国立大学法人 室蘭工業大学
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学長告辞

平成21年4月6日

   

 本日ここに、ご来賓ならびに名誉教授の諸先生のご臨席のもと、入学宣誓式を行いますことは、室蘭工業大学すべての教職員、学生の慶びとするところであります。この度入学された方は、工学部学士課程の696名、大学院博士前期課程が253名、博士後期課程の12名、合計961名のみなさんです。この中には海外からの留学生が学部に8名、大学院に14名含まれております。

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。また入学に向けて本人が払った努力とともに、長年にわたり勉学の環境を整えられ、努力を支えられた保護者、ご家族のみなさまにも心から敬意とお祝辞を申し上げます。

 入学生のみなさん、昨年9月、ニューヨークのウォール街に端を発した金融・経済危機は世界に波及し、半年後の今でも我が国はじめ多くの国々が深刻な状況に置かれております。経済学者の中にはこれを「グローバル恐慌」とする見方もあるほどで、回復にはかなりの期間を要する点では各界が一致しております。またこの度の危機をこれほど深刻にした元凶の一つに、高度化した「金融工学」を挙げる論調もあります。工学系の大学である私たちにも見過ごすわけにはいかない問題があるように思います。このような状況にあって、私たち大学は何をなすべきでしょうか。ここで、私はみなさんと一緒に考えてみたいと思います。

 少し時間を遡って1996年、経済協力開発機構OECDは先進諸国の経済社会が「知識経済」、「知識社会」に移行しつつあることを初めて指摘しました。知識や技術が経済の発展を促すことは、それまでも経済学では織り込み済みでした。しかしこの指摘の新規性は知識や技術、知的活動が経済の駆動力になったという点にあります。この命題の有効性はなお慎重な確認を要します。しかし、学術の中心としての大学には、かなり明確なメッセージが送られていると思います。それは経済がたとえ現在のように一時的に困難に陥っても、これを回復に導く鍵となるのも知識や技術であり、またそれを担うのも専門職業人であるということです。このメッセージは教育基本法に新たに規定された大学の使命にたどり着きます。

 教育基本法では、大学を学術の中心としたうえで、その使命として教育と研究および社会貢献、あるいは知の継承と創造と普及の3つを挙げております。またこれらの使命を果たすうえで、大学の自主性、自律性が尊重されなければならないと指摘し、大学への外からの干渉を退けるとともに、大学にも自己規律、不断の改革を求めております。私たちが本年度入学されたみなさんから適用される学士課程、大学院博士前期および後期課程の編成を大きく改めましたのも、大学に求められている教育の質の向上、研究の高度化には不可欠と考えての自主的な決断でした。みなさんはそれぞれの課程の第1期生となります。

 それでは学部と大学院でみなさんは何を学ぶのでしょうか。またそれらを学ぶ目的は何でしょうか。私たちの教育は二つの部分から成り立っています。一つはみなさんが将来、専門技術者となるための教育、もう一つはみなさんが市民として生きるための教育です。教育基本法では大学教育の目的を「高い教養と専門的能力を培う」としておりますが、本学では専門技術者となるための教育は主専門教育、市民として生きるための教育は副専門教育とよんでおります。また、これらの全体を私たちは「総合的な理工学教育」と名づけました。

 学士課程における主専門教育では科学と工学を総合的に学びます。工学に限定しない主な理由は工学と科学の深い結びつきにあります。科学は実在の世界あるいは対象を論理的あるいは数理的言語によって記述し、知識として体系化する営みです。技術はこれらの知識をもとに目的に適った人工物をつくったり、自然を改変する行為であり、その学問体系が工学です。実在世界に関する知識がない限り、人工物をつくることも、自然を造りかえることもできません。しかも知識の正確さは技術による達成の性能を左右します。一方、科学の研究活動やその成果は、技術が生み出した観測や実験や記録の手段に大きく依存します。ここには科学と技術、工学の深い結びつきが見て取れますし、両者があい携えて進化する様子をうかがい知ることができます。

 学士課程のみでなく、大学院では研究を通じて科学と工学の深い結びつきがさらに実感できると思います。科学と工学の対象や手法の相違や共通点に注意を払いながら学び、工学の本体であるデザインや製作に創造的に適用することができる力を培っていただきたいと思います。

 つぎに学士課程における副専門教育について述べます。こちらは人格を形成するための教育というように言い換えることもできます。社会学の創始者の一人、ドイツのマックス・ウェーバーは20世紀の初頭、社会の重責を担う機関や組織の専門家の中に「精神なき専門人、心情なき享楽人」が増加しつつあることに警句を発しました。それから1世紀後の現在、未曾有の経済金融危機に直面して、その原因に思いを巡らしますと、改めてこの警句が事態の本質を衝いているように思われてなりません。私たちは、前述のように、将来を託すことができる専門技術者の育成を使命としております。そのために全学をあげて主専門教育に力を注ぎます。しかし同時に、入学されたみなさんが世界の人びとと一緒に、経済的に豊なだけでなく、文化的にも多様性を容認した持続的な国際社会の担い手となるための教育を重視します。

 世界銀行グループの一つ、多国間投資保証機関の長官をつとめる小林いづみさんは次のように大学教育への期待を述べております。
 「われわれが考える教養は、確かな知識や情報、経験に裏付けられた価値観の体系であり、人が社会との関わりの中で自立して生きていくために必要な力であって、様々な国、文化、世代の人と交流・理解しあうための共通基盤である。そうした力を育成するために、リベラル・アーツ型の教育がすべての大学において実施されることを望む。」ちなみにリベラル・アーツは工学や医学などの実学に対して、「自由学芸」あるいは教養科目を指します。

 私は教養、あるいは教養教育に関してこれほど的確な表現に接したことがありません。私がみなさんにお約束できますのは、本学の4つのコースからなる副専門教育は、国際舞台で活躍する女性経営者の小林さんにご覧いただいても十分お褒めいただけるものと確信いたします。入学されたみなさんは工学系の単科大学にあっても、ユニークかつよく考えぬかれた授業科目で存分に教養と個性を磨いていただきたいと思います。これは大学院においても同じことです。

 以上、入学宣誓式に当たり、本学の教育について私の考えを述べさせていただきました。みなさんの本学における大学生活の出発に当たり、参考になれば幸いです。これからの在学期間に、自然環境を色濃くとどめるこの地で、みなさんがよい友人、よい教師、よい隣人との出会いに恵まれ、実りの多い大学生活を送られるよう願って止みません。最後にみなさんのご健康と幸運を祈り、告辞といたします。

室蘭工業大学長 佐藤 一彦

 
更新年月日:2009年4月8日 作成担当部局:企画・評価室 問合せ先:koho@mmm.muroran-it.ac.jp

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