氏    名  李   占 涛 (リ ザンタオ)

学位論文題目  削孔機械量データによる坑道天盤地層構造の推定に関する研究

論文内容の要旨

 坑内堀鉱山・炭鉱を始めとする地下構造物の設計や施工,空洞の維持・安全管理においては,天盤の地質構造や岩盤・岩石物性を把握する必要がある。例えば,炭鉱では支保工としてロックボルトが広く施工されるが,ボルトの種類や,本数,レジンの種類を決めるためには天盤の地質構造や岩盤物性の把握が不可欠である。そのために,探査ボーリングや岩石物性試験などが行われている。
 本研究では,こうした天盤構造や岩盤物性を小口径(口径27.5mm-136mm程度)削孔機の機械量データ(ストローク,トルク,推力,回転数)から推定する手法を提案している。また,その手法を採用した削孔機システムを開発した。この削孔機でロックボルト孔を削孔することにより,適切なロックボルト施工が可能になり,複数の削孔機械量データから天盤の地層構造を可視化できるようになる。
 本研究により得られた知見をまとめると,以下のようになる。
1)削孔機械量データから,地層構造および岩盤強度を推定する方法を提案した。すなわ
  ち,岩相変化および不連続面位置の検出には,トルクと推力の比あるいは1回転当た
  りの削孔深さが有効であることを実験により明らかにした。また,岩盤の単軸圧縮強
  度の推定では,脆性破壊に関する西松の切削モデルに対してビットの刃先に「仮想底
  面」を仮定した改良モデルを考案し,その有効体積比エネルギから推定できることを
  明らかにし,実験により傍証した。
2)削孔中に削孔機械量データを記録できる,防爆型削孔機を開発した。既往の開発経験
  を踏まえ,削孔機や計測項目,センサーなどを選択し,高精度かつ自動的に機械量デ
  ータを検出・記録できるシステムである。
3)削孔機械量データと地層構造や岩盤強度などの力学的な関係および室内実験結果をも
  とに,削孔機に記録された機械量データから天盤地層構造や単軸圧縮強度の変化を求
  め,表示するアルゴリズムとソフトウェアを開発した。
4)上述の削孔システムを用いて,室内実験と現場試験(釧路コールマインと豪州の
  Gujarat NRE No.1炭鉱)を実施し,本システムの有効性と,天盤の地層構造および岩
  盤強度の推定手法の妥当性を同所で採取した岩石コア試料の強度と比較することによ
  り検証した。


論文審査結果の要旨

 坑内掘鉱山・炭鉱を始めとする地下構造物の設計や施工では,坑道天盤の地質構造の把握が効率的な施工や空洞の維持,安全管理など,ライフサイクル・マネジメントを実行する上で必要不可欠である。現状では専ら探査ボーリング等に依っているが,崩落事故等が後を絶たない。本研究では,ロックボルト支保工のための天盤削孔に着目し,その削孔機械量データ(トルク,推力,回転数,ストローク)から地層構造として岩相境界,亀裂分布,単軸圧縮強度を推定し,可視化表示するシステムの開発を目的としている。
 第1章では,こうした研究の背景,既往の研究,目的について述べている。
 第2章では,小型回転削孔機の岩石削孔モデルを提案し,削孔トルクや体積比エネルギと単軸圧縮強度の関係を導出している。その際,削孔過程を切削(Cutting)と送り(Feed)の二つの運動に分け,ビットの底面に摩擦を反映する「仮想底面」を導入し,西松の岩石切削理論と圧入理論を拡張している。
 第3章では,提案した削孔モデルから導出される削孔トルクや有効体積比エネルギ(仮想底面を導入した体積比エネルギ)と単軸圧縮強度との関係を,室内実験により検証している。その結果,有効体積比エネルギから単軸圧縮強度が推定でき,亀裂位置の検出にはトルクと推力の比が適していることを確認した。
 第4章では,削孔中に削孔機の機械量データを記録する本質安全防爆型削孔機の開発過程について述べ,機械量データから第2章の関係式を用いて亀裂位置や単軸圧縮強度を推定するソフトウェア・システムについて説明している。
 第5章では,第4章のハードウェアとソフトウェアを用いて,釧路コールマインと豪州の炭鉱で実施した実証試験結果について述べている。亀裂位置の検出にはトルクと推力の比が有効であり,有効体積比エネルギから充分な精度で単軸圧縮強度を推定できることを示している。また,得られた地層構造をVRML(Virtual Realty Modeling Language)を用いて3次元で可視化表示し,その有効性に言及している。
 第6章は,以上の総括であり,本研究目的に対する結論である。
 以上のように,本研究で得られた成果は,資源開発工学や岩盤工学などの分野の発展に寄与するところが大であり,今後,世界中の様々な地下開発のフィールドで活用が期待される。よって,本論文は博士論文に値すると判断された。