氏    名  Bhatti Abdul Qadir (バティ・アブドール・カデール)

学位論文題目  A Study of Equivalent Fracture Energy Based Impact Response
        Analysis of Prototype RC Girders

       (破壊エネルギー等価の概念を用いた大型RC桁の衝撃応答解析
        に関する研究)


論文内容の要旨

  鉄筋コンクリート(RC)構造物に対する合理的な性能照査型設計法を確立するためには使用限界状態や終局限界状態等の各限界状態に対する簡易で合理的な照査法を確立しなければならない。そのためには,小型のみならず実規模構造部材を用いた実験的な検討が必須である。しかしながら,実規模構造部材に関する実験的検討は試験体製作,実験装置,実験計測のいずれの観点からも容易ではないことより,簡易で合理的な数値解析手法を確立し数値実験的に検討を行うことが得策であるものと判断される。このような観点より,本論文では衝撃荷重載荷時の大型RC桁の動的応答特性を適切に評価可能な三次元弾塑性有限要素法を確立することを目的に,まず,純スパン長8m,桁高85cmの大型RC桁上に90cm厚の敷砂緩衝材を設置する場合と設置しない場合を対象に,それぞれ5,000kgと2,000kgの重錘を用いた重錘落下衝撃実験を実施した。これらの実験結果を基本に,粗な要素分割状態に対しても精度的に妥当な解析結果を保証する方策として,破壊エネルギー等価の概念に基づくコンクリートの換算引張強度算定法を提案し,スパン方向要素長を変化させた場合の数値解析を行い,その妥当性を検討した。数値解析は,3方向の要素長が35〜50mmとなる直方体要素を基準要素として,1要素中に1本の曲げひび割れが発生することを前提にスパン方向要素長を変化させ,破壊エネルギー等価の概念を適用してコンクリート要素の引張強度を換算評価して実施した。なお,コンクリート要素にDrucker-Pragerの降伏条件式を適用している。本研究の範囲で得られた結果を整理すると,以下の通りである。

1)RC桁の実挙動において,基準要素とスパン方向要素長の異なる要素に対して,桁幅方向,桁高さ方向に貫通する1個の曲げひび割れが発生するものと仮定し,破壊エネルギー等価の概念を導入して任意要素の換算引張強度を算定する手法を提案した。

2)スパン方向要素長をせん断補強筋間隔(250mm)と等しくする場合に対しても,提案の手法を適用することにより基準要素を用いる場合と同程度の精度で数値解析が可能である。

3)数値解析結果と大型RC桁に関する重錘落下衝撃実験結果との比較において,数値解析結果は,提案の手法を適用することにより,支点反力波形の主波動振幅と波動継続時間,載荷点変位波形の最大変位と除荷後の自由振動状態における振幅,周期および残留変位を適切に評価可能であることが明らかになった。

論文審査結果の要旨

 鉄筋コンクリート(RC)構造物に対する合理的な性能照査型耐衝撃設計法を確立するためには,各限界状態に対する簡易で合理的な照査法を確立しなければならない。そのためには,小型のみならず実規模構造部材を用いた実験的な検討が必須である。しかしながら,実規模構造部材に関する実験的検討は試験体製作,実験装置,実験計測のいずれの観点からも容易ではないことより,簡易で合理的な数値解析手法を確立し数値実験的に検討を行うことが得策である。このような観点より,本論文では衝撃荷重載荷時の実規模RC桁の動的応答特性を適切に評価するための三次元弾塑性有限要素法を確立することを目的に,粗な要素分割状態に対しても精度的に妥当な解析結果を保証する方策として,破壊エネルギー等価の概念に基づくコンクリート要素の換算引張強度算定法を提案し,スパン方向要素長を変化させた場合の数値解析を行い,純スパン長が8mの実大RC桁に関する重錘落下衝撃実験結果と比較することによりその妥当性を検討した。数値解析は,3方向の要素長が35?50mmとなる直方体要素を基準要素として,曲げひび割れの発生を前提にスパン方向要素長を変化させ,破壊エネルギー等価の概念を適用してコンクリート要素の引張強度を換算評価して実施した。なお,コンクリート要素にはDrucker-Pragerの降伏条件式を適用している。本研究の範囲で得られた結果を整理すると,以下の通りである。

1)RC桁の実挙動において,基準要素とスパン方向要素長の異なる要素に対して,桁幅方向,桁高さ方向に貫通する1個の曲げひび割れが発生するものと仮定し,破壊エネルギー等価の概念を導入して任意要素の換算引張強度を算定する手法を提案した。

2)スパン方向要素長をせん断補強筋間隔(250mm)と等しくする場合に対しても,提案の手法を適用することにより基準要素を用いる場合と同程度の精度で数値解析が可能である。

3)提案の手法を適用することにより,実験結果の支点反力波形に関しては主波動の振幅と波動継続時間,載荷点変位波形に関しては最大変位と除荷後の自由振動状態における振幅,周期および残留変位を適切に評価可能であることが明らかになった。

  以上より,本研究はRC構造物に対する合理的な性能照査型耐衝撃設計法の確立等,衝撃工学への貢献度が大であることが認められ,著者は博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認められる。