氏    名  嶋 田 賢 男 (しまだ たかお)

学位論文題目  電磁波ならびに超音波の開放型伝搬問題の有限要素解析法に
        関する研究

論文内容の要旨

 デバイスの特性を予め計算機上で見積もるシミュレーション技術は,デバイス設計に必要不可欠である。構造力学,熱,流体,電磁界などの各種現象の連成解析が可能であり,解析対象の忠実なモデル化が可能な有限要素法は,その汎用性から標準的なシミュレーション法となっている。さて電磁波あるいは超音波を用いた波動性を利用したデバイスの動作は,多くの場合,デバイスが無限に広がったデバイスモデルを使用する。このため,領域型解法である有限要素法を適用する場合には,無限に広がる開領域内に仮想境界を設定し,数値解析領域を内部領域と半無限な外部領域に二分し,外部領域になんらかの工夫を施す必要がある。
 伝搬特性解析では,一般に,完全整合層(Perfectly Mathced Layer:PML)を外部領域に埋め込む方法が採用されている。材料であるため,任意形状への適用が可能であるが,PMLの厚み,減衰パラメータの決定などの解析準備が必要となる。さらにPML材料を要素分割するため,最終的に解く固有値問題の次元数が,PML内の未知数分増大する。PMLパラメータの決定には,多数回の有限要素解析結果が必要であり,その自動化が望まれてきた。計算コストの観点からPMLからの反射量の高速な評価法が望まれている。また弾性波用PMLを採用した解析が報告されているが,PML材料定数の導出が不明瞭であり,有限要素解析の基本式である汎関数も必ずしも明確とはなっていない。
 一方,ハイブリッド・トレフツ有限要素法(Hybrid Trefftz Finite Element Method:HTFEM)は,外部領域をトレフツ要素1個で分割を行い,無限領域の汎関数を用いる方法である。無限領域を直接扱うため,PMLの場合に必要な材料パラメータ等の最適決定が不要であり,最終的に解く固有値問題の次元数は,内部領域の未知数となる。しかし非線形固有値問題に帰着するため,探索型の求解法では調査領域での全解を確実に求めることは困難であった。
 本論文は,開領域を解析対象とする電磁波ならびに超音波の伝搬問題解析法についての研究成果をまとめたものである。電磁波問題では,(1) 従来困難であった調査領域での全解の求解が確実に可能な,Sakurai-Sugiura法を併用したHTFEM解析法を開発した。また (2)PML層の最適パラメータ決定のために,PMLからの反射を高速に評価する方法の開発を行い,従来推奨されている減衰パラメータ分布が必ずしも適切ではないことを明らかにした。また超音波問題では,(3)弾性波用PML材料定数の再検討を行い,有限要素定式化における問題点を解消した。


論文審査結果の要旨

 デバイスの特性を予め計算機上で見積もるシミュレーション技術は,デバイス設計に必要不可欠である。電磁波あるいは超音波を用いた波動性を利用したデバイスの動作は,多くの場合,デバイスが無限に広がったデバイスモデルを使用する。このため,領域型解法である有限要素法を適用する場合には,無限に広がる開領域内に仮想境界を設定し,数値解析領域を内部領域と半無限な外部領域に二分し,外部領域になんらかの工夫を施す必要がある。
 伝搬特性解析では,一般に,完全整合層(Perfectly Mathced Layer:PML)を外部領域に埋め込む方法が採用されている。材料であるため,任意形状への適用が可能であるが,設置位置や層の厚み,PMLの減衰パラメータの決定などの解析準備が必要となる。さらにPML材料を要素分割するため,最終的に解く固有値問題の次元数が,PML内の未知数分増大する。PMLパラメータの決定には,多数回の有限要素解析結果が必要であり,その自動化が望まれてきた。計算コストの観点からPMLからの反射量の高速な評価法が望まれているが,これまでのところ報告は見当たらない。また弾性波用PMLを採用した解析が報告されているが,PML材料定数の導出が不明瞭であり,有限要素解析の基本式である汎関数も必ずしも明確とはなっていない状況にあった。
 一方,ハイブリッド・トレフツ有限要素法(Hybrid Trefftz Finite Element Method:HTFEM)は,外部領域をトレフツ要素1個で分割を行い,無限領域の汎関数を用いる方法である。無限領域を直接扱うため,PMLの場合に必要な材料パラメータ等の最適決定が不要であり,最終的に解く固有値問題の次元数は,内部領域の未知数となる。しかしながら非線形固有値問題に帰着するため,探索型の求解法では調査領域での全解を確実に求めることは困難であった。
 本論文は,開領域を解析対象とする電磁波ならびに超音波の伝搬問題解析法についての研究成果をまとめたものである。電磁波問題では,(1) 従来困難であった調査領域での全解の求解が確実に可能な,Sakurai-Sugiura法を併用したHTFEM解析法を開発した。また (2)PML層の最適パラメータ決定のために,PMLからの反射を高速に評価する方法の開発を行い,従来推奨されている減衰パラメータ分布が必ずしも適切ではないことを明らかにした。また超音波問題では,(3)弾性波用PML材料定数の再検討を行い,有限要素定式化における問題点を解消した。
 本論文の内容は,開領域の電磁波あるいは超音波伝搬問題の数値解析に大きな貢献をするものと考えられ,博士(工学)の学位論文に値するものと認める。