国立大学法人 室蘭工業大学
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平成23年度室蘭工業大学入学宣誓式 告辞

平成23年4月6日

   

 本日ここに、ご来賓ならびに名誉教授の諸先生のご臨席のもと、平成23年度入学宣誓式を行いますことは、室蘭工業大学すべての教職員、学生の慶びとするところであります。この度入学された方は、工学部学士課程の689名、大学院博士前期課程が235名、博士後期課程の12名、合計936名のみなさんです。この中には海外からの留学生が学部に11名、大学院に8名含まれております。
 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。また長年にわたり勉学の環境を整えられ、努力を支えられたご家族ならび関係者の方々にも心から敬意とお祝辞を申し上げます。

 みなさんの大学入学を目前にひかえた3月11日、日本でこれまで経験したことがない大規模な地震と津波が東北日本の太平洋岸を襲い、記録的な災害をもたらしました。またこの災害により発生した福島第一原子力発電所の事故はいまだに危機的な状況が続いております。私はこの度の災害に遭遇された方々、ならびに4週にも及ぶ避難生活を余儀なくされている方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、最悪の事態を回避するために原子力発電所で日夜献身的に作業されておられる関係者の方々の無事を祈らずにはおられません。科学技術の教育と研究を使命とする本学といたしまして、この度の災害が提示している問題を真摯に受け止め、今後の研究と教育に生かすことをお誓い申し上げ、入学式の本日は、大学で何を学ぶかについて、新入生のみなさんと一緒に考えてみたいと思います。

 最初に、大学における学びの特徴について考えてみましょう。
 私たち人間は学びながら成長し、成長しながら学んでいきます。乳児は言葉よりも先に感覚で学び始め、幼児は遊びを通じて学び、学齢期には教科によって系統的に学びます。詩人の谷川俊太郎さんは「かすかな光へ」という詩の中で、学びが人間にとって本質的な行動であることを次のように表現しています。

 私たちは知りたがる動物だ
 たとえ理由が何ひとつなくても
 何の役に立たなくても知りたがり
 どこまでも闇を手探りし問い続け
 かすかな光へと歩む道の疲れを喜びに変える

 下村脩さんがオワンクラゲから緑色蛍光タンパク質を発見したのも、田中耕一さんが生体高分子の質量分析法に新しい方法を付け加えたのも、闇を手探りし、かすかな光に眼を凝らし、気の遠くなるような探索と、直感と論理をタピストリーのように織り込んだ洞察の結果のことでした。大学での学びも下村さんや田中さんが歩んだ道と重なる部分があります。大学での学びは自ら問い、主体的にその解を探し求めるところにその特質があります。教員の役割は、卵から雛が孵るとき、雛が卵の内側からつつくまさにその時に親鳥が卵を外側から破るように、「啄同時」のタイミングで学生のインストラクターを務めることにあります。
 いま大学教育は「教育者中心の教育から学習者中心の教育へ」、緩やかにしかし力強く方向を転換し、それが新しい潮流へと変わりつつあります。アクティブ・ラーニング、学習者中心の教育で、室蘭工業大学は国立大学の中で先頭集団の中におります。新入生のみなさんは本学での学びを始めるに当たり、この特色ある学習方法を胸に刻んでいただきたいと思います。

 つぎに主体的な学習者であるみなさんは大学で何を学ぶかという本題に入りましょう。
 教育基本法では、大学は学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うことを求めております。本学ではこれを敷衍して、幅広い教養と国際性、深い専門性と創造性を養うことを目標に掲げております。
 専門的能力を養う教育は近代的な大学の源流にまで遡ることができます。12世紀、ヨーロッパ各国で誕生した大学での法学、医学、神学等に始まり、現在では工学も含むさまざまな学問分野に分かれており、それぞれの専門教育が行われております。現代社会はこれらを修得した専門家を必要としており、学部レベルから次第に大学院レベルのより高度な専門性が求められる趨勢にあります。このように、大学はその誕生以来、社会に新たな産業を興し、商業を営み、法律を定め、訴訟を裁き、医療や行政や教育などに従事する専門家を送り出してきました。本学も創立以来およそ2万9千名の工学技術者を社会に送り出してきました。以上のように、専門教育の意義や重要性はみなさんにとっても容易に理解できるものと思います。

 それではもう一方の教養教育はなぜ必要なのでしょうか。
 私たちは技術者として洗練された設計理論や新規の着想や実証済みの経験知を用いて、求められればダムを造り、情報端末を創り、新幹線を走らせ、化学プラントを作ることができます。これは技術者を措いて他の専門家に頼ることができない領分です。しかしダムを造れることと、実際にダムを造ることは別問題です。治水や利水というダムの目的と、ダムを造ることによって住民やコミュニティや自然環境に与える影響を勘案して、場合によっては計画を断念することもあり得ます。この判断は専門知識とは異なる多角的な分析と評価に基づく選択を私たちに求めます。知識に対して後者は価値判断を含む総合的な力、すなわち知性を要求します。
 私たちは科学や技術を含む専門的な知識によって物質的な文化、換言すればものの豊かさを産み出すことができます。つまり専門知識は現実世界、リアリズムをつくり出します。一方、私たちは精神的な文化、換言すればこころの豊かさ、人間や社会、自然との共感や共生にも大きな関心を払います。価値判断を含むこの人間の人格性の側面はヒューマニズムに翻訳可能です。哲学者のカール・ヤスパースは「大学の理想」という著作の中で、「ヒューマニズムとリアリズムとが相互に結びつくことが教養の理想である。」と述べています。私たちは専門知識を駆使してものを作り出せるだけでなく、それが作るに値するか否かも判断できる知性を持たなければなりません。これがみなさんにとって教養教育が必要とされる根本的な理由だと、私は思います。

 教養教育においても室蘭工業大学は個性的な教育プログラムを築き上げてきました。20年近くの歳月と教員の計り知れない努力と熱意が、いま「環境と社会」、「市民と公共」、「こころとからだ」、「思考と文化」という4つのテーマを主題にした魅力的な教育コースを生み出しました。新入生のみなさんは初年次に人間・社会・数理・自然の入門的な科目を一通り学び、学問領域の眺望を自分の視野に収めたうえで、2年次以降は4つのテーマのどれか一つを深く探索することになります。知の冒険を終えて卒業を迎えるときには、リアリズムとヒューマニズムに橋を架けるいくつかの知性のスキルを手中に納めたことを実感できると私は確信します。

 千年に一度という空前の自然災害がまだ余燼を残している本日、みなさんはこうして入学宣誓式に出席することができました。この僥倖、そしてこれから大学で学ぶことができる幸運に感謝し、技術者として生きることの意義、働くことの意味を考えながら知性を磨いていっていただきたいと思います。今日から始まる大学生活がみなさんの人生にとって輝かしい日々となるよう祈念し、入学宣誓式の式辞といたします。
室蘭工業大学長 佐藤 一彦

 
更新年月日:2011年4月7日 作成担当部局:企画・評価室 問合せ先:koho@mmm.muroran-it.ac.jp

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