氏    名  古 川 克 彦 (ふるかわ かつひこ)

学位論文題目  富良野盆地地区における農業基盤に関する工学的研究

論文内容の要旨

 本研究の目的は富良野盆地地区における土壌と地下かんがいシステムの特性を検討することである。
 富良野盆地地区の丘陵地に位置する畑地圃場の作土層に関する基礎的データの収集を目的として,イオン吸着量と土壌粒径の関係について実験的に検討した。目開きが2.360‐0.075 mmのJIS標準篩を用いて土壌試料の乾式篩い分けを行い,粒径分布,水分,pH(H2O),EC,強熱減量,カリウムイオン量,マグネシウムイオン量,硝酸イオン量,硫酸イオン量を測定した。粒径が0.250 mm以上の土壌粒子に比べて,粒径が0.250 mm未満の土壌粒子には強熱減量成分が多く含まれていること,電解質を吸着しやすいことがわかった。また,粒径が0.250 mm未満の土壌粒子は陽イオンよりも陰イオンを吸着しやすいことがわかった。富良野盆地南部に位置する平坦部の畑地圃場において,pH(H2O)と硫酸イオン含有量の深さ方向分布に反比例関係が見られた。十勝岳泥流跡地である富良野川およびヌッカクシ富良野川から東へ離れるほど硫酸イオン含有量が少なくなる傾向にあることがわかった。沈降法の一種である浮力秤量法により球形ガラスビーズ,JIS試験用粉体,マグネサイト,軽焼マグネシア,玉ねぎ畑の土壌について粒径分布を測定し,篩い分け法,レーザー回折散乱法と比較した。
 富良野盆地地区の平坦部にあるがんがい排水施設を備えた一般的な圃場と既設暗渠利用型の地下かんがいシステムを備えた圃場の違いを明らかにすることを目的として,土壌のpH(H2O),EC,土壌硬度,強熱減量,硫酸イオン含有量の深さ方向分布を検討した。一般的ながんがい排水施設を備えた圃場と地下かんがいシステムを備えた圃場を比較すると,pH(H2O),EC,土壌硬度,強熱減量の深さ方向分布および季節変化に大きな違いは見られなかった。硫酸イオン含有量は,地下かんがいシステムを備えた圃場の場合は春期に比べて秋期の方が若干大きいが,両圃場とも深さ方向分布はほぼ一様であった。給水方法の違いは土壌特性に大きな変化を起こさないことがわかった。
 地下かんがいシステムを備えた圃場に供給する流量を測定するため,堰式・オリフィス式・筒型流量計を設計した。導入流量は液高さによって測定できる。スケールアップにより設計した堰式・オリフィス型流量計を用いて富良野盆地での現地試験を行った。本研究で設計した流量計によって農業用水の導入流量を測定できる。

論文審査結果の要旨

 食料生産の基盤である圃場整備などを通して農業を支援することを目的として,富良野盆地地区をモデルとして検討を行った論文である。富良野盆地地区における土壌特性や地下かんがいシステムを備えた圃場の特性などを把握するため,土壌分析や種々の圃場内栄養塩の深さ方向分布の比較,用水流量測定法の設計・開発,土壌などの粒径分布測定方法に関する検討を行っている。
 第1章では,本研究の背景についてまとめ,既往の研究を紹介して課題点を抽出した。
 第2章では,富良野盆地地区の概要を述べるとともに,富良野盆地地区が泥炭土壌,かつ,硫酸酸性土壌という特殊な土壌であることを述べている。
 第3章では,富良野盆地地区にある従来型のかんがい排水圃場から採取した土壌に関する検討を行っている。土壌水分と強熱減量には関係があること,イオン吸着量には粒径依存性があることを示している。また,富良野盆地南部の平地圃場における調査で,pH(H2O)と硫酸イオン含有量の深さ方向分布に反比例関係が見られること,十勝岳泥流跡地である富良野川およびヌッカクシ富良野川から離れるほど十勝岳泥流の影響が小さくなる傾向にあること,深さ方向分布に注意する必要があることを示している。
 第4章では,農業資材および土壌の粒径分布測定法として浮力秤量法を紹介し,農業用資材に用いられている炭酸カルシウムや土壌粒子の粒径分布測定の可能性を示している。
 第5章では,富良野盆地にある一般的なかんがい排水施設を備えた圃場と既設暗渠利用型の地下かんがいシステムを備えた圃場の違いを検討し,水田の作土層に関しては両圃場で大きな違いがないこと,畑地圃場の場合も同様であることを明らかにしている。平地に位置する水田・畑地圃場と丘陵地に位置する畑地圃場では栄養成分分布などが異なっており,作土層下の影響を大きく受けていることを示している。
 第6章では,地下かんがいシステムを導入した圃場の地下へ導く用水流量計として試作した堰式流量計,オリフィス式流量計,筒型流量計で流量測定可能であることを示した。富良野盆地地区の試験圃場で,堰式,オリフィス式流量計の実証試験を行い,適用性を確認した。
 第7章は結論であり,本論文を総括している。
 以上のように,本研究で得られた成果は今後の北海道農業に活かされることが期待されるとともに,国内外の農業基盤整備に大きく貢献すると考えられる。よって,本論文は博士論文に値すると認めた。