氏    名  Mirza Imran Baig (ミルザ イムラン ベイグ)

学位論文題目  Study of Chromatic Dispersion Distribution
        Measurement along Dispersion Managed Optical
        Transmission Systems Using Optical Time Domain
        Reflectometer (OTDR)
        (光パルス試験器(OTDR)を用いる分散管理光伝送システムの
        波長分散分布測定の研究)

論文内容の要旨

 光信号は長距離ファイバ伝送システムを伝搬するにつれて歪が増加していく。この歪は,導波モードの群速度の振る舞いを調べることで説明することができる。モード分散は群速度が波長λの関数であることの結果であり,波長分散と呼ばれる。このような波長分散による信号歪みを抑えるため,様々な分散管理或いは分散制御ファイバが開発された。一般に,信号歪みと非線形相互作用は波長分散の観点から互いに相反することを要求している。これに対する簡便な解決方法は,ファイバ伝送路に沿って不連続な分散マップになる,即ち分散が増加・減少と交互に起こるように配置する方法である。この方法では,ファイバ伝送路に沿った各点での分散はゼロではない値となるため,四光波混合(FWM)を効果的に除去することができる。その結果,伝送路末端での総合的な分散はゼロか或いは小さな値となる。これが分散マネージメント(管理)である。
  分散管理は光ファイバ伝送システム,特に高密度波長分割多重方式(DWDM)における要素技術の一つである。数種類の異なる光ファイバを接続した光通信システムに対してはもちろん,分散マネージメントシステムにおいても波長分散分布の精密で正確な測定が要求される。光ファイバの波長分散分布を測定する比較的簡単な方法として,双方向光パルス試験器(OTDR)を用いることが提案された。しかし,OTDRによる後方散乱パワー中の群屈折率を考慮した研究はこれまで報告されていない。この群屈折率の項を考慮することにより,モードフィールド径(MFD)の分布測定が改善されることを示す。当研究室で構築された,分散管理システムを含めて様々な種類の光ファイバを組み合わせた光伝送システムを用いて,精密な波長分散分布測定法を提案している。OTDRの後方散乱パワーにおける光ファイバの群屈折率を考慮した新たな定式化にも成功した。
  本論文の構成は以下のようである。
  第1章では光ファイバ通信の概論を説明し,波長分散によるパルス広がり効果そして分散管理の方法について述べる。第2章では光ファイバの信号減衰について説明する。線形及び非線形の散乱現象を調べて,OTDRを用いた減衰測定についても言及する。第3章は光ファイバの分散と分散による光ファイバの分類に関して議論している。また,単一モードファイバ中の波長分散特性について述べ,波長分散の数値解析も示す。第4章では逆分散ファイバ(RDF)を用いた分散補償法について説明し,RDFの設計理論についても概観する。第5章ではOTDR法の動作原理に触れ,双方向OTDRの詳細な解析を示す。第6章では波長分散分布の基になるMFD測定のための理論式について説明する。当研究室で構築した,異なるファイバを用いた伝送システムによる実験結果を考察している。最後に,第7章では本論文と研究についてまとめている。

論文審査結果の要旨

 波長多重伝送による長距離光ファイバ伝送システムにおいて,光信号は伝搬するにつれて減衰して歪が増加していく。このような波長分散による信号歪みを抑えるため,信号光波長において波長分散の絶対値が小さい分散制御ファイバが開発された。しかし,波長多重伝送では波長分散が小さいと,四光波混合等の非線形相互作用が発生しやすい。これらの相反する要求を満たすために,分散補償或いは分散マネージメント(管理)方法が考えられた。即ち,伝送路途中では分散が増加/減少と交互に起こるように配置して,末端での総合的な分散はゼロか或いは小さい値にする方法である。
  分散管理は光ファイバ伝送システム,特に高密度波長分割多重方式における要素技術の一つである。数種類の異なる光ファイバを接続した場合,それぞれのファイバの正確な波長分散値が要求される。光ファイバの波長分散分布を測定する比較的簡単な方法として,双方向光パルス試験器(OTDR)を用いることが提案された。しかし,OTDRによる後方散乱パワー中の群屈折率を考慮した研究はこれまで報告されていない。この群屈折率の項を考慮することにより,モードフィールド径(MFD)の分布測定が改善されることを示す。当研究室で構築された,分散管理システムを含めて様々な種類の光ファイバを組み合わせた光伝送システムに適用して,波長分散の長手方向における精密な測定を行ない,その有効性を確かめた。本論文の内容を以下に要約する。
  第1章は本研究の背景及び内容の概略である。第2章では光ファイバ中の信号の減衰を説明して,線形及び非線形の散乱現象についても言及している。第3章は光ファイバの分散と波長分散に注目した光ファイバの分類を議論している。第4章では逆分散ファイバ(RDF)を用いた分散補償法について説明して,RDFの設計理論も示した。第5章ではOTDR法の動作原理に触れ,双方向OTDRの詳細な解析を示す。第6章では波長分散分布の基になるMFDの分布がOTDRによる双方向測定から求められることを実証した。当研究室で構築した,RDFなどを含む光伝送システムによる実験結果について考察している。最後に,第7章では本論文と研究についてまとめている。
  このように,本研究は双方向光パルス試験器(OTDR)を用いて,様々な光ファイバを組み合わせた光伝送路で精密な波長分散分布測定法を提案し,実験によりその有効性を確かめた。従って,波長多重伝送による長距離光ファイバ伝送システムを設計する上で有用であり,光通信工学,ファイバ光学の分野の発展に貢献するところが大きい。よって,博士(工学)の学位が授与されるに値するものと認める。