氏    名  木村 貴 (きむら たかし)

学位論文題目  食品機械用鋳造材料の摩耗特性評価


論文内容の要旨

  食品機械の一つであるホモゲナイザーは処理液を一定圧力に昇圧(10〜100MPa)する3連もしくは5連プランジャーポンプ機構とその液出口の均質ディスクバルブ機構を有している。その均質ディスクバルブにて,流体分子間にせん断,激突,キャビテーション等の相乗作用を瞬間的に発生させ,均質的な乳化状態を形成し液分離(浮遊・沈殿)を防ぐ機械である。ホモゲナイザーではココア,カルシウム飲料など摩耗性粉体を含有する液処理での均質ディスクバルブのエロージョン摩耗,また超微粒子化を目的とした高圧化による駆動部品(軸受)の摺動摩耗の解決がそれぞれの問題において要求されている。
  本研究では,耐摩耗材として期待される球状炭化物ステンレス鋳物の耐エロージョン摩耗特性評価,及び新しい鉛フリー銅合金鋳物の摺動摩耗特性評価を実施し,それぞれ従来品以上に良好な耐摩耗特性を有することが判明した。以下に本論文の要旨を示す。
  第1章では,ホモゲナイザーについて説明すると共に,本研究の意義及び目的を述べた。
  第2章では,従来の均質ディスクバルブに使用する各材料の摩耗特性を評価するため,小型のホモゲナイザーを使用した実験を行った。結果,タングステンカーバイドのような硬い材料ほど摩耗量は減少するが,反面,乳化性能に優れる複雑なバルブ形状には加工できず,硬い材料が必ずしも均質ディスクバルブには適さないことが分かった。
  第3章では,精密加工が可能であり且つ耐摩耗性に優れる新材質として,従来品を応用したステライトにHIPを施したもの及び球状炭化物ステンレス鋳物に対して,同様の実験を行った。結果,摩耗量がSUS316の1/12以下,それにステライト#6を溶射したもの(従来品)の1/3以下という良好な耐エロージョン摩耗特性を示した。球状炭化物ステンレス鋳物とは,組織内に高硬度の球状のバナジウム炭化物(VC)が晶出したものであり,球状のVCを有するため,応力集中を分散させることにより良好なエロージョン摩耗特性を得られたと推察される。
  第4章では従来品の軸受材評価として,高圧に対応した小型摺動摩耗試験機を独自に設計・製作し,その摺動摩耗試験機の再現性を確認するとともに,各材料の摩耗表面マクロ観察,断面組織観察及び摩耗表面ミクロ観察を実施し,摩耗特性を評価した。結果,摺動摩耗は材料の初期硬さよりも加工硬化後の硬さが重要であり,加工硬化し,著しく硬さが向上する材料ほど,優れた摺動摩耗特性を示すことが分かった。
  第5章では,鉛を含まない新材質として,Ni2Siの耐摩耗性に期待したCu-Ni-Si銅合金鋳物,Mn5Si3の低摩擦性(摩擦係数=0.17程度)に期待したCu-Si-Mn銅合金鋳物及び両者の効果に期待したCu-Ni-Si-Mn銅合金鋳物の摺動摩耗特性を評価した。結果,Cu-Si-Mn銅合金鋳物は鉛を含むアルミニウム青銅鋳物より良好な摺動摩耗特性を得られた。Cu-Si-Mn銅合金鋳物は加工硬化後の硬さが向上しており,またMn5Si3が組織全体に晶出しているだけではなく,純銅内にSi,Mnが固溶硬化し,全体の硬さが向上していることが分かった。
  第6章は総括であり,本研究成果の要約,及び実用化例を示している。

論文審査結果の要旨

  本学位論文では,食品機械の一つであるホモゲナイザー部品の耐摩耗材として期待される球状炭化物ステンレス鋳物の耐エロージョン摩耗特性評価およびブッシュ用鉛フリー銅合金鋳物の摺動摩耗特性評価を実施し,それぞれ従来品以上に良好な耐摩耗特性を有することを明確にした。特に研究成果として鉛を含まないブッシュ材質として,Cu-Si-Mn銅合金鋳物は鉛を含むアルミニウム青銅鋳物より良好な摺動摩耗特性を得られた。よって,この学位論文は,博士(工学)に相応しい論文として評価に値する。