国立大学法人 室蘭工業大学
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学長告辞

平成23年3月23日

   

 本日ここに、ご来賓ならびに名誉教授のご臨席のもと、学部卒業生、大学院修了生およびご家族、ご親戚のみなさまとともに学位記授与式を行いますことは、室蘭工業大学にとりまことに喜ばしく、ご列席のみなさまとともにこの慶びを分かち合いたいと存じます。
 本日、学部を卒業し学士(工学)の学位を得られた方は586名、大学院博士前期課程を修了し修士(工学)の学位を取得された方は238名、また大学院博士後期課程を修了し博士(工学)の学位を授与された方は論文博士も含め15名おります。また卒業生・修了生の中には外国人留学生が24名おります。
 これら839名のみなさんに、学位の取得ならびに卒業・修了を心からお祝い申し上げます。またみなさんの入学から今日まで、修学を励まし支えてこられたご家族ならびに関係者の方々に敬意とご祝辞を申し上げます。

 みなさんの卒業・修了という晴れの日を間近にひかえた3月11日、東北・関東地方の太平洋岸を中心に、未曾有の巨大地震と想像を絶する津波が襲い、人命を含めた空前の被害をもたらしました。またこの地震により発生した原子力発電所の事故もいまだ深刻な事態にあり、周辺住民の方々だけでなく、不安は世界にまで広がっております。私は、室蘭工業大学を代表して、この度の震災に遭遇された方々、いまだ避難生活を余儀なくされている方々、経済・社会活動に支障を来しておられる方々に、心からのお見舞いと復興が一日も早からんことを祈念申し上げます。
 科学技術に係わる教育と研究、それを通じた社会貢献を使命とする本学は、この度の震災が提示している関連の問題を真摯に受け止め、今後の研究と教育に生かしていくことをお誓いし、本題に入らせていただきます。

 ご承知のように、世界はいま大きな変化の最中にあります。これまで世界経済や国際政治を牽引してきた主要先進国は、いずこも経済が失速し、活力を弱めています。これとは対照的に新興国は高い経済成長を続け、数十億人という規模の巨大な市場を出現させるとともに、国際舞台での影響力を強めつつあります。豊かさを実現した先進国の経済社会が苦境に陥っている一方、豊かさを実現する途上にある新興国は、先進国が一通り経験した環境、エネルギー、資源などの困難な問題を追体験しており、それが先進諸国、途上国をも巻き込みながら世界的な規模で問題を増幅させております。
 私たちが直面している問題は大きく2つに分かれます。一つは地球温暖化の抑制、エネルギー・資源・食料・水等の確保といった地球規模での問題で、これは先進国、新興国、途上国の協調と協力なしでは解決が困難な問題です。新旧の感染症やさまざまな自然災害への対応等もこの課題に属するといってよいでしょう。もう一つは先進国に固有な問題です。高度成長を支えた条件、すなわち豊富で低廉な労働力、安価なエネルギーや資源、環境へのコストを簿外に置いた経済運営などが崩れ去り、代わりに少子高齢化と労働人口の減少、価格が上昇し続ける枯渇性の原材料、増加の一途をたどる環境へのコストといった制約条件のもとで、成長戦略をどのように描くかという問題がこれに当たります。さてこれらの問題群に対して私たちはどのように課題を設定し、どのような姿勢で臨むべきでしょうか。

 初めは課題をどのように設定すべきかについて考えてみます。一昨年の秋、日本政府は温暖化ガスの排出量を2020年までに1990年比で25%削減するという国際公約を発し、途上国の削減努力にも必要な支援を行う用意があることを表明しました。しかしこれには産業界から異議が唱えられ、昨年末のメキシコ・カンクンでの気候変動枠組条約締約国会議(COP16)では、日本は姿勢を後退させ、新興国に失望を与える結果となりました。残念なことに、問題の先延ばしは国内の重要な課題にも随所に見られ、私たちに重苦しい閉塞感を与えています。日本の近現代史が専門のハーバード大学 アンドレー・ゴードン教授は、いま日本が目指すべきことを次のように述べています。
 「日本が直面する課題は先進諸国共通の課題であり、新興国もやがては直面する問題です。日本は他の国に先んじて挑戦するだけなのです。高齢者へのケア、資源の効率的利用、省エネルギー技術など日本がこれまでの経験から活用できることはたくさんあります。日本がこれらの問題を解決したわけではありませんが、ポスト工業社会という状況を最初に経験することは、他者に知恵を与えるポジションにあるわけです。」
 私たちが直面している問題は、近代化社会からポスト近代へと移行する過程で不可避であり、これを創造的に解決することなしに、私たちは未来を拓くことができないという視点を明確に持つべきだと私は思います。

 次は歴史的な変化の結節点に立つ私たちの心構えです。個人であれ、組織であれ、社会であれ、成功体験への固執は根強いものがあり、これから脱却するには大きな抵抗を伴います。近代化の過程で豊かな社会を実現させた私たちには、着地点が定かでないポスト近代への脱皮は容易ならざるものがあります。しかし私たちの社会には変革なしには解決できない綻びが随所に現われており、危機を告げる警報が明滅しています。
 このような状況において大切なのは、大局を誤らない課題の立て方とあわせ、解決に向けた楽観的な見方、楽観主義であると私は考えます。奇跡の人としてあまりにも有名なヘレン・ケラーは「楽観主義こそ一切を成功に導く信念です。悲観主義は何ものも生み出しません。」と著書「Optimism」の中で述べ、生涯この信念を貫いたことが知られております。またフランスの哲学者アランは、その著書「幸福論」の中で「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意思に属する。」と述べ、意思をもって行動することの大切さを説いています。私たちはともすれば勇気をもって変えなければならないときに、現状に安住して大事な機会を失いがちです。現状にとどまることにより一時的に得られる安全と、現状を脱することに伴うリスクを比べ、安全の側を選択することを実証したのは行動経済学です。ですから楽観主義を貫くことは決して容易ではありません。しかし本学を卒業するみなさんには是非この心構えをもっていただきたいと思います。

 最後に変化の直中に向かうみなさんにアメリカの神学者ラインホルド・ニーバーの言葉を贈ります。これはニーバーの祈りとして知られ、宇宙飛行士の山崎直子さんも危機に追い込まれたとき支えられたという言葉です。最初は英文で、次いで和文で紹介します。

   Give us serenity to accept what cannot be changed,
  courage to change what should be changed,
  and the wisdom to distinguish the one from the other.

  変えることのできないものについては
  それを受けいれるだけの冷静さを、
  変えることのできるものについては
  それを変えるだけの勇気を、
  そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを
 識別する知恵をあたえてください。

 卒業生、修了生のみなさん、室蘭工業大学で学んだことに誇りを持ち、深い専門性と幅広い教養に裏打ちされた人間力に自信を持って、日本で、そして世界で活躍してください。私たちも「創造的な科学技術で夢をかたちに」の理念のもと、科学技術分野を中心とした先導的な研究と、創造的な科学技術者の育成を通じて社会に貢献することをお約束し、告辞といたします。
室蘭工業大学長 佐藤 一彦

 
更新年月日:2011年3月30日 作成担当部局:企画・評価室 問合せ先:koho@mmm.muroran-it.ac.jp

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