氏    名  米 田   仁 (よねた ひとし)

学位論文題目  ニワトリ胚と雛における心拍数変動の発達に関する生理工学的研究

論文内容の要旨

 鳥類の胚は,卵殻のみで外界と接し母体の影響を受けずに成長し,哺乳類と同様の2心房2心室の心臓構造であるため個体発生過程における好個の生理機能計測モデルとして心拍数に関しても研究が行われている。ニワトリ胚において拍動毎の心拍数である瞬時心拍数が計測され,孵卵中頃に一時的な心拍数減少(一過性徐脈)及び心拍数上昇が起こり,心拍数が変動し始めることが報告されている。新生児期の計測モデルとしてのニワトリ雛においても心拍数変動に関して,特徴的な変動パターンや体温調節性の応答が研究されている。しかし,異なる種類及び実験手順による心拍数変動発達の違い及び心拍数変動の成因については未解明な部分がある。本研究は瞬時心拍数の計測及びその変動解析により,ニワトリ胚において種の違いによる心拍数変動発達の比較検証,曝露手順の変更による心拍数体温調節性応答発達の比較検証,そしてニワトリ雛において特徴的な心拍数変動の成因解明を行った。
  異なるニワトリ種において心拍数の副交感神経支配の発達に相違があるか検証するため,孵卵10〜14日令のブロイラー種及び白色レグホーン種の胚において瞬時心拍数の同時計測を行った。その結果,両種において副交感神経活動亢進時に発現する一過性の徐脈がほぼ同じ成長過程で現れた。しかし,異なる種においても徐脈の発現時期は同じであることを確認できたが,各日令1時間の最頻心拍数の変化には既に差が見られた。
  ニワトリ雛(ブロイラー種)において環境温度を育成温度(約25℃)から1時間毎に25℃→35℃→25℃の順に変化させ心拍数の体温調節性応答の発達を調べた実験では,体温調節性応答は孵化した日に現れることが報告されている。本研究では,35℃で育成した雛について環境温度の変化手順を35℃→25℃→35℃とした場合の心拍数応答の発達を調べた。その結果,25℃→35℃→25℃の順に変化させた実験と同様に0日令後半から体温調節性の心拍数応答が現れ,曝露手順の変更及び育成温度の違いは心拍数応答の発達に影響を及ぼさないことを確認した。
  ニワトリ雛の体の動きと特徴的な心拍数変動 (TypesT,UandV) との関連性を検証するため,ニワトリ雛の羽及び体全体の動きを時系列データとして数量化する画像処理システムの構築を行った。この計測システムを用い,瞬時心拍数と羽及び体全体の動き量の同時計測を行い,TypeT及びTypeUと同周期,またTypeVと同時に現れるニワトリ雛の体の動きを確認した。TypeTの変動は呼吸による動き,TypeUの変動は低温における体温調節性と思われる身震い,そしてTypeVの変動は雛がよろめいたり,暴れたりする様な大きな動きに一致していた。これらの心拍数変動及び体の動きの成因は同じと考えられる。

論文審査結果の要旨

 鳥類の胚は,卵殻のみで外界と接し母体の影響を受けずに成長し,哺乳類と同様の2心房2心室の心臓構造であるため個体発生過程における好個の生理機能計測モデルとして心拍数に関しても研究が行われている。ニワトリ胚において拍動毎の心拍数である瞬時心拍数が計測され,孵卵中頃に一時的な心拍数減少(一過性徐脈)及び心拍数上昇が起こり,心拍数が変動し始めることが報告されている。新生児期の計測モデルとしてのニワトリ雛においても心拍数変動に関して,特徴的な変動パターンや体温調節性の応答が研究されている。しかし,異なる種類及び実験手順による心拍数変動発達の違い及び心拍数変動の成因については未解明な部分がある。本研究は瞬時心拍数の計測及びその変動解析により,ニワトリ胚において種の違いによる心拍数変動発達の比較検証,曝露手順の変更による心拍数体温調節性応答発達の比較検証,そしてニワトリ雛において特徴的な心拍数変動の成因解明を行った。
  異なるニワトリ種において心拍数の副交感神経支配の発達に相違があるか検証するため,孵卵10〜14日令のブロイラー種及び白色レグホーン種の胚において瞬時心拍数の同時計測を行った。その結果,両種において副交感神経活動亢進時に発現する一過性の徐脈がほぼ同じ成長過程で現れた。しかし,異なる種においても徐脈の発現時期は同じであることを確認できたが,各日令1時間の最頻心拍数の変化には既に差が見られた。
  ニワトリ雛(ブロイラー種)において環境温度を育成温度(約25℃)から1時間毎に25℃→35℃→25℃の順に変化させ心拍数の体温調節性応答の発達を調べた実験では,体温調節性応答は孵化した日に現れることが報告されている。本研究では,35℃で育成した雛について環境温度の変化手順を35℃→25℃→35℃とした場合の心拍数応答の発達を調べた。その結果,25℃→35℃→25℃の順に変化させた実験と同様に0日令後半から体温調節性の心拍数応答が現れ,曝露手順の変更及び育成温度の違いは心拍数応答の発達に影響を及ぼさないことを確認した。
  ニワトリ雛の体の動きと特徴的な心拍数変動 (TypesT,UandV) との関連性を検証するため,ニワトリ雛の羽及び体全体の動きを時系列データとして数量化する画像処理システムの構築を行った。この計測システムを用い,瞬時心拍数と羽及び体全体の動き量の同時計測を行い,TypeT及びTypeUと同周期,またTypeVと同時に現れるニワトリ雛の体の動きを確認した。TypeTの変動は呼吸による動き,TypeUの変動は低温における体温調節性と思われる身震い,そしてTypeVの変動は雛がよろめいたり,暴れたりする様な大きな動きに一致していた。これらの心拍数変動及び体の動きの成因は同じと考えられる。