国立大学法人 室蘭工業大学
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学長告辞

平成22年3月23日

   

 本日ここに、ご来賓ならびに名誉教授のご臨席のもと、学部卒業生、大学院修了生、そしてみなさまのご家族、ご親戚の方々とともに学位記授与式を行いますことは、室蘭工業大学にとりまことに喜ばしく、ご列席のみなさまとともにこの慶びを分かち合いたいと存じます。
 本日、学部を卒業され学士(工学)の学位を得られた方は611名、大学院博士前期課程を修了し修士(工学)の学位を取得された方は194名、また大学院博士後期課程を修了し博士(工学)の学位を授与された方は6名おられます。 これらのみなさまに、学位の取得、ならびに卒業・修了を心からお祝い申し上げます。またみなさまの入学から卒業・修了までの期間、修学を励まし、支えられたご家族、ならびに関係者の方々に心から敬意を表しますとともに、お祝いを申し上げます。

 さて、みなさまの門出にあたり、現在私たちが直面している問題を3つ取り上げ、私の考えとみなさまへの期待を述べさせていただきます。

 最初は、地球温暖化の問題です。
 「過去100年間で世界の平均気温は0.74℃上昇し、温暖化は疑う余地がない。」「産業革命以前に比べて気温が2℃程度を越えると、生態系の破壊や水不足など温暖化被害が世界的に拡大する。」
 2007年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は第4次報告書をまとめ、地球温暖化に関する動かさざる事実を示し、それをもとに警告を世界に発しました。地球温暖化は資源の有限性や新種の感染症と並んで、21世紀に社会が持続的に発展していく上で、阻害要因であることが明らかになってきました。
 かねて、英国の経済学者ウィリアム・ベヴァリッジは、社会のネガティブな要因である無知、貧困、病気などを克服するに当たって、ポジティブ・ウェルフェアという概念を提唱し、各国の社会保障や雇用政策の充実に貢献しました。無知には教育と学習を、貧困には繁栄と経済社会への積極的参加を、病気には健康なライフスタイルを、というのがその核心です。いまや先進国も新興国も途上国も、地球規模でのネガティブな要因となった温暖化に対して、ポジティブ・ウェルフェアとして、低炭素社会を明確に掲げるべき時期に到っております。
 わが国が昨年9月の国連気候変動サミットで、IPCCの勧告に従い、温室効果ガスを2020年までに90年比で25%削減という中期目標を表明し、その後、次期成長戦略としてグリーン・イノベーションを掲げたのは、賢明な政策と受け止められます。
 本学でも法人化に移行した年度から、環境科学・防災研究を重点分野の一つに定め、ユニークな研究成果をあげてきました。本学は「人間・社会・自然との調和を考えた創造的な科学技術研究の展開」を理念に掲げております。その卒業生であるみなさまが、職に就く産業界や各界において、あるいは日常の市民生活において、地球温暖化に対するポジティブ・ウェルフェアの担い手として活動されることを期待します。

 2つ目は雇用問題です。 2008年に始まった世界同時不況の影響を受け、わが国の雇用問題は厳しい様相を示しており、みなさまの就職活動にも少なからぬ影響がありました。5%を超える完全失業率に加え、就業者の構成もパートタイマーや非正規雇用者が全体の34%を占めるまでになっており、社会の格差も複雑さを増しています。原因と責任を市場主義改革に求めるだけでは、対応を誤る危険があります。
 雇用問題には、世界規模の景気循環に起因する周期的変動要因の底流に、製造業を中心に労働生産性が上昇し続けているという事実があります。いま先進諸国に求められているのは、生産性の上昇により不要となる雇用を吸収し、新たな雇用の機会を生み出す持続可能な成長の戦略です。未来を切り開く新しい技術や産業やビジネスは、既存のモデルの創造的な破壊、すなわちイノベーションによって実現され、私たちを知識が最も重要な価値を生み出す社会へと導くに違いありません。
 本学も知識集約型の産業やビジネスを基盤とする近未来の社会に向けて、法人化以降、研究と教育の組織体制を整備してまいりました。航空宇宙機システム研究センターは新産業の創出を視野に入れた研究プロジェクトを軌道に乗せ、また本年度からは、既存の産業の高度化と新産業の発展を担う人材育成のために学科の再編を行ったことはご承知のとおりです。
 研究開発は課題の発掘と設定に始まり、試行と検証を経ながら目標に到る創造のプロセスです。みなさまは本学の理念「創造的な科学技術で夢をかたちに」のもとで学んだ知識や経験を生かして、それぞれの分野でイノベーションを担う技術者、研究者としての道を歩んでください。

 最後は安全の問題です。
 わが国は永らく高い技術力と確かな経営力によって、世界から親しまれる優れた製品やサービスを生み出してきました。自動車や家電製品、食品から化学プラントや原子力発電プラントまで、そのリストは膨大です。しかし、信頼と安全の代名詞のような日本製品にも、最近、疑問符がつくような事態が起きました。
 文字通り世界の先端を走る技術には、未知の問題や未踏の領域が少なからず含まれています。例えば、高級乗用車の場合、その部品点数は約3万、積んでいるコンピュータは約100台、書かれたソフトウェアは1,000万行と言われております。このような複雑で知能化された機械の設計思想や品質管理工学は、まだ完成途上にあるととらえるべきです。この謙虚さ、あるいは未知への畏怖の念が技術者には必要だと、私は思います。
 私は学部を卒業されるみなさまが1年生のとき、「インターサイエンス」という授業を担当しました。ここにおられるみなさまのおよそ3分の1の方が履修しました。コンピュータの設計思想から動作原理、ネットワーク、最後の週は暗号理論まで、8週の授業で、毎回、全員から感想を書いてもらいました。印象に残りましたのはコンピュータを創造した天才的な科学者や技術者への賞賛、利用することによる便益、これとは逆に、失うこと、あるいは損なわれることへの危惧が、瑞々しい感覚で記されていることでした。
 みなさまはこのような感覚、つまり新規なものへの旺盛な好奇心と、そこに潜む未知なるものへの警戒心と細心の注意を失わないで下さい。それがみなさまの持続可能な成長と、みなさまが作り出す製品やサービスの安全や親しみの源になると、私は思います。
 最後になりますが、みなさまがいつまでも健康な身体と晴朗な気持ちを持ち続け、技術者として研究者として、地域と国際社会に生きる市民として活躍することを祈念いたします。室蘭工業大学はこれからもみなさまとともに、日本の科学技術の発展を担っていくことをお約束し、告辞といたします。

室蘭工業大学長 佐藤 一彦

 
更新年月日:2010年4月7日 作成担当部局:企画・評価室 問合せ先:koho@mmm.muroran-it.ac.jp

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