氏    名  大 森 康 弘 (おおもり やすひろ)

学位論文題目  小規模汚水処理施設の運転管理用センサの開発に関する研究

論文内容の要旨

 
下水道の処理施設は全国で約2,100箇所稼動しており,そのうち900箇所がオキシデーションディッチ法と呼ばれる小規模に対応した処理方式である。下水道の普及が進むにつれて下水処理施設の建設は大都市から地方へと進み小規模分散化の傾向が顕著になるものと予想されており,小規模に適したオキシデーションディッチ法の設置数も今後益々増加していく。
 
これまで下水道の小規模処理施設の運転管理は人手に依存することもあり効率化が低く,自動化も進んでいなかった。自動化の進まない原因の1つとして,下水処理施設の管理指標を迅速・簡便に計測できるセンサが開発されてないことがあり,迅速・簡便に計測するセンサの開発が課題となっている。
 
本論文では,汚水処理量5,000m/日の以下のオキシデーションディッチ法の運転管理の自動化のための計測システムに関する研究を対象としている。この処理施設の汚水処理の操作条件は管理指標(BOD,COD,SVI等)に基づいて決められている。これらの管理指標は一般的に水質試験で測定しており,測定結果を得るのに最大5日間ほど要するため,迅速な管理に対応できない問題がある。本研究では,計測原理として最も簡単な電位計測式で,しかも長時間安定な個体膜型電極の硫化銅電極,硫化銀電極,白金電極を集合した電極を用い,複雑な組成の汚水処理施設の排水を計測した。これらの電極出力信号を多変量解析することにより,汚水処理施設で重要な管理指標であるBODとCODを迅速・簡便に計測できるセンサを開発し,実用的な知見を得た。
 
また,小規模下水処理施設の汚泥処理の運転効率化の点からも検証を行い,SVIを迅速に判定できるセンサの開発を行った。いままで汚泥の固液分離の状態を管理するセンサはなかったが,このセンサの開発によりSVIを迅速に判定し汚泥の状況を早期に把握し,運転操作上の効率化につながる可能性が見出された。
 
本論文は5章より構成されており,各章の内容は以下に示す通りとなっている。
 
第1章では研究の背景,研究の目的,論文構成について述べている。
 
第2章では,オキシデーションディッチ法での処理技術とセンシングシステムの研究開発について述べている。電位電極センサによりBOD,CODを推算する,簡便で迅速性の高いセンサを開発した。重回帰分析の結果,重回帰係数がBOD,CODで0.86と0.88とそれぞれ得られた。
 
第3章では汚泥処理の運転の効率化からSVIの迅速測定を目的としてセンサの開発を行った。SVIを1群(400未満)と2群(400以上)に分け判別率は79.1%という値が得られた。
 
第4章では総合的な監視システムとして開発した遠方監視装置のシステムについて述べた。
 
第5章では,得られた知見を要約し,本論文の総括を行った。


論文審査結果の要旨

 
本論文は小規模汚水処理施設の運転管理に必要なセンサの開発に関する研究をまとめたものである。下水道の普及が進むにつれて下水処理施設の建設は大都市から地方へと進み小規模分散化の傾向が顕著になり,小規模に適したオキシデーションディッチ法の設置数が増加している。これまで下水道の小規模処理施設の運転管理は人手に依存することもあり効率化が低く,自動化も進んでいなかった。自動化の進まない原因の1つとして,下水処理施設の管理指標を迅速・簡便に計測できるセンサが開発されていないことがあり,迅速・簡便に計測するセンサの開発が望まれている。
 
本論文は,小規模汚水処理施設で汚水処理量5,000m/日の以下のオキシデーションディッチ法の運転管理の自動化のための計測システムに関する研究を対象としている。汚水処理施設の操作条件は管理指標(BOD,COD,SVI等)に基づいて決められている。これらの管理指標は一般的に水質試験で測定しており,測定結果に最大5日間ほど要するため,迅速な管理に対応できない問題がある。本研究では,計測原理として最も簡単な電位計測式でしかも長時間安定な個体膜型電極の硫化銅電極,硫化銀電極,白金電極を集合した電極を用い,複雑な組成の汚水処理施設の排水を計測した。これらの電極出力信号を多変量解析することにより,汚水処理施設で重要な管理指標であるBODとCODを迅速・簡便に計測できるセンサを検討した。重回帰分析の結果,重回帰係数がBOD,CODで0.86と0.88とそれぞれ見出した。これらにより,3つの固体電極を用いて多変量解析することにより従来測定に時間を要していたBOD,CODを迅速・簡便に把握できる小型集合電極センサを開発し,実用的な知見を得た。
 
また,小規模汚水処理施設の汚泥処理の運転効率化・省エネには,遠心脱水設備が重要であることを明らかにし,その運転管理に必要なSVIを硫化銀電極と白金電極を用いて迅速,簡便に判定するセンサの検討をおこなった。SVI を1群(400未満)と2群(400以上)に分け判別率は79.1%という値を見出した。これまで汚泥の固液分離の状態を迅速簡便に計測するSVIセンサはほとんどなかったが,2つの固体電極を用いて判別分析により汚泥のSVIを迅速・簡便に計測するセンサを構築し,汚泥の状態の早期判別に有効であることを明らかにしている。
 
以上より,本研究は複雑な組成の汚水処理施設水において迅速な計測が難しいBOD,COD,SVIを複数の個体膜電極センサを用いて,これらの出力信号を多変量解析することにより,BOD,COD,SVIを迅速・簡便に計測する小型集合センサを研究開発し,実用的な新しい知見を提供している。このことは計測工学における貢献が大と考える。よって,提出論文は博士(工学)として価値があるものと認める。