氏    名  王 朝陽 (ワン ジャオヤン)

学位論文題目  フェムト秒パルス光を用いたテーパファイバ中のスーパーコン
        ティニウム(SC)スペクトルに関する研究


論文内容の要旨

  近年,超高速・超大容量化が要求されているテラビットネットワークの構築において,光ファイバの分散効果の抑圧と共に,非線形現象の解明が重要である。また超高速非線形応答現象の光通信・計測への応用に,超短パルス光源が必須である。最近では,広い波長範囲にわたってほぼコヒーレントなスペクトルをもつスーパーコンティニウム(Supercontinuum:SC)光源が開発されている。SC光を光フィルタに通すことによって,多数の波長の異なる種パルスのコピーを同時に取り出すことができる。光波長分割多重(WDM)通信以外にも,SC光は広帯域特性を利用して分光計測,パルス圧縮などこれまで不可能だった幅広い分野に応用が期待されている。
  SC用ファイバには,分散フラット/減少ファイバ(DFDF),フォトニック結晶ファイバ(PCF)または双方向テーパファイバなどがある。テーパファイバは従来の通信用ファイバの外径を加熱延伸法より極端に細くしたもので,PCFのような複雑な構造ではなく,そのため製作が比較に容易で且つDFDFに比べて4桁も短い10cm程度のファイバでもSC発生が可能になる。しかし,テーパファイバによるSC光が発生するメカニズムはまだ充分に理解されていない。さらに,SCスペクトルを効率良く発生するファイバの条件,特性等についても詳細な検討が必要である。
  本研究は,フェムト秒パルス光を用いた双方向テーパファイバによるSC発生のメカニズムを解明することを目的している。テーパ遷移部分での断面形状の軸方向変化による光ファイバ電磁波モードを厳密に評価して,高次分散効果と高次非線形効果を考慮した非線形シュレディンガー方程式(NLSE)の解析モデルを提案する。また,テーパファイバサンプルも実際に試作し,コンティニウム光発生の基礎実験を行った。
  本論文は以下のように構成されている。第1章では,光ファイバ通信の最近の動向及びSC光発生の研究背景と応用について述べる。第2章では,光ファイバ概論と非線形伝搬方程式の導出を含む光ファイバの非線形伝搬理論について説明している。第3章では,有限要素法によりテーパ遷移部分での断面形状の電磁波モードを厳密に評価している。第4章では,テーパウエスト部の長さなどの形状パラメータ及び入射パルス幅などのパルスパラメータによるSCスペクトル特性への影響を詳述する。また,SCパルスの位相の周波数依存性についても調べ,「臨界伝搬長」及び「最適伝搬長」という新たなパラメータを提唱している。第5章では,当研究室で開発されたカプラ作製装置を改良し,テーパファイバを加熱延伸法により試作する。さらにサンプルファイバの形状を測定し,実際に短光パルスを入射することにより,スペクトルの拡がりを観察している。最後に,第6章では本研究を総括し,残された今後の課題を述べている。

論文審査結果の要旨

  最近,広い波長範囲にわたってほぼコヒーレントなスペクトルをもつスーパーコンティニウム(Supercontinuum:SC)光源が開発されている。SC光をバンドパス光フィルタに通すことによって,中心波長の異なる多数の種パルスのコピーを同時に取り出すことができる。SC光は光波長分割多重(WDM)通信以外にも,広帯域特性を利用した分光計測,パルス圧縮などこれまで不可能だった幅広い分野への応用が期待されている。
  SC光を発生するためには,従来の通信用ファイバを加工するか或いは特殊な断面構造のファイバが必要である。そのSC用ファイバには,分散フラット/減少ファイバ(DFDF),フォトニック結晶ファイバ(PCF)そして双方向テーパファイバなどがある。テーパファイバは従来の通信用ファイバの外径を加熱延伸法より極端に細くしたもので,PCFのような複雑な構造ではなく,製作が比較的容易で且つDFDFに比べて4桁も短い10cm程度のファイバでもSC発生が可能になる。しかし,テーパファイバによるSC発生のメカニズムは未だ明らかになっていない。SCスペクトルを効率良く発生するファイバの条件,特性等についても詳細な検討が必要とされていた。
  本論文では,フェムト秒パルス光を用いた双方向テーパファイバによるSC発生のメカニズムを解明している。テーパ遷移部分で断面形状が軸方向で変化する場合,光ファイバ電磁波モードを厳密に評価して,高次分散効果と高次非線形効果を考慮した非線形シュレディンガー方程式(NLSE)の解析モデルを提案し,各種パラメータを変えて数値解析した。また、テーパファイバサンプルも実際に試作し,フェムト秒パルス光を入射してコンティニウム光発生の基礎実験を行った。
  第1章では本研究の背景,SC光発生と応用について述べている。第2章では,光ファイバの非線形伝搬理論について説明している。第3章では,有限要素法を用いてテーパ遷移部分での電磁波モードを厳密に評価している。第4章では,テーパウエスト部などの形状パラメータによるSCスペクトル特性を詳しく調べた。第5章では,テーパファイバを加熱延伸法により試作し,短光パルスを入射したときのスペクトル拡がりを観察している。第6章では本研究を総括し,今後の課題を述べている。
このように,本研究はこれまで考慮されていなかったテーパ遷移部分での光ファイバ電磁波モードを厳密に評価し,フェムト秒パルス光を用いた双方向テーパファイバによるSC発生のメカニズムを解明しているので,非線形ファイバ光学,光エレクトロニクス,光ファイバ通信の研究に貢献するところが大きい。したがって,博士(工学)の学位が授与されるに相応しいものと認める。