマイドの鏡像異性体は、片方が鎮痛作用を、もう片方が催奇作用(奇形を生じさせる作用)を示し、大きな医療問題を引き起こしました。有機合成の中に、この鏡像異性体の片方だけを選択的に合成する方法があり、これを「不斉合成」と言います。この不斉合成を用いることにより、本当に必要な鏡像異性体の片方だけを得ることができます。特に医薬品は、鏡像異性体の片方が有効な作用を示し、片方が重篤な作用を示す物質が数多くあり、このことからも優れた不斉合成法の開発は大変意義があります。世界中の研究者がその開発にチャレンジしています。

 

 

 

 私達の研究室ではこの不斉合成法の開発研究として、不斉触媒を用いた触媒的不斉合成法の開発研究を行っています。この方法は、極微量の不斉触媒を用いることにより、大量の鏡像異性体の片方だけを合成することができる方法です。さらに、その開発した不斉合成法を利用する新しい医薬品シーズ有機化合物の創製研究も行っています。

 

 

 

 

 

応用理化学系学科Webサイト:

http://www.muroran-it.ac.jp/rikagaku/Guide/Undergraduate/index-j.html

 

 

 

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更新年月日:2013年12月11日
作成担当部局:総務グループ総務ユニット

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