氏    名  山 下 植 也 (やました たつや)

学位論文題目  循環ループ水配管網におけるポンプによる流量


論文内容の要旨 

  本論文は,空調設備設計における重要な要素技術となる,熱搬送における省エネルギー手法に関する研究である。
  建物を熱源機器によって空調する場合,熱は常に搬送されている。部分負荷時には流量を制御し,負荷が小さくなるほど必要な冷温水流量は少なくなる。そのため,搬送ポンプで圧送された冷温水は,流量制御バルブの開度(抵抗)によって流量を調節している。この方法を車に例えると,アクセルを踏んだまま,ブレーキで速度の制御をしていることと同じであり,省エネルギーの観点から無駄を含んでいることが分かる。また,空調機器は建物内に分散されており,それらと熱源機器を繋ぐ配管網も複雑に配置されているため,配管網上に配置される流量制御バルブの動作は配管内の圧力の変動,すなわち,搬送ポンプの動作や他の流量制御バルブの動作の影響を受ける。その結果,搬送ポンプの消費エネルギーが冗長されるこれらの観点から,本研究では,従来の流量制御に用いられていた制御バルブを廃し,配管内の流動抵抗を低減し,配管網に分散させた搬送ポンプの回転数のみで流量制御を行う新しい変流量熱搬送方式を提案する。さらに,従来から用いられている専用の往き管,還り管に替わる循環ループ型の水配管網を形成し,配管内の圧力の相互干渉を回避することによって,安定した流量制御と省エネルギー効率の高い熱搬送方式を提案する。さらに,それらの実証試験を踏まえてその効果を検証するとともに,設備計画する上での基礎データを提示し,工業的にも実現可能な熱搬送方法を提供する。
  本論文は5章からなる。第1章では,本研究の社会的背景と空気調和設備に関する実情,既往の研究を概説し,本研究が目的とする熱搬送方式の必要性について述べる。
  第2章では,ポンプを分散配置させ,循環配管方式とした変流量型の熱搬送方式を提案し,従来の方法と比較した搬送動力低減効果について解析,評価する。
  第3章では,実大規模での実証実験を行い,負荷変動時におけるシステムの制御性および搬送動力低減の効果を明らかにする。
  第4章では,配管網を設計する上で必要な,分岐・合流部の配管内温度分布と合流後の循環ループ内の冷水混合温度の予測をおこない,実施設計における設計指針を提示する。
  第5章は総論であり,得られた知見を総括する。

論文審査結果の要旨

  建物の空気調和設備において熱源で生成された冷温水は,中央の搬送ポンプで送水し,必要とする総流量をインバータにより制御し,複数の負荷側において流量制御弁で負荷を調節する方法が広く行われている。本論文は,冷温熱輸送における搬送動力低減と変流量制御の簡素化を目的とした配管システムの構築を行うものである。まず,これまで広く行われてきた流量制御弁を廃し,分散ポンプと循環ループによる配管網の熱搬送モデルを提案し,空調機入口冷水温度の変化を設計条件とした水配管網のシステムの設計方法を示した。つぎに,部分負荷時における搬送動力の低減方法として,循環ポンプの制御目標値である循環ループの還水温度を負荷に合わせて変化させることによって,空調負荷率を80%とした場合における搬送動力は,一定温度で制御する方式に比べて 10%低減可能であることを示した。さらに,提案モデルを実建物に適用した実証試験結果から,搬送動力低減効果と制御性について報告し,循環ループ水配管網の設計指針を与える。

  以上のことから,本研究によって得られた知見は,十分な価値があり,機械工学の分野に寄与するところが大きく,本論文は博士(工学)の学位論文として受理するに値すると判断する。