氏    名  岡 田 慎 哉 (おかだ しんや)

学位論文題目  鉄筋コンクリート製アーチ構造の耐衝撃挙動に関する実験的・解析的
         研究

論文内容の要旨

 トンネル巻出し部は,落石の危険性があるものの衝撃荷重を考慮した設計が施されていないのが現状である。本研究では,トンネル巻出し部を想定した鉄筋コンクリート(RC)製アーチ構造の耐衝撃挙動を解明するとともに,その耐衝撃設計法を確立することを目的として,梁形式や奥行きのある小型 RC製アーチ模型および実 RC製アーチ構造に関する重錘落下衝撃実験を行っている。また,三次元弾塑性衝撃応答解析も試み,RC製アーチ構造の耐衝撃設計法の確立に向けた基礎的検討を行っている。検討結果,敷砂や三層緩衝構造の設置による緩衝効果を実験的に明らかにするとともに,実験結果との比較により提案の数値解析手法の妥当性を確認している。また,提案の解析手法を用いて RCアーチ構造の衝撃応答時の断面力を算定し,これを基に実アーチ構造の耐衝撃性能を評価している。
 論文の構成を示すと以下の通りである。
 第1章では,研究の背景,目的および論文の概要を記している。
 第2章では,実験に用いた試験装置および計測システムに関して説明している。
 第3章では,数値解析に用いた衝撃応答解析用汎用コードの概要を説明している。
 第4章では,小型 RCアーチ模型の重錘落下衝撃実験を実施し,その耐衝撃挙動について検討
を行っている。その結果,RCアーチ構造の基本的な耐衝撃挙動を明らかにしている。
 第5章では,前章の実験を対象に三次元弾塑性衝撃応答解析を行い,解析手法の適用性について検討を行っている。なお,コンクリートの材料モデルには,破壊エネルギー等価法を適用している。その結果,提案の解析手法は RCアーチ構造の耐衝撃挙動を比較的良好に再現できることを明らかにしている。
 第6章では,実アーチ構造の重錘落下衝撃実験を実施し,実構造における耐衝撃挙動を検証している。その結果,直接載荷時には押抜きせん断破壊で終局に至ること,緩衝工を設置することにより局部損傷が抑制され,耐衝撃性能を飛躍的に向上可能であることを明らかにしている。
 第7章では,前章の実験を対象として,第5章で提案した解析手法の実アーチ構造への適用性を検討している。その結果,提案の解析手法は実アーチ構造の耐衝撃挙動を概ね再現可能であることを明らかにしている。
 第8章では,第4章から第7章までの実験および数値解析結果に基づき,第6章で対象とした実アーチ構造に対して耐衝撃性能の評価を行っている。
 第9章では,各章の結果をまとめ,本論文を総括している。

論文審査結果の要旨

  道路災害のうちで斜面災害は発生件数が最も多く,道路防災の観点から抜本的な対策が望まれている。また,道路の路線選定において危険斜面を回避するためにトンネルが用いられることも多い。この場合,トンネルの建設箇所は斜面災害を含めた路線の安全性を十分に検討した上で決定される。ここで,トンネル坑口部は通常斜面に設置され,また,トンネル坑口部は鉄筋コンクリート(RC)製アーチ構造形式の巻き出し工を有する場合が多い。これら RC製の巻き出し工には,建設時点では落石が発生しないものとして,特段の落石対策は施されていない。しかしながら,近年,経年劣化により設計当初には存在しなかった新たな落石要因が発生している。
 このようなことから,緩衝システム等を設置して巻き出し工の耐衝撃性を確保しなければならないが,RC製アーチ構造の耐衝撃安全性に関する研究事例が少ないことより,現状ではアーチ構造自体の耐衝撃性評価が不可能である。
 本研究では,このような現状の下,落石災害から人命や道路交通網の確保を最終目的に,トンネル坑口部巻き出し工を想定した RC製アーチ構造の耐衝撃挙動の把握および耐衝撃性能評価,耐衝撃設計法の確立を目的として,実験的・数値解析的研究を実施している。すなわち,実験研究としては,梁形式および版形式の小型 RCアーチ模型に関する重錘落下衝撃実験,および巻き出し工を有する国道の廃道を利用した実 RC製巻き出し工を用いた重錘落下衝撃実験を実施している。特に実規模実験においては,直接載荷実験や敷砂あるいは三層緩衝構造(表層には50cm厚の敷砂,芯材には20cm厚の RC版,裏層には50cm厚の発泡スチロールブロック)を設置した場合の耐衝撃性に関しても検討を行っている。検討の結果,直接載荷時には押抜きせん断破壊で終局に至ることや,緩衝工を設置することにより局部損傷が抑制され耐衝撃性能を飛躍的に向上可能であることを明らかにしている。
 数値解析的研究では,小型および実規模実験を対象に有限要素法に基づいた三次元弾塑性衝撃応答解析を行い,提案の解析手法は RCアーチ構造の耐衝撃挙動を比較的良好に再現できることを明らかにしている。なお,コンクリートの材料モデルには,破壊エネルギー等価法を適用することにより,実規模構造物に対しても小型の場合と同様な精度で解析可能であることを示している。
 最後に,静的荷重に対しては骨組解析法を用い,落石荷重に対しては提案の衝撃応答解析手法を用いる耐衝撃設計法を提案し,その有効性を検証している。
以上の成果は,防災工学や衝撃工学の発展に大いに貢献していると判断される。よって,著者は博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認められる。