氏    名  羽 入 昭 吉 (はにゅう あきよし)

学位論文題目  SBS改質アスファルトのミクロ構造とバインダおよび混合
        物の力学的性状に関する研究

論文内容の要旨

 ポリマ改質アスファルトは,舗装構造と路面機能の長寿命化,ライフサイクルコスト低減などの観点から,重交通道路の一般的な密粒系の舗装,排水性舗装のような特殊舗装および橋面舗装のような特定箇所の舗装などに多く使用されている。このバインダに主に使用されているポリマはスチレン・ブタジエンブロック共重合体であり,SBS改質アスファルトと呼ばれている。また,わが国の舗装事業は,平成13年7月に舗装の構造に関する技術基準が通達されて以来,品質確保とコスト縮減を目的として,従来の仕様規定から性能規定工事へ移行することになった。このような時代背景にあって,改質アスファルトのバインダ性状試験にもアスファルト混合物の性能を反映した試験への移行が検討されるようになってきた。また,改質アスファルトの供給者においては,性能規定を満足するような品質保証が求められており,舗装の施工者においても,性能規定を満足するであろうバインダの性能確認が必須となる。さらに,SBS改質アスファルトの性能は,バインダのミクロ構造の影響を受けるにもかかわらず,その構造とバインダおよび混合物の力学的性状との関係を明らかにする研究があまり行われてこなかった。
  本研究では,SBS改質アスファルトの性能に大きな影響を与えるミクロ構造を系統的に整理・分類し,以下のとおりSBS改質アスファルトのミクロ構造と未解明事項との関係を明らかにした。
  第1章および第2章で研究の背景,目的および改質アスファルトの変遷を述べ,第3章ではSBS改質アスファルトのミクロ構造が2つの連続相の型と3つの分散形態に分類することが合理的であることを示した。第4章ではSBS改質アスファルトの貯蔵安定性を確保するのに必要な分散形態が,粒子径1μm未満であることを示した。第5章では混合物性能を反映したバインダ性状試験として曲げ試験が有効であることを明らかにした。第6章ではポーラスアスファルトコンクリートの各種力学的性状もまた,分散形態の影響を大きく受けることを明らかにし,分散粒子径を1μm未満とすることの重要性を示した。第7章ではバインダの曲げ試験から得られる曲げ仕事量が各種の混合物性能と良い相関を示すことを明らかにした。第8章では本研究から得られた結論を述べ,SBS改質アスファルトの分散粒子径を1μm未満に管理することの重要性を述べ,舗装の施工者が分散形態を独自に判定するための方法と判定資料を提示した。このことから,分散形態を制御すれば,低SBS濃度で低コストのSBS-MAを供給できる可能性があり,建設コスト縮減に寄与できるといえる。

論文審査結果の要旨

 ポリマ改質アスファルトは,道路の舗装構造と路面機能の長寿命化,ライフサイクルコスト低減などの観点から,重交通道路の舗装,排水性舗装などの特殊舗装および橋面舗装のような特定箇所の舗装などに多く使用されている。このバインダに主に使用されているSBS改質アスファルトの性能は,バインダのミクロ構造の影響を受けるにもかかわらず,その構造とバインダおよび混合物の力学的性状との関係は明らかにされていない。そこで,本研究は,SBS改質アスファルトの性能に大きな影響を与えるミクロ構造を系統的に明らかにするとともに,バインダおよび混合物の力学的性状の評価試験法の開発とそれによる力学的関係の解析を行ったものである。
  本論文では最初に,従来不明であったSBS改質アスファルトのミクロ構造が2つの連続相の型と3つの分散形態に分類することができること,および前者はSBS濃度が7%を境に,後者は分散粒子径により合理的に区分できることを示すとともに,現場で分類可能とする顕微鏡写真による分散形態判別表を作成した。また,この分類に基づき,SBS改質アスファルトの良好な相溶状態を保つ分散形態は粒子径1μm未満であることを明らかにし,貯蔵安定性の確保と低コストでの提供を可能とした。
  次に,混合物性能を反映したバインダ性能試験方法として新しい曲げ試験法を提案し,この曲げ試験から得られる曲げ仕事量がSBS濃度と相関性があり,SBS濃度がわかると,混合物の曲げ仕事量が推定出来ることを示した。さらに,SBS改質アスファルトを対象としたポーラスアスファルトコンクリートの骨材飛散抵抗性,流動抵抗性および疲労破壊抵抗性に関する力学的性状試験法も開発し,各種評価試験を行った。その結果,混合物の低温および高温領域における飛散抵抗性はSBS濃度が高くなるほど向上し,同一濃度にあっては分散粒子径が小さいほど大きく,値の変動係数が小さくなることを明らかにした。動的安定性はSBS濃度に比例し,分散形態に依存しない。疲労抵抗性はSBS濃度に比例して大きくなるが,破壊回数の増加量は分散形態に大きく依存することを明らかにした。また,SBS改質アスファルトの分散形態と曲げ仕事量がわかれば,ポーラスアスファルトコンクリートの力学的性状を推定することが可能であることを示した。
  以上,SBS改質アスファルトのミクロ構造およびバインダと混合物の力学的性状に関して得られた成果は,舗装材料の品質保証および舗装構造性能の確保や性能仕様工事およびコストの縮減に対する有用な知見を与えており,舗装工学の分野に貢献するところ大であると判断した。よって,本論文は博士(工学)の学位の授与に十分に値する論文であると認められる。