氏    名  王    飛 (ワン フェイ)

学位論文題目  Development of Absorbents for Carbon Dioxide
        by Using Synthesized Lithium Complex Oxides,
        Natural Limestone and Dolomite
        (合成リチウム複合酸化物,石灰,ドロマイトを用いた
        二酸化炭素吸収材の開発)

論文内容の要旨

 最初にゾル−ゲル法により合成したリチウム複合酸化物のCO2吸収・放出特性を明らかにした上で,次に安価な石灰,ドロマイト,珪藻土などを原料に用いたCO2吸収材について検討した。
 ゾル−ゲル法により合成したLi2ZrO3, LiTiO2および Li2SiO3は,湿潤ゲル体からアルコールや水などの溶媒が細孔を通して蒸発するため,粉末粒子が多孔質体であることから,高温のみならず,常温付近でもCO2を十分吸収する可能性がある。一例として,Li2ZrO3を293,313,333 Kにて115.2 ks放置した場合の吸収率は26,31,43%となり,925 K以上では反対にCO2を放出した。また,反応率データを,球状粒子の未反応核の半径が生成物層の厚さに比べて非常に大きな場合に成立するCrank, GinstlingおよびBrounshteinの式を用いて速度解析した。その結果,Li2SiO3, Li2ZrO3, LiTiO2の順に28, 24, 15 kJ/molとなり,ゼオライト中の細孔径が約0.4nmの細孔をCO2が拡散する場合の見掛けの活性化エネルギー値(20kJ/mol)から,CO2吸収における律速過程についても同様に生成物層内ガス拡散であると推定した。
 ドロマイトを真空中で加熱分解した生成物(CaOとMgO)のCO2吸収・放出特性について検討した。CO2の吸収・放出を1, 2, 3回と繰り返す度に吸収率は42,23,19%と減少し,反対にCO2放出後の比表面積は27 ,53,94 m2/gと増加した。従来のAr雰囲気中の加熱に対し真空加熱により,CO2放出温度の低下が確認され,さらに比表面積と気孔体積の増加による吸収率の増加が確認された。CO2吸収後は,未反応のMgOの他,CaCO3の生成が確認された。吸収・放出の繰り返しによる吸収率の減少と比表面積の増加は,CO2との反応と分解に伴う体積膨張と体積収縮による粉化によるものと推定された。
 次に,真空加熱を施した石灰のCO2吸収・放出特性について検討した。CO2の吸収・放出を繰り返す度にCaO粒子の凝集による吸収率と比表面積の減少が確認された。そこで,TiO2,SiO2および珪藻土を添加し,1273K,3.6ksと973K,7.2ksの条件で加熱した吸収材を用意した。50 wt%のTiO2を添加した石灰の場合,673,773,873Kのそれぞれの温度で21.6 ksの吸収,1273 Kにおける放出を20回繰り返したところ,吸収率は吸収温度の増加とともに18,25,35%と増加するものの繰り返し回数には依存しなかった。一方,10 wt%SiO2または5 wt%の珪藻土を添加し1273K,3.6ksの条件で加熱した石灰の場合,いずれの場合も比表面積の増加によりTiO2添加の場合よりも吸収率が増加した。また,673 Kで21.6 ksの吸収と1273 Kの放出を20回の繰り返したところ,いずれも10回までは吸収率が減少したものの,その後はほぼ20%一定となった。


論文審査結果の要旨

 原料費が高価でもCO2の吸収・放出特性に優れた材料を合成するところから研究を始め,最終的に安価な天然鉱物を用いたCO2吸収・放出に優れた材料開発に成功した。
  最初にゾル−ゲル法によりLi2ZrO3, LiTiO2および Li2SiO3を合成し,その構造に由来した優れた吸収・放出特性を確認するとともに,速度解析から吸収・放出メカニズムを明確にした。一例として,Li2ZrO3を293,313,333 Kにて115.2 ks放置した場合の吸収率は26,31,43%となり,925 K以上では反対にCO2を放出することを確認した。また,反応率データを,球状粒子の未反応核の半径が生成物層の厚さに比べて非常に大きな場合に成立するCrank, GinstlingおよびBrounshteinの式を用いて速度解析した。その結果,Li2SiO3, Li2ZrO3, LiTiO2の順に28, 24, 15 kJ/molとなり,ゼオライト中の細孔径が約0.4nmの細孔をCO2が拡散する場合の見掛けの活性化エネルギー値(20kJ/mol)に近いことから,CO2吸収における律速過程についても同様に生成物層内ガス拡散であると推定した。
 次に天然鉱物を用いたものでは,ドロマイトを真空中で加熱分解した生成物(CaOとMgO)のCO2吸収・放出特性について検討した。CO2の吸収・放出を1, 2, 3回と繰り返す度に吸収率は42,23,19%と減少し,反対にCO2放出後の比表面積は27 ,53,94 m2/gと増加した。従来のAr雰囲気中の加熱に対し真空加熱により,CO2放出温度の低下が確認され,さらに比表面積と気孔体積の増加による吸収率の増加が確認された。CO2吸収後は,未反応のMgOの他,CaCO3の生成が確認された。吸収?放出の繰り返しによる吸収率の減少と比表面積の増加は,CO2との反応と分解に伴う体積膨張と体積収縮による粉化によるものと推定された。
 さらに,真空加熱を施した石灰のCO2吸収・放出特性についても検討している。CO2の吸収・放出を繰り返す度にCaO粒子の凝集による吸収率と比表面積の減少が確認された。そこで,TiO2,SiO2および珪藻土を添加し,1273K,3.6ksと973K,7.2ksの条件で加熱した吸収材を用意した。50 wt%のTiO2を添加した石灰の場合,673,773,873Kのそれぞれの温度で21.6 ksの吸収,1273 Kにおける放出を20回繰り返したところ,吸収率は吸収温度の増加とともに18,25,35%と増加するものの繰り返し回数には依存しなかった。一方,10 wt%SiO2または5 wt%の珪藻土を添加し1273K,3.6ksの条件で加熱した石灰の場合,いずれの場合も比表面積の増加によりTiO2添加の場合よりも吸収率が増加した。また,673 Kで21.6 ksの吸収と1273 Kの放出を20回の繰り返したところ,いずれも10回までは吸収率が減少したものの,その後はほぼ20%一定となった。
  以上の知見は,ドロマイトや石灰の新規CO2吸収材としての用途を提案するに十分足りるものであり,材料工学の進歩に貢献するところが大である。