氏    名  谷 本 文 由 (たにもと ふみよし)

学位論文題目  コンクリート表面改質材による表層物性の変化と耐久性への影響

論文内容の要旨

 近年,環境負荷およびライフサイクルコストの低減を期待して,既存のコンクリート構造物に簡便かつ比較的安価に適用可能なシラン系およびケイ酸系の表面改質材が注目されている。しかし,表面改質材に関する既往の研究において,表面改質材の種類,塗布条件,使用条件などによって効果が大きく異なることが示されており,その改質効果および強度,耐久性能に及ぼす影響は未解明な部分が多いのが現状である。
 本研究は,ケイ酸系表面改質材を中心に,表面改質材を塗布することによるコンクリート表層物性の変化と耐久性に及ぼす影響について検討したものである。まず,実務における表面改質材に関する実態を把握するために,メーカーおよびユーザーを対象としたアンケート調査と文献調査を行い,表面改質材に期待されている効果と課題について整理した。さらに,実態調査を踏まえて,実構造物の追跡調査,飛沫帯暴露試験,走査型電子顕微鏡による観察,透気試験によって表層物性の変化に関する検討を行い,中性化抑制効果,塩分浸透抑制効果,凍結融解抵抗性に関する試験によって耐久性に及ぼす影響を評価した。
 ケイ酸系表面改質材による表面物性の変化に関しては,表面から40mmの深さでの反応ゲルの生成,表層強度の増加,透気係数の低下を確認し,表層組織が緻密化していることを明らかにした。一方,シラン系表面改質材については表層から8〜10mmの浸透深さを確認した。しかしながら,中性化抑制および塩分浸透抑制に対しては,表面改質材塗布の効果は認められなかった。
 また,凍結融解試験では,表面改質材塗布による表層の緻密化によって吸水抑制効果が認められ,相対動弾性係数の低下については無塗布の場合と大きな差がないことから内部劣化に対する影響はないと判断できるものの,特に塩分が存在する状態での凍結融解による表層剥離が無塗布の場合に比べて大幅に増加する結果となった。その原因を明らかにするために,表面改質材による改質深さを10mm程度と仮定して三相系熱水分同時移動方程式を用いた含氷率の変化に関するシミュレーション解析を行った。その結果,表面改質材無塗布の場合には表層が最も含氷率が高くなるのに対して,表面改質材を塗布した場合には改質層と非改質層の境界域で含氷率が高くなることが,表層剥離増加のメカニズムの一つとして考えられることを示した。さらに,表面改質材のより有効な利用方法として,シラン系とケイ酸系の2種類の表面改質材を併用することを提案し,コンクリート打設から表面改質材を塗布するまでの材齢および塗布仕様によってその効果が異なるものの,凍結融解抵抗性が向上することを明らかにした。

論文審査結果の要旨

 本研究は,ケイ酸系表面改質材を中心に,表面改質材を塗布することによるコンクリート表層物性の変化と耐久性に及ぼす影響について検討したものである。まず,実務における表面改質材に関する実態を把握するために,メーカーおよびユーザーを対象としたアンケート調査と文献調査を行い,表面改質材に期待されている効果と課題について整理した。さらに,実態調査を踏まえて,実構造物の追跡調査,飛沫帯暴露試験,走査型電子顕微鏡による観察,透気試験によって表層物性の変化に関する検討を行い,中性化抑制効果,塩分浸透抑制効果,凍結融解抵抗性に関する試験によって耐久性に及ぼす影響を評価したものである。
 本研究の結果,ケイ酸系表面改質材による表面物性の変化に関しては,表面から40mmの深さでの反応ゲルの生成,表層強度の増加,透気係数の低下を確認し,表層組織が緻密化していることを明らかにした。一方,シラン系表面改質材については表層から8〜10mmの浸透深さを確認した。しかしながら,中性化抑制および塩分浸透抑制に対しては,表面改質材塗布の効果は認められなかった。
 また,凍結融解試験では,表面改質材塗布による表層の緻密化によって吸水抑制効果が認められ,相対動弾性係数の低下については無塗布の場合と大きな差がないことから内部劣化に対する影響はないと判断できるものの,特に塩分が存在する状態での凍結融解による表層剥離が無塗布の場合に比べて大幅に増加する結果となった。その原因を明らかにするために,表面改質材による改質深さを10mm程度と仮定して三相系熱水分同時移動方程式を用いた含氷率の変化に関するシミュレーション解析を行った。その結果,表面改質材無塗布の場合には表層が最も含氷率が高くなるのに対して,表面改質材を塗布した場合には改質層と非改質層の境界域で含氷率が高くなることが,表層剥離増加のメカニズムの一つとして考えられることを示した。さらに,表面改質材のより有効な利用方法として,シラン系とケイ酸系の2種類の表面改質材を併用することを提案し,コンクリート打設から表面改質材を塗布するまでの材齢および塗布仕様によってその効果が異なるものの,凍結融解抵抗性が向上することを明らかにしている。
 以上の成果は,コンクリート表面改質材の効果の解明に大いに貢献している。よって,著者は博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認められる。