氏    名  小 針 良 仁 (こはり よしひと)

学位論文題目  フラボノイド類の新規合成法の開発

論文内容の要旨

 フラボノイド類は殆どの植物中に広く存在し, 抗がん活性や抗腫瘍活性などの多彩な生物活性作用を示す天然有機化合物である。近年, その創薬への利用研究が活発に行われている。 しかしながら, フラボノイド類は植物中から極微量にしか得ることができず, これが研究を推進するための妨げとなっている。 そのため, このフラボノイド類を大量に供給することが可能な効率的合成手法の開発は意義が大きい。 また, 有機合成反応を用いて天然には存在しない新規非天然型フラボノイド化合物を合成することは, 新たな生物活性作用を有する創薬シーズの発見に繋がると期待される。 このような観点から, フラボノイド類の効率的合成手法の開発を研究課題とした以下の研究 [1, 2] を行った。
[1] フラベン類は, 様々なフラボノイド類の有用な合成中間体であり, また機能性材料である一部のフォトクロミック化合物の基本骨格でもある。しかしながら, 従来の合成法であるフラバノン類からフラベン類への変換反応では, 生成物の収率が低く改善の余地がある。このことから, フラベン類を高収率で得るための新しい合成手法を開発することを目的として, フラベン-4-トリフラート類をパラジウム触媒存在下, ギ酸およびトリエチルアミンと反応させる新しい合成法の開発を行った。 その結果, 様々な官能基を持つフラベン類が高収率で得られ, 本反応がフラベン類を合成するための実用的な合成手法となることが明らかとなった。
[2] フラボン類の二量体であるビフラボン類は, 被子植物などの限られた植物中に存在し, フラボノイド類と同様に抗酸化作用などの生物活性作用を示すことなどから, その効率的合成手法の開発は重要である。ビフラボン類には, 二つのフラボンユニットが異なる位置で結合した様々なタイプの化合物が存在する。 しかしながら, それら化合物の合成は多段階を要し, 容易ではない。このことから, 容易に短行程でビフラボン類を得ることができる新しい合成手法を開発することを目的として, それぞれ構築された二つのフラボンユニットを一工程で結合させるカップリング反応を検討した。その反応としては, 様々な官能基を有する芳香族化合物のカップリング反応に適応可能な鈴木-宮浦クロスカップリング反応を用いた。その結果, 新規に合成したホウ素化フラボン類と臭化フラボン類の鈴木-宮浦クロスカップリング反応をパラジウム触媒及び塩基の存在下で行うことにより, 様々なタイプのビフラボン類を高収率で立体選択的に合成することに成功した。
 以上, 本研究において, フラボノイド類の有用な合成中間体であるフラベン類および特異な構造を有するビフラボン類を効率的に得る, 実用性の高い新規合成手法を開発することができた。

論文審査結果の要旨

 フラボノイド類は殆どの植物中に広く存在し,抗がん活性や抗腫瘍活性などの多様な生物活性作用を示す天然有機化合物である。近年,それらの化合物を創薬に利用する研究が活発に行われているが,フラボノイド類は植物中から極微量しか得ることができないため,大量に供給することが可能な効率的合成法の開発は意義が大きい。また,有機合成反応を用いて,天然には存在しない新規な非天然型フラボノイド化合物を合成することは,新たな生物活性作用を有する創薬シーズの発見につながると期待される。このような観点から,フラボノイド類の効率的合成法の研究を行った。
 フラベン類は,様々なフラボノイド類の有用な合成中間体であり,また機能性材料として働く一部のフォトクロミック化合物の基本骨格でもある。従来の合成法であるフラバン類からフラベン類への変換反応では,生成物の収率が低く改善が必要であった。フラベン類の新しい合成法の開発を目的として,フラベン−4−トリフラート類をパラジウム触媒存在下,ギ酸およびトリエチルアミンと反応させる新しい合成法の開発を行った。その結果,様々な官能基を有するフラベン類が高収率で得られ,本反応がフラベン類を合成するための実用的な合成法となることが明らかになった。
 フラボン類のニ量体であるビフラボン類は,被子植物などの限られた植物中に存在し,フラボノイド類と同様に抗酸化作用などの生物活性作用を示すことから,その効率的合成法の開発は重要である。ビフラボン類には,二つのフラボンユニットが異なる位置で結合した様々なタイプの化合物が存在する。しかし,それらの化合物の合成は多段階反応を必要とし,容易ではない。容易にかつ短段階でビフラボン類を合成する方法の開発を目的として,それぞれ別々に構築した二つの異なるフラボンユニットを一段階で結合させるカップリング反応を検討した。炭素―炭素結合を構築するカップリング反応として,様々な官能基を有する芳香族化合物のカップリング反応に適応可能な,鈴木―宮浦カップリング反応を用いた。その結果,新規に合成したホウ素化フラボン類と臭化フラボン類の鈴木―宮浦カップリング反応を,パラジウム触媒及び塩基の存在下で行うことにより,様々なタイプのビフラボン類を高収率で立体選択的に合成することに成功した。
 以上,本研究において,フラボノイド類の有用な合成中間体であるフラベン類及び特異な構造を有するビフラボン類を効率的に得る,実用性の高い新規な合成法を開発することができた。この研究成果は,学術的に高く評価されるものであり,博士(工学)論文として充分な内容であると判断した。