氏    名  山 村  豊 (やまむら ゆたか)

学位論文題目  高専における電気工学実験 IT化促進に関する研究

論文内容の要旨

 急速に IT化が進んでいる今日,理工系教育機関では,多様化した情報を取り扱うことができる総合的な ITの素養を身につけさせることが重要である。函館高専では,このための環境が十分ではないので,これを早期に実現するための知見を得ることを目的として,電気工学実験を例にとり,情報システムを導入することで,実験形態の改善に取り組んだ実例を挙げ,明らかになった効果,及び問題点などについて,教育現場の情報化環境の整備に関する考察を行った。
 本研究用に設定した実験テーマは,電気電子工学科第4学年で行っている,「トランジスタ発振回路の実験」である。まず始めに伝統的な実験形態に ITを導入するために,デジタルカメラを利用した実験情報システム1を取り入れた。この実験形態の変更に関して,スパイラルアップを目指すために,実験レポートの考察課題にこのシステム1についての学生の意見を求め,システム1の問題点を抽出した。
 その学生の意見を基にして,更に IT化を促進するためにシステム2を提案した。PCとオシロスコープを融合させることにより実験およびレポート作成の効率化を目指した。このシステム2に関しても学生の意見を集め,問題点を洗い出した。
 これらの学生の意見を集約し,次の段階の改良点として,レポートを電子的に提出させて,レポート提出の自動化を目指したシステムの開発などを行う予定である。しかし,今後の課題としては,レポート作成時などにおける学生との対話的方法をいかに取るかにより,学生の能力向上を目指すことも忘れてはならない。
 本論文は全7章,及び付録から構成されている。
 第1章では,本研究の概要について説明している。
 第2章では,函館高専における教育理念とそれを踏まえた本研究の目指す方向について述べている。
 第3章では,研究テーマとした実験「Tr発振回路」の概要とデジタルカメラを用いて実験のIT化を行った実験情報システム1について述べている。
 第4章では,実験情報システム1の問題点と学生の反応について述べている。本システムの導入に関して学生の賛成意見は全体の67%であった。
 第5章では,3章,4章を踏まえて更なる IT化を目指し,PCにオシロスコープを融合させるためにアダプタを利用,さらに e-Learningなどの Webの活用も含めた,実験情報システム2について説明している。
 第6章では,実験情報システム2の問題点と学生の反応について述べている。本システムの導入に関して学生の意見は100%賛成であった。
 第7章では,本研究の結論と今後の展開について言及している。IT化促進の方法として,レポート受け取りの電子化と対話的方法についての将来像を説明している。
その他に付録として,レポートの考察課題として学生の意見を集めた2007年までの意見をのせている。この意見を集約した結果は,4章および6章で述べている

論文審査結果の要旨

 大学・高専などの電気系学校教育現場において,多様化した情報を取り扱うことができる総合的な ITの素養を身につけさせることが重要となっている現在,モノに直接触れる姿勢やそこから得られた知識の体系を教授することが重視されている。5年一貫の技術者教育を目指す高専では実験実習重視の教育が特徴であるが,このための環境が十分でない部分が多くみられ,各教育機関で特徴のある独自の取り組みが求められてきた。電気電子工学教育における実験の重要さは言うまでもなく,伝統的な実験形態の改善により,実験が本来目的としている工学・物理現象を正確に観測し,理論との関連性を理解させることが重要である。本研究は高専の教育現場において,これらを実現するための有用な知見を得ることを目的として電気工学実験を研究テーマに選んだ。本論文は,この電気工学実験に情報システムを導入することにより,実験形態の改善に取り組んだ実例を挙げ,明らかになった効果及び問題点などについて,教育現場における IT化促進の情報化環境の整備に関する考察を行ったものである。
 本論文は全7章から構成されている。第1章では,本研究の概要について述べている。第2章では,本研究の目的を明確にし,函館高専における JABEE学習目標,電気電子工学科の教育目標,及び実験科目シラバスにおける到達目標・達成目標の本研究におけるクリアすべきポイントをまとめ,本研究が実施されたときに予測できる教育的効果について説明している。第3章では,研究テーマに選んだ実験の概要と「実験情報システム1」について述べ,伝統的な実験形態に関する懸念と疑問点を挙げ,デジタルカメラを使用した IT化導入について説明をしている。第4章では,実験情報システム1の問題点と学生の反応についてまとめ,IT化による教育的効果について述べている。第5章では,3章,4章を踏まえてワンランク上の IT化を目指した「実験情報システム2」について述べている。実験情報システム1の問題点の解消と PCにオシロスコープを融合させた更なる IT化,及び e-Learningによる Webの活用も含めた教育的実践効果について述べている。第6章では,実験情報システム2の問題点と学生の反応についてまとめ,更なるIT化による教育的効果について説明している。第7章では,本研究の結論と今後の展開について言及している。伝統的な実験形態から実験情報システム1,そして実験情報システム2へと IT化を促進することによる教育的効果とその結果についてまとめている。また今後の展開に関して,電子化によるレポート提出,及び対話的教育方法についての将来的な展開について述べている。
 本論文においては,ITを駆使して伝統的な実験形態の改善を図ることによって,教育的効果が高い実験情報システムを確立するとともに,ITの具体的な応用技術を習得させるところに特徴と大きな意味がある。
本研究によって得られた知見は工学上十分な価値があり,教育工学の分野に寄与するところ大であるので,本論文は博士(工学)の学位論文に値すると認められる。