氏    名  宮 内 瞳 畄 (みやうち とおる)

学位論文題目  鉄道摩擦ブレーキ材料の摩擦・摩耗および摩擦熱に関する研究

論文内容の要旨
 鉄道摩擦ブレーキ材料を開発するためには,摩擦・摩耗,摩擦によって発生する熱など,様々な問題を考慮する必要がある。開発の初期の段階では,小型の摩擦試験機を使用すること,摩擦によって発生する熱を予測するには,有限要素解析が有効である。
 本論文では,鋳鉄複合材を開発対象とし,開発の初期の段階として,小型の摩擦試験機による摩擦・摩耗の影響を検討した。また,摩擦によって発生する熱を予測するために,熱伝導の有限要素解析を行い,最適モデルの検討,解析の実証を行った。鋳鉄複合化材については,実物大ブレーキ試験機を用いて,鋳鉄複合化制輪子としての開発を製造方法も含めて行った。さらには,開発した鋳鉄複合化制輪子の現車試験を行い,実用化可能であることを示した。以下に本論文の要旨を示す。
 第1章では,本研究を実施する背景を示し,本論文の目的と構成を述べた。
 第2章では,普通鋳鉄制輪子材(FC)および合金鋳鉄制輪子材(NH)に炭化けい素(SiC)と部分安定化ジルコニア(PSZ)のセラミックス製フィルタを鋳ぐるんだ鋳鉄複合材の小型の摩擦試験機による摩擦試験を実施した。鋳鉄中に含有される硬質相として,SiCやステダイトは,摩擦性能を効果的に向上させるが,相手材であるディスク(車輪材)の摩耗が多くなるため,最適な硬質相の量を検討する必要があることがわかった。
 第3章では,ディスクとパッドの摩擦によって発生する熱を予測するため,熱伝導の有限要素解析を実施し,最適なモデルを検討した。
 第4章では,第3章で検討したディスクとパッドのモデルを使用して,熱伝導の有限要素解析を実施し,摩擦試験結果と比較した。古典的な Jaegerの熱分配を利用した熱伝導解析は,試験結果と多くの場合一致せず,解析時間を考慮して,三次元のディスクと二次元のパッドのモデルを開発し,個別に解析することが現実的であることがわかった。
 第5章では,第2章の結果を踏まえて,合金鋳鉄制輪子に炭化けい素セラミックスフィルタを鋳ぐるんだ鋳鉄複合材の実物大ブレーキ試験を実施し,最適なフィルタの数量や量,フィルタの空孔数およびフィルタの位置を検討することにより,優れた鋳鉄複合化制輪子を開発した。また,開発品が,高速からのブレーキにおいて摩擦係数を向上させるメカニズムを明らかにした。さらには量産化できるよう製造方法も開発した。
 第6章では,本論文の総括を行うとともに,第5章で開発した鋳鉄複合化制輪子を車両に搭載して現車試験を行い,その優れた性能を確認した。

論文審査結果の要旨

 鉄道車両で使用されている踏面制輪子の材料は,鋳鉄,合成,焼結合金の3種類である。日本では,鋳鉄制輪子は鉄道の開業当初から使用されており,他の制輪子と比較して摩擦係数が低く,摩耗が多いが,湿潤化の摩擦係数が安定しており,車輪踏面の攻撃性が低く,車輪踏面を適度に粗すため,車輪とレールの摩擦力(粘着力)が高い。よって,鉄道摩擦ブレーキ材料を開発するためには,摩擦・摩耗,摩擦によって発生する熱など,様々な問題を考慮する必要がある。
本論文では,鋳鉄複合材を開発対象とし,開発の初期の段階として,小型の摩擦試験機による摩擦・摩耗の影響を検討した。普通鋳鉄制輪子材(FC)および合金鋳鉄制輪子材(NH)に炭化けい素(SiC)と部分安定化ジルコニア(PSZ)のセラミックス製フィルタを鋳ぐるんだ鋳鉄複合材の小型の摩擦試験機による摩擦試験を実施した。鋳鉄中に含有される硬質相として,SiCやステダイトは,摩擦性能を効果的に向上させるが,相手材であるディスク(車輪材)の摩耗が多くなるため,最適な硬質相の量を検討する必要があることを明確にした。その結果を踏まえて,合金鋳鉄制輪子に炭化けい素セラミックスフィルタを鋳ぐるんだ鋳鉄複合材の実物大ブレーキ試験を実施し,最適なフィルタの数量や量,フィルタの空孔数およびフィルタの位置を検討することにより,優れた鋳鉄複合化制輪子を開発した。さらには量産化できるよう製造方法も開発した。また,摩擦によって発生する熱を予測するために,熱伝導の有限要素解析を行い,最適モデルの検討,解析の実証を行った。熱分配を利用した熱伝導解析は,三次元のディスクと二次元のパッドのモデル化から,個別に解析することで実際の現象に近似できることを明確にした。
 さらに,鋳鉄複合化材については,実物大ブレーキ試験機を用いて,鋳鉄複合化制輪子としての開発を製造方法も含めて行った。その結果,開発品の搭載により,従来品のみの編成と比較して制動距離が短縮することが確認された。また,車輪および制輪子の温度,制輪子摩耗量,車輪踏面状態について,開発品と従来品で大きな相違は認められず,車輪への攻撃性の上昇は認められなかった。さらに,試験後における開発品摩擦面の鋳鉄とフィルタの複合状態は良好であったことが確認できた。しかし,実際に採用されるためには,さらに長期搭載試験を実施し,信頼性を確認することが必要であることを示した。
 よって,以上の成果は,材料の摩耗に関する工学的意義が十分と認められ,博士(工学)論文にふさわしい内容であると判断する。