氏    名  清 水 敏 明 (しみず としあき)

学位論文題目  海岸道路における高波による通行障害とその対策に関する研究

論文内容の要旨

 本海岸道路においては高波による通行障害が多発しており,その対策が急務となっている。本研究では,高波時の通行障害の要因を分析するとともに,その対策について検討を行った。
 まず,現在,海岸道路の防波性能の標準的な評価基準である「許容越波流量」に関して整理するとともに,海岸道路の通行障害や車両被害の実態を示した。
 次に,高波による車両被害事例の中から,特徴的な2件の被害事例について,水理模型実験や数値計算を用いた再現と分析を試みた。その結果,被害発生時の状況を再現する事により車両への波圧の作用,車両の走行速度の被害への影響などを明らかにした。特に,車両の走行速度の制限が車両被害を回避するために有効であることを示した。分析の結果から,車両の安全走行を目的とする道路護岸の防波性能の評価において,「許容越波流量」による評価の限界が明らかとなり,新たな指標策定の必要性を示した。
 また,水理模型実験結果に基づいて,越波飛沫の打ち上げ高さおよび水平方向の飛散距離の算定法を求めた。さらに,越波飛沫の現地観測を行い,その妥当性を確認した。本手法は,現状の「許容越波流量」に代わる新たな道路護岸における防波性能の評価指標である。高波に対して十分な安全性が確保できない海岸道路においては,ソフト的対策として通行規制が行われている。本手法を波浪予測と組みあわせて活用することで,通行規制の実施・解除の判定基準となる合理的な予測システムの開発を行った。
 最後に,高波に対する海岸道路のハード的対策である直立消波式構造に着目し,水理模型実験により,本研究で提案した算定式を応用して越波飛沫の飛散の軌跡を算定した。また周辺海域への影響を確認するための波の反射特性の把握,上部構造への作用波圧の算定を行った。本研究の成果に基づき,北海道えりも町国道336号荒磯海岸において,既設の道路護岸(延長160m)の改良に本構造形式が適用された。改良の前後において現地での越波観測を行い,越波飛沫の軌跡算定法の妥当性を確認するとともに,直立消波式護岸の防波性能の有効性を確認した。また,改良実施後は,実施前に比べ当該区間での高波による通行規制時間が大幅に減少し,本構造の効果を道路利用面からも確認した。


論文審査結果の要旨

 本論文は,海岸道路における高波による通行障害の要因分析とその対策の提案を目的とした一連の研究成果をとりまとめたものである。
 まず,北海道内において過去10年間に発生した高波時の通行障害の実態を調査した。その結果,越波流量が許容値である10−4(m3/m/s)を下回る水準であっても,通行車両に影響が及ぶ危険性があることを明らかにした。さらに2件の高波による車両被害事例を対象として水理模型実験および数値解析を行い,事故発生時の被害車両への作用圧力を推定した。そのうち1件のフロントガラス被害の事例に対して車両の走行速度と作用圧力との関係を明らかにし,走行速度の制限が車両被害を回避するために有効であることを定量的に示した。
 海岸道路のソフト的な高波対策として,現状では道路管理者によって,速度制限,片側交互通行,通行止めといった各種の通行規制が実施されている。しかしながら越波による危険度に関する客観的な基準が無く,熟練者の経験に依存する部分が多いことが課題であった。本研究では,系統的な水理模型実験を行って,越波飛沫の打ち上げ高さおよび水平方向の飛散距離の算定法を提案し,現地観測結果によりその妥当性を確認した。さらにこの手法に波浪予測を組み合せることにより越波危険度予測システムを確立した。同システムは,高波時に通行規制が必要となる北海道内の国道においてすでに導入されている。
 海岸道路のハード的な高波対策として,直立消波式構造に着目し,一般的な消波ブロックを用いた護岸と比較検討を行った。本研究では,水理模型実験により越波飛沫の飛散特性,設置海域への影響を確認するための反射特性,上部構造への作用波圧特性について検討した。これらの成果に基づいて,北海道えりも町目黒海岸の国道336号において,直立消波式構造を用いた道路護岸の改良が実施された。改良後に現地で得られた越波観測結果に基づいて,本研究で提案した越波飛沫算定法の妥当性を検証した。また,この改良によって当該区間の高波による通行規制が大幅に減少し,道路利用面からも直立消波式構造の有効性を確認した。
 以上の研究成果は,国内外の海岸道路の高波対策の高度化に大きく寄与すると判断されることから,本論文は博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認められた。