有機色素分散媒質における非線形光学効果と光誘起回折格子

応用理化学系学科応用物理コース 宮永 滋己

 

 虹の七色に代表される可視光の波長域で光を吸収する物質は色づいて見えます。そのような性質をもった分子を色素分子と呼びますが、有機系の色素分子を透明な高分子フィルム中や液晶分子とともに均一に分散させた有機色素分散媒質は、カラーフィルムのように色づいて見えます。

 

 このような有機色素分散媒質を用いると比較的容易に非線形光学効果を起こすことができます。通常身の回りで見られるガラスなどの光学媒質は、入射する光が強くても弱くても同じ性質を示しますが、有機色素分散媒質では、入射する光が強くなるにつれて、徐々に吸収が小さくなっていくというように、入射する光の強さによって、光を透過する割合が変化します(一般にはそれにともなって屈折率も変化します)。このように、入射する光の強さによって透過率や屈折率が変化するような現象は非線形光学効果によって説明され、光と物質の相互作用(光が入ると物質中で何が起こるか)を通して現れます。例えば、透明なメガネが強い紫外線の下でサングラスになって目を保護する。このような現象を引き起こすのが非線形光学効果の典型的な例です。

図1 非線形光学効果。強い光の下でサングラスになるメガネの例。

図1 非線形光学効果。強い光の下でサングラスになるメガネの例。

 

 私たちの研究室では、有機色素分散媒質における非線形光学効果を用いた光誘起回折格子の研究を行っています。CDやDVDディスクの記録面を光にかざすと虹色に見えます。これは、光ディスクの記録面には周期的な細かい溝が刻まれていて、それぞれの溝から反射した光が色によって特定の方向で強め合い、色に応じて特定の方向に回折されるためです。このように、反射率や透過率(これらは媒質の吸収係数や屈折率で決まります)に周期的な構造をもつ媒質は回折格子と呼ばれ、入射した光を特定の方向に回折させる働きをもちます。

図2 回折格子の働き。入射したレーザー光を,レーザーの波長と回折格子の周期で決まる特定の方向に回折させる。

図2 回折格子の働き。入射したレーザー光を,レーザーの波長と回折格子の周期で決まる特定の方向に回折させる。

 

 2つのレーザー光を交差させると、波の干渉によりビームの交差領域には光の強め合う部分と弱めあう部分が周期的に現れます。この交差領域に有機色素分散媒質を置くと、光の強さにより吸収係数や屈折率が周期的に変化するため、回折格子が生じます。また、レーザー光を遮断すると吸収係数や屈折率は元の状態に戻るため、レーザー光の照射、遮断により回折格子を作成したり、消去したりすることができます。このような回折格子は光誘起回折格子と呼ばれます。

 

 有機色素分散媒質などの非線形光学媒質中を、非常に弱く、それ自身では媒質に変化を起こさないレーザー光(プローブ光と呼ばれます)を通過させておきます。そこに、ポンプ光と呼ばれる、媒質に非線形光学効果を引き起こす2つの強いレーザー光を照射すると、2つのポンプ光の干渉により回折格子が生じ、プローブ光を特定の方向に回折させます。2つのポンプ光に画像の情報を乗せると、光誘起回折格子は画像情報に応じて変化してプローブ光を回折させるため、画像の演算などの光情報処理への応用が可能となります。私たちの研究室では、光誘起回折格子の発生機構とその特性を理論的、実験的に明らかにし、材料探索や非線形光学デバイス設計のための指針につなげることを目指しています。

図3 光誘起回折格子。2つのポンプ光を照射したときのみ回折格子が生じ,ポンプ光を遮断すると元の状態に戻る。

図3 光誘起回折格子。2つのポンプ光を照射したときのみ回折格子が生じ,ポンプ光を遮断すると元の状態に戻る。

 

応用理化学系学科Webサイト:

http://www.muroran-it.ac.jp/rikagaku/Guide/Undergraduate/index-j.html

 

 

 

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更新年月日:2014年2月7日
作成担当部局:総務グループ総務ユニット

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