氏    名  南 波 宏 介 (なんば こうすけ)

学位論文題目  航空機衝突に対するキャスク蓋部の耐衝撃挙動に関する
        実験的・数値解析的研究

論文内容の要旨

 現在,我が国では,原子力発電所からの使用済燃料を,キャスクと呼ばれる密封容器を用いて中間貯蔵することが計画されている。本研究は,そのキャスク蓋部に安全設計要件を超過する航空機衝突に起因する衝撃荷重が作用した場合における耐衝撃挙動を把握し,密封性能評価法を確立することを目的とした実験的・数値解析的検討を行ったものである。実験では,キャスク蓋部にそれぞれ水平方向と垂直方向から航空機エンジンを模擬した飛来物を衝突させ,その耐衝撃応答性状や金属ガスケットの密封性に関する検討を行っている。加えて,数値解析を実施し,蓋部の耐衝撃応答性状を実験結果と比較することで,提案の解析手法の妥当性を検証している。また,金属ガスケットの密封性に関する要素実験結果を基に,蓋部変位から漏えい率を評価する手法を提案し,実験結果との比較によってその妥当性を示している。
 以上,本研究では,提案の数値解析手法を用いることによって,航空機衝突を受けるキャスク蓋部の耐衝撃挙動および密封性を精度良く推定評価可能であることを示している。以下に,各章毎の概要を述べる。
 第1章では,研究背景,既往の研究,研究目的および本研究の概要を述べている。
 第2章,第3章では,民間航空機が中間貯蔵施設に衝突した場合における施設内キャスクに想定される諸条件を整理している。また,それらの想定される条件を参考に,航空機エンジンを模擬した飛来物をキャスク蓋部に水平方向および垂直方向から衝突させる実験を実施し,衝撃荷重によるキャスク蓋部の耐衝撃挙動や,ガスケットの密封性を実験的に評価している。
 第4章では,蓋部の微小な横ずれ変位と漏えい率の関係を明らかにするためのガスケットに関する要素実験について述べている。実験結果から得られたガスケットの横ずれ変位と漏えい率の間には十分な再現性があることを明らかにし,漏えい率を評価するための漏えい率−横ずれ変位関係を求めている。
 第5章では,衝撃荷重を受けるキャスク蓋部の耐衝撃挙動を精度良く評価するための数値解析手法を提案し,モデル化手法や材料モデル等について述べている。加えて,数値解析によって密封性を評価するための,漏えい率推定手法について述べている。
 第6章では,本研究で実施したキャスク蓋部に関する衝撃実験を対象に数値解析を実施し,実験結果と比較することで,提案の数値解析手法の妥当性を検証している。加えて,解析結果から得られた蓋部挙動と第4章で得られた横ずれ変位−漏えい率関係を用いて漏えい率を推定し,実験結果と比較することにより提案の密封性評価法の妥当性を検証している。
 第7章では,第2章から第6章の各章で得られた結論を要約し,本論文を総括している。


論文審査結果の要旨

 現在,我が国ではキャスクと呼ばれる密封容器を用いて,原子力発電所から搬出される使用済燃料の中間貯蔵が予定されている。本研究では,安全設計要件を超過する航空機衝突に起因する衝撃荷重がキャスクの蓋部に作用した場合における,蓋部の耐衝撃挙動を把握し,密封性能評価法を確立することを目的とした実験的・数値解析的検討を行っている。
 実験的研究では,水平方向載荷に関しては実物の2/5縮尺キャスク,垂直方向載荷に関しては実物大のキャスクの蓋部を用い,航空機エンジンを模擬した飛来物を衝突速度60m/sで衝突させる実規模実験を実施し,キャスク蓋部の耐衝撃応答性状や金属ガスケットの密封性に関する検討を行っている。
 また,数値解析的研究では,三次元弾塑性有限要素法に基づく衝撃応答解析を実施し,蓋部の耐衝撃応答性状を各実験結果と比較することで,提案の解析手法の妥当性を検証している。また,密封性に関する金属ガスケットの要素実験結果を基に,漏えい率を蓋部変位から推定する手法を提案し,提案の手法により実験結果と精度良く対応することを示し,航空機衝突を受けるキャスク蓋部の耐衝撃挙動および密封性は,提案の数値解析手法を用いることで精度良く評価可能であることを明らかにしている。
 以上より,本研究は核燃料サイクルの一つである使用済燃料中間貯蔵容器であるキャスクの安全性の確立の観点から,原子力工学の発展に大いに貢献しており,よって著者は,博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認められる。