人間の感性と機械の感性

もの創造系領域准教授 魚住 超

 

 スマートフォンなどでコンピュータと音声会話が利用できる時代が到来しつつあります。以前、恩師が「人の感性 機械の感性」という本を出版しました。人の役に立つ機械をいかにして作るかは人と機械の関係が感性を含めて近づくことだろうと多くのエピソードで解説したものでした。感性工学が設立してから13年ほどですが、アニメやSFの世界では普通と思えることでも、実際にコンピュータに行わせようとするとかなり難しい問題を解決しなければなりません。まだまだ多くの課題が残っています。

 室蘭工業大学のサテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(SVBL)では、感性とロボットの研究を複数のグループで進めてきています。これまでの人工知能の研究で、人間の知識をコンピュータ上でどのように表現し、質問に対して可能な解を仮説として提示するかの研究は進んできました。昨年にはIBMがチェスで人間のチャンピオンに勝ち、クイズ問題にも勝ったので、これからは医療診断にチャレンジすると宣言しました。医療診断は、体の状況を推察する技術ですが、体の表面情報や体内の撮影等による計測、問診等から原因を探る思考プロセスです。遺伝子情報や食事、生活習慣など、様々な要因が原因の可能性となります。最近は原因と結果の関係をグラフで表現し、証拠が得られると因果関係の確率を計算する方法が発達してきています。欧州のある大学では医学生の学習を支援するプログラムにもなっています。医療診断では重要な前提条件をもとに推論プロセスを進めています。それは、患者側は嘘をつかないという前提です。けれど、日常会話では嘘や間違い、冗談は当たり前になっています。会話からは男女や年代、つなぎの言葉の頻度や擬態語や身振りとの連動から感情など、テキストで表現できない感性情報が提供されています。また、人間はコンピュータに見えないものがを見えると言います。錯覚もその一つです。味も自分の舌の塩分を基準にして感じ取ります。

 このように心理状態も含めた感性情報をコンピュータ上に表現しなければ本当に役に立つ優しいコンピュータは実現しないのです。生命体から発せられる物理的情報は絶対値を持っていますが、心理的な情報は前とどの程度違うかの相対値表現となっていて値の基準は個人が持っています。それらをうまく組み合わせ核心に迫るプロセスは、探偵の思考プロセスをコンピュータに行わせる技術でもあります。心理相談、健康相談、教育相談から高齢者の話し相手を支援するシステムは、感性に敏感な我が国がしなければならない技術の一つと考えて進めています。

 ただし、機械が人に近づくのは喜ばしいのですが、人が機械的になるのは避けたいものです。

 

図1 疲労の因果ネットワーク構造で疲労状態を診断(魚住グループ)

 

図2 在宅ヘルスモニタリングシステムで皮膚状態を遠隔診断(相津グループ)

 

図3 製鉄記念室蘭病院との共同研究(花島、魚住グループ)

 

教育・研究の最前線 過去の記事

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2011.10.25大学の研究と発明・特許 -室蘭工業大学 知的財産本部の役割-

2011.10.07高機能炭素ナノ材料の創製と電気化学エネルギー変換デバイスへの応用 ー持続可能な社会の構築に向けてー

2011.09.09バイオガスの放電プラズマ改質による水素生成技術開発 ー低炭素社会の実現に向けてー

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更新年月日:2012年12月5日
作成担当部局:総務グループ総務ユニット

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