氏    名  澤 井 政 宏 (さわい まさひろ)

学位論文題目  商品に対する嗜好を記述したデータベースの構築と
        推奨システムへの応用

論文内容の要旨

 今日,Internetを代表とする各種メディアの発達やオンラインショップの増加に伴い,以前とは比べ物にならないほど多くの商品の中から,必要とする商品を選択することができるようなった。しかし,商品の選択肢が増加したがゆえに,実際に既存のシステムを利用して商品の情報を探し,調べた情報を元に自らの好みに合った商品を探すことは手間がかかる作業となっている。このような背景の下,ユーザの嗜好に合った商品を推奨するシステムが必要とされている。既存の推奨システムの推奨方法は,協調フィルタリング法とコンテンツベースフィルタリング法に大別できる。この内,コンテンツベースフィルタリング法は商品が持つ属性(例えば商品を音楽アーティストとした場合,アーティストの声や歌詞)を登録したデータベースを持ち,消費者が好みの属性を検索キーとして入力すると,それに合った商品を推奨する。この方法で用いられるデータベースは,商品情報提供者(メーカーや販売者)やデータベース設計者が商品の属性を登録する方法により構築されていた。しかしながら,この構築方法は1)商品の数が増えるごとにデータベース構築の作業コストが高くなる,2)販売者やデータベース設計者の一方的な評価により商品の属性が記述されるという問題点を抱えている。また,これらのデータベースには,3)商品が持つ属性のみしか登録されていない点も問題の1つである。例えば音楽アーティスト推奨を例に取ると,同じ「声」という属性に注目している人でも,「声」が「高い」アーティストを好む人と,「力強い」「声」を好む人では,推奨すべきアーティストは異なる。このような属性に対する評価をも考慮した推奨を実現するためには,データベースに商品が持つ属性のみならず,属性に対する評価をも含める必要がある。
  上述の課題を解決するため,本論文では,Web上の評価文を用いて商品情報を記述したデータベースを構築するシステムを開発する手法を提案し,システムの評価を行った。著者は,まず「ある商品の属性を肯定的に評価したため,その商品を好む」という形式に着目し,商品情報を,商品の属性と,その属性に対する評価によって記述している。
  さらに,評価実験により,本システムは,商品情報データベース構築の際に不可避に生じる作業コストを軽減できること,また,本システムによって記述されるデータベースは,評価文を記述した人たちの意見を反映していることを示した。

論文審査結果の要旨

 Internetの発達やオンラインショップの増加は,以前とは比べ物にならないほど多くの商品の中から,消費者が商品を選択する幅を拡大させている。しかし,商品の選択肢が増加しても,実際に既存のシステムを利用して商品の情報を探し,調べた情報を元に自らの好みに合った商品を探すことは大変手間がかかるため,ユーザの嗜好に合った商品を「推奨するシステム」が望まれている。
  既存の推奨システムの推奨方法では,「協調フィルタリング法」と「コンテンツベースフィルタリング法」が基本である。この内,「コンテンツベースフィルタリング法」は商品が持つ属性を登録したデータベースを持ち,消費者が好みの属性を検索キーとして入力すると,それに合った商品を推奨する。この方法で用いられるデータベースは,商品情報提供者(メーカーや販売者)やデータベース設計者が商品の属性を登録する方法により構築されているが,販売者やデータベース設計者の一方的な評価により商品の属性が記述されるという問題点があった。また,商品が持つ属性しか登録されていない点も問題として指摘されていた。属性に対する評価も考慮した推奨を実現するためには,データベースに商品が持つ属性のみならず,属性に対するユーザの評価も含める必要がある。
  このため,本論文は,Web上の評価文を用いて商品情報を記述したデータベースを構築するシステムを開発することにより,これらの問題点を解決することを試みている。
  本論文では,属性に対するユーザの評価方法として,「ある商品の属性を肯定的に評価したため,その商品を好む」という形式に着目し,商品情報を,商品の属性と,その属性に対する評価によって記述する半自動的方法を提案すると共に,評価実験を行って,嗜好に影響をあたえる属性を特定できる事,また消費者の属性に対する評価を収集可能である事を示した。
  本論文で構築したデータベースは商品情報データベース構築の際に不可避に生じる作業コストを軽減でき,また,記述した商品情報は,ユーザの評価を反映している。従って,このデータベースを用いた推奨システムは既存のシステムよりユーザの好みに合う推奨を可能にすると考えられ,情報工学の発展に寄与するものである。よって,博士論文(工学)の価値を有すると認められた。