氏    名  アブドル アジズ モハメド アリ イブラヒム アブドル アジズ

学位論文題目  Experimental study on development of strengthening
        method for RC beams reinforced with pre-tensioned AFRP sheet
        (AFRPシート緊張接着によるRC梁の曲げ補強法の開発に関する実験的研究)

論文内容の要旨

 現在,既設鉄筋コンクリート(RC)構造物の補強工法として連続繊維(FRP)シート接着工法が数多く適用されている。また,その補強効果は,RC 部材の主鉄筋降伏後に顕著に発揮されることが明らかになっている。ひび割れ発生荷重や降伏荷重など比較的低い荷重レベルから曲げ耐力を向上させる方法として,FRP シート緊張接着工法が提案され一部で実用化されている。しかしながら,従来の緊張接着工法は,シート端部に金属製の定着治具を設置する必要があるため,施工性や耐久性および経済性に改善の余地があることが指摘されている。
 このような背景より,本研究では,簡易かつ効率的にRC 部材の曲げ耐荷性能を低い荷重レベルから向上可能にすることを目的に,アラミド繊維(AFRP)シートを用いた緊張接着工法に関する開発研究を行った。すなわち,金属製定着治具を用いずにシート定着を行うことを前提に,1) シート定着領域のコンクリート表面に応力分散用の2方向 AFRP シートを接着し,2) 定着部の付着応力勾配を緩和するために,低弾性・高伸び性能を有する接着樹脂を用いて緊張された AFRP シートを接着するものである。
 提案工法による RC 部材の曲げ耐力向上効果は,断面寸法,主鉄筋比およびシートの導入緊張率が異なる RC 梁の4点曲げ静載荷実験により検討した。また,既設構造部材への適用を想定し,載荷履歴を有する RC 梁を補強する場合についても検討を行った。これらの実験研究の結果,提案の緊張接着工法は,既設 RC 部材に対する曲げ補強工法として適用可能であることが明らかになった。
 論文は,以下の通りである。
 第1章では,本研究の目的や概要について述べている。
 第2章では,研究背景および既往の補強工法について述べている。
 第3章では,本研究で提案する AFRP シート緊張接着工法の特徴や,その優位性について述べている。
 第4章では,実験に用いた試験体や実験方法について述べている。
 第5章では,解析結果の算定方法について述べている。本研究では,シートとコンクリートの完全付着を仮定した断面分割法による解析結果と実験結果を比較することにより,提案工法による補強効果の妥当性を検証している。
 第6章では,提案工法により補強した新設 RC 梁の静載荷実験結果を示している。実験の結果,補強後における RC 梁の曲げ耐荷性能は,主鉄筋比や導入緊張率にかかわらず,シートの完全付着を仮定して算定した計算耐力を十分に保証できることなどを明らかにしている。
 第7章では,載荷履歴を有する RC 梁を対象に,提案工法を適用する場合の静載荷実験結果を示している。実験の結果,提案工法により載荷履歴を有する RC 梁のひび割れや残留変形を修復可能であり,かつその曲げ耐荷性能を向上可能であることなどを明らかにしている。
 第8章では,載荷履歴を有しかつひび割れ補修した RC 梁を対象に,提案工法を適用する場合の静載荷実験結果を示している。実験の結果,載荷履歴を有する場合には大きく開口したひび割れを確実に補修することにより緊張接着用シートの破断を抑制可能であることなどを明らかにている。
 第9章では,各章を要約し本論文を総括している。


論文審査結果の要旨

 既設鉄筋コンクリート (RC) 構造物の補強工法として連続繊維 (FRP) シート接着工法が数多く適用されている。一方,その補強効果は,RC 部材の主鉄筋降伏後に顕著に発揮されることが明らかになっている。そのため,既設 RC 部材のひび割れ発生荷重や降伏荷重など比較的低い荷重レベルから曲げ耐力を向上させる方法として,FRP シート緊張接着工法が提案され一部で実用化されている。しかしながら,従来の緊張接着工法は,シート端部に金属製の定着具を設置する必要があるため施工性や耐久性および経済性に改善の余地があることが指摘されている。
 このような背景より,本研究では,RC 部材の曲げ耐荷性能を低い荷重レベルから向上可能な補強工法として,アラミド繊維 (AFRP) シート緊張接着工法を提案しその補強効果を実験的に検討している。提案の補強工法は,金属製定着具を用いずに,緊張接着用シートの接着方法を工夫することで定着を確保することを特徴としている。すなわち,1) 定着部におけるシートの付着応力勾配を緩和することを目的に,定着端部に低弾性でかつ高伸び特性を有する接着樹脂を用い,2) 定着部の応力をさらに広く分散させるために,その領域に2方向シートを接着するものである。
 提案工法による RC 部材の曲げ耐力向上効果は,断面寸法,主鉄筋比およびシートの導入緊張率が異なる RC 梁の4点曲げ静載荷実験により検討している。また,既設構造部材への適用を想定し,載荷履歴を有する RC 梁を補強する場合についても検討を行っている。本研究の範囲で得られた結果を整理すると,以下の通りである。
1) 提案工法により補強した新設 RC 梁の曲げ耐荷性能は,主鉄筋比や導入緊張率にかか
  わらず,シートの完全付着を仮定して断面分割法により算定した計算耐力を十分に保
  証可能である。
2) 載荷履歴を有する RC 梁に対して提案工法を用いて補強することにより,ひび割れや
  残留変形は修復可能であり,かつその曲げ耐荷性能も向上可能である。
3) 載荷履歴を有しかつひび割れ補修した RC 梁に対して提案工法を適用する場合には,
  大きく開口したひび割れを確実に補修することにより緊張接着用シートの破断を抑制
  可能である。
 以上より,本研究はFRPシートを用いたRC構造物の合理的な曲げ補強法の確立に大いに貢献するものと考えられ,よって著者は博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認められる。