氏    名  長谷川 雅 浩 (はせがわ まさひろ)

学位論文題目  高齢者の居住の安定のための住環境整備に関する研究

論文内容の要旨

 本格的な少子高齢社会の到来により,高齢者の住まい,暮らしに関してどのような環境を整えていくかが社会の安心を構築していく上で課題となる。住宅を社会資本と捉えた場合,一定の尺度を持って高齢者の住みやすさが評価され,整備されていくことが必要である。本研究は,高齢者,特に要介護者が住み続けられる住宅について,その仕様,整備基準について明らかにすることを目的とし,高齢期の居住像の設定,高齢者・要介護者住宅計画の実験的検討,現状の高齢化対応状況と普及の課題の検討を行い,新たな高齢化対応基準の枠組を提案した。
  第1章では,研究の背景となる人口の高齢化,世帯動向,これまでの高齢者向け住宅に関する制度,施策を整理し,研究の目的について述べた。
第2章では,高齢者の住宅を考えるときの前提条件となる高齢者の生活状況について分析を行った。高齢者は身体機能の衰えとともに屋内生活の比重が高まり,要介護者については外部サービスの利用が困難な排泄行為,排泄介助について在宅生活時は特に重視しなければならないことを示した。
  第3章では,公営住宅における要介護者の居住実態などから計画上の課題を整理した上で,身体機能の低下に備えた平面計画のあり方について実験によりプランの評価を行い,便所,浴室,脱衣室,通路などの空間構成について提案を行った。さらに,提案した空間構成に基づいて設計された公営住宅における高齢者の居住実態の分析により,高齢者向け公営住宅の平面計画について検証を加えた。
  第4章では,新築住宅における高齢者向け空間の整備水準の状況についてその実態と傾向について明らかにした。身体機能が低下したときに問題となる,移動,排泄,入浴に関する整備水準の状況については,各部位ごとに普及具合に大きな差が見られ,居室間の段差,通路幅員や階段などは高齢化対応の度合いが高いが,便所,浴室,玄関では低いことが明らかになった。また,車いすでの移動,排泄,入浴といった生活行為への対応率も低いなど,新築住宅の多くは介助が必要な高齢者が住み続けられる仕様となっていないことを明らかにした。
  第5章では,住宅の高齢化対応を評価するにあたって標準的な基準となっている住宅性能表制度高齢化対策等級の基準の枠組について問題点を整理し,生活行為に着目した基準構成と,想定する身体状況の設定として自立歩行者と自操用車いす使用者の2つの水準を想定すべきであることを提案した。


論文審査結果の要旨

 本論文は,本格的な高齢社会の到来を踏まえて,高齢者,特に要介護者が住み続けられる住宅について,生活行為に着目した新たな高齢化対応基準の枠組を提案している。
  第1章では,研究の背景となる人口の高齢化,世帯動向,これまでの高齢者向け住宅に関する制度,施策を整理している。研究の目的は,高齢者,特に要介護者が住み続けられる住宅について,その仕様と整備基準について明らかにすることである。
  第2章では,高齢者の生活状況について高齢者世帯の調査結果から,身体機能が衰えるとともに屋内生活の比重が高まり,要介護者については外部化が困難な排泄行為,排泄介助が在宅生活において特に重視しなければならないことを示した。
  第3章では,公営住宅における要介護者の居住実態などから計画上の課題を整理した上で,身体機能の低下に備えた平面計画について,実物大実験により,各プランを評価し,便所,浴室,脱衣室,通路などの空間構成について提案をしている。さらに,提案した空間構成に基づいて設計された公営住宅における高齢者の居住実態の分析により,高齢者向け公営住宅の平面計画を検証している。
  第4章では,新築住宅における高齢者向け空間の整備水準について,実態と傾向を明らかにした。身体機能が低下した時に問題となる,移動,排泄,入浴に関する整備水準については,各部位毎に普及の度合に大きな差が見られた。居室間の段差,通路幅員や階段などは高齢化対応の度合が高いが,便所,浴室,玄関では低かった。また,車椅子による移動,排泄,入浴といった生活行為への対応率も低いなど,新築住宅の多くは,介助が必要となる高齢者が住み続けられる仕様となっていないことを明らかにした。
  第5章では,住宅の高齢化対応を評価する標準的な基準となっている住宅性能表示制度の高齢化対策等級の基準の限界を示し,想定する身体状況の設定として,自立歩行者と自操用車椅子使用者に分けて,生活行為に着目した新たな基準を提案している。
  以上から,本論文は,「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の住宅性能表示制度の高齢化対応等級の基準の限界を示すとともにそれに代わる生活行為に着目した新たな基準を提案しており,博士の学位にふさわしいと判断される。