氏    名  大 杉 富美一 (おおすぎ ふみかず)

学位論文題目  回転貫入型杭工法の貫入・支持力機構に関する実験的研究

論文内容の要旨

 回転貫入型杭工法は,鋼管の先端や周面に螺旋状の羽根などを取り付けた杭であり,杭体を回転させることにより,低振動・低騒音で排土を伴わずに施工できる。このような特色が評価され,最近では多様な名称の工法が出現して実用化に供されている。しかし,これらの杭工法に関する従来の研究は,主に貫入性の良否や載荷試験での先端支持力係数の確認に留まっている。本論文は,比較的大型の加圧土槽を使用して,杭の貫入から鉛直支持力を発揮するまでの一連の過程における杭体応力を計測することで,回転貫入型杭工法の貫入・支持力機構を明らかにすると共に,それに基づいた支持力算定式を提案したもので,全6章および付章から構成されている。
  第1章は緒論で,回転貫入型杭工法に関する既往の研究概要や問題点を略述して,本論文の目的とその範囲を述べている。
  第2章は模型実験の方法である。本論文で新たに製作した大型加圧土槽(直径2m,高さ2.5m),貫入・載荷装置および地盤作製装置の適用性を検討すると共に,羽根面と杭先端面を独立して計測する手法を考案した。次に,貫入試験と載荷試験に使用する回転貫入杭の寸法と実験条件,並びに回転貫入杭の特性を明確にするために圧入杭と埋設杭の実験条件を設定している。
  第3章では杭の貫入時挙動について検討している。50〜150kPaまで加圧した土槽に,模型杭の貫入中および貫入後の杭体応力を計測した。羽根上面の土を反力とする推進力が杭先端地盤の有効応力を減少させて貫入性を向上させると共に,貫入後には羽根がアンカーとなって杭先端面には圧縮力および杭周面には正の摩擦力が残留する機構を明らかにした。更に,杭の貫入に必要な回転トルクや貫入後に残留する杭体各部の応力を,地盤のN値や杭径に基づいて推定する手法を示している。
  第4章は杭の鉛直載荷挙動であって,回転貫入杭の特徴的な荷重〜沈下特性を検討している。回転杭の初期の剛性は圧入杭よりも小さいが,沈下の進行に伴って徐々に羽根部が支持力を発揮し,極限支持力は同じ径の圧入杭よりもかなり大きくなることを示すと共に,杭径の10%沈下時にあたる基準支持力の算定式を地盤のN値に基づいて誘導している。
  第5章は貫入時の挙動を考慮した回転貫入杭の鉛直支持力について述べている。第4章の鉛直支持力は杭頭部の値としては正しいが,杭先端部,杭周面部や羽根部の値は載荷で変化する増分であって見掛けの支持力である。実際に杭体各部に発生している応力に基づいて求めることが,杭体の断面設計の上でも合理的であることを指摘して,第3章の残留応力を加味した新たな支持力算定式を提案している。
  第6章は,以上の章で明らかとなった結果を要約して記した本論文の総括である。
  付章として,地盤との摩擦による杭貫入中の温度上昇に伴う測定歪の補正方法を示している。

論文審査結果の要旨

 回転貫入杭は,鋼管の先端面や周面に取り付けた螺旋状の羽根が回転推進力となって土を側方に押しのけて設置され,設置後には羽根が鉛直支持力を増加させる要素として機能することを基本的な特徴としている。低振動・低騒音で排土を伴わずに施工できるため,多様な回転貫入型杭工法の開発が進められているが,これまでの研究は貫入性の良否や載荷試験での先端支持力係数の確認に留まっている。
  本論文は,比較的大型の加圧土槽を使用して,杭の貫入から鉛直支持力を発揮するまでの一連の過程における杭体応力を計測することで,回転貫入型杭工法の貫入・支持力機構を明らかにした後,それに基づいた支持力算定式を提案したものである。
  最初に,新たに製作した模型実験装置と杭体応力を計測する手法を示した後に,貫入試験と載荷試験に使用する回転貫入杭の実験条件を圧入杭と埋設杭を含めて設定している。
  貫入試験においては,羽根上面の推進力が杭先端地盤の有効応力を減少させて貫入性を向上させる機構と,貫入後には杭先端面には圧縮力および杭周面には正の摩擦力が残留する機構を明らかにした。また,杭の貫入に必要な回転トルクや貫入後に残留する杭体各部の応力推定式を,地盤のN値や杭径に基づいて誘導した。
  鉛直載荷実験においては,回転杭の初期の剛性は圧入杭よりも小さいが,沈下の進行に伴って羽根部の支持力が増大して,圧入杭よりもかなり大きな極限支持力を示すという回転貫入杭の特性を明らかにすると共に,地盤のN値と支持力の関係を見出した。
  最後に,上記の貫入試験結果と載荷試験結果の考察に基づいて,杭の鉛直支持力の評価法について検討している。すなわち,回転貫入型の杭工法では施工後の杭体に残留応力が存在することから,これを無視した従来の算定法は杭体各部の見掛けの支持力である。杭体各部に発生している応力に基づいて支持力を評価することが,杭体の断面設計の上でも合理的であることを指摘して,残留応力を加味した新たな支持力算定式を提案した。
  以上要するに,本論文は回転貫入杭の貫入と支持力の機構を明らかにして,杭施工後の残留応力を考慮した支持力算定式を提案したものであって工学的価値が高い。よって,著者は博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認める。