氏    名  グェン コン ザン

学位論文題目  A study on advanced effective utilization of
        excavated soil in Hanoi city - Vietnam
        (ベトナム‐ハノイ市における掘削発生土の高度
        有効利用に関する研究)

論文内容の要旨

 ベトナム,ハノイ市では,最近の急速な都市近代化に伴って,工業地区の集中や人口増加による交通渋滞が深刻化し,社会経済発展に大きな影響を及ぼすようになってきており,これらの問題の解決が早急の課題となっている。ベトナム政府によるハノイ市総合開発計画では,市内交通網の近代化が優先的開発項目の一つであるとされており,現在,交通渋滞の解決を目的とした地下鉄,地下駐車場,地下歩道,地下街の建設など多くの都市地下開発が計画されている。地下開発の多くは,開削工法で行われるため,大量の掘削発生土が排出されることが予想される。
 我が国では,廃棄物処分場の容量の問題や埋戻し材の確保などの問題から,また,循環型社会を推進するため,掘削発生土の再利用方法として,流動化処理土工法が普及するようになってきた。しかし,流動化処理土は,(1)セメント系安定処理土と同様に強度が増加するのに伴って脆性的な挙動を示し耐震性能の低下が生じる恐れがある,(2)固化材による強度の増加は再掘削が必要な箇所への適用を困難にする恐れがある等の指摘がなされている。したがって,埋戻し材としての流動化処理土について,脆性的な力学挙動を改善し,靭性能の向上をはかることは重要な課題である。
 本研究では,ハノイ市のボーリング結果から軟弱層の分布や特性を把握した後,日本と軟弱粘土の特性が異なると考えられるハノイ市街地に分布する粘性土(Vinh Phuc CLAY)を母材とする流動化処理土の特性を実験的に明確にした。さらに,流動化処理土で埋戻した場合の交通荷重に対する振動特性を通常の山砂で埋戻した場合との比較により,流動化処理土の利点となるかを解析的に検討した。本研究の範囲で得られた結果を整理すると,以下の通りである。
 1)ハノイ市の地盤特性は,粘土層が非常に軟弱であること,ただし,日本の粘土のような高含水比ではなく,60%程度の自然含水比で強度が低く,圧縮性はCc=0.3程度という特徴であった。
 2)Vinh Phuc CLAYによる繊維質材混合流動化処理土の強度・変形特性は,繊維質材添加量の増加により脆性的な性質が改善される。また,我が国のNSF‐CLAY流動化処理土に比べ,Vinh Phuc CLAY流動化処理土のほうが,セメンテーション効果により,過圧密的な挙動を示し,繊維質材添加による補強効果が顕著であることが示された。
 3)開削トンネル部周辺の地盤振動について,山砂を用いた場合と流動化処理土を用いた場合とを比較し,流動化処理土を用いた場合の地盤振動特性を2次元FEM解析によって評価した。その結果,交通荷重に対する地盤振動の抑制効果があることが明らかとなった。


論文審査結果の要旨

 ベトナム,ハノイ市では,市内交通網の近代化が優先的開発項目の一つであるとされており,現在,交通渋滞の解決を目的とした地下鉄,地下駐車場,地下歩道,地下街の建設など多くの都市地下開発が計画されている。地下開発の多くは,開削工法で行われるため,大量の掘削発生土が排出されることが予想される。一方,我が国では,廃棄物処分場の容量の問題や埋戻し材の確保などの問題から,掘削発生土の再利用方法として流動化処理土を用いる埋戻し工法が普及するようになってきた。しかし,流動化処理土は,セメント系安定処理土と同様に強度の増加に伴って脆性的な挙動を示し,また,強度増加によって再掘削が必要な箇所への適用を困難にする恐れがある等の指摘がなされていることから,その脆性的な力学挙動を改善し,靭性能の向上をはかることは重要な課題であるとされている。
 本研究では,ハノイ市のボーリング結果から軟弱層の分布や特性を把握した後,ハノイ市街地に分布する粘性土(Vinh Phuc CLAY)を母材とする繊維材混合流動化処理土の特性を実験的に明確にした。さらに,流動化処理土で埋戻した地盤の交通荷重に対する振動特性を通常の山砂で埋戻した地盤との比較により解析的に検討した。本研究で得られた知見は,以下の通りである。
 1)ハノイ市の地盤特性は,粘土層が非常に軟弱であるが,日本の粘土のように高含水比ではなく,60%程度の自然含水比で,強度が小さく圧縮性が大きいという特徴が明らかとなった。
 
2)Vinh Phuc CLAYによる繊維質材混合流動化処理土の強度・変形特性は,繊維質材添加量の増加により脆性的な性質が改善されることが明らかとなった。
 3)開削トンネル部周辺の交通荷重による地盤振動について,2次元FEM解析によって検討した結果,流動化処理土地盤は交通荷重に対する地盤振動の抑制効果があることが明らかとなった。
 これらの成果から,軟弱な粘土層が分布するハノイ市における地下開発工事によって,大量に排出されると考えられる掘削発生土を有効的に再利用する方法に関して目処を付けた。さらに,本研究で提案した手法によって埋戻される地盤は,靭性能が向上したねばり強い地盤であることが明らかにされたことから,本研究はハノイ市における掘削発生土の高度有効利用に関する研究に大いに貢献するものである。よって,本論文は,博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。