氏    名  田 村 智 樹 (たむら ともき)

学位論文題目  新第三紀堆積軟岩における拡幅トンネルの設計に関する研究

論文内容の要旨

 本研究では,課題の多い第三紀堆積軟岩におけるトンネル拡幅について,支保選定や補助工法の提案に有益な指標を見出し,設計,施工の現場作業にフィードバックすることを目的とし,約70年前に建設された鉄道トンネルの拡幅工事の中で得られたデータに基づき検討を行った。
 第1章は本研究の序論である。本研究の背景,研究概要,および本論文の構成について述べる。
 第2章では,既往研究について紹介し,課題や本研究との相違点を抽出した。
 第3章では,本研究対象である既設鉄道トンネルの建設背景,これまでの経過,構造諸元と研究対象が位置する周辺地の地形・地質の概要を示し,道路トンネルとして再利用を図る拡幅計画の詳細について述べる。
 第4章では,既設トンネルの現況評価と周辺地山の特性に基づく既設トンネルの掘削損傷領域:EDZ(Excavation Damaged Zone)の推定を行った。既設トンネルのひずみと地山の破壊ひずみと対比させ,既設トンネル周辺地山に塑性化した領域,すなわち,EDZが存在していると評価した。EDZの形成過程を鑑み弾性波速度Vpに着目した。既設トンネル周辺地山のVpの分布を考察することでEDZの推定が可能であると考えた。
 第5章では,VpによりEDZを推定し,推定結果をRQD(Rock Quality Designation)によるボーリング所見,および掘削直後の切羽を対比させ検証を行った。アーチアクションが有効に作用するトンネル本体部で相関性が認められ,VpによるEDZの推定について有効性を示した。
 第6章では,トンネルの拡幅掘削,すなわち,EDZを掘削した場合の地山の変位挙動について述べる。既設トンネルの変位量とFEM解析による拡幅掘削時の推定変位量,および施工時に計測した実変位量,さらに近傍の新設トンネル施工時に計測した実変位量を対比させた。EDZの掘削では変位が抑制される傾向を示し,この知見による拡幅トンネルにおける最適な支保設計の可能性を見出した。
 第7章では,拡幅トンネルの設計法の提案を行った。VpよりEDZを推定し,拡幅断面とEDZの関係を把握することで,最適な支保構造の設計と補助工法の選定を可能とした。また,新第三紀の堆積軟岩では掘削ズリから重金属の溶出が懸念されるが,トンネル施工時の余剰材である吹付けコンクリートの跳ね返り材(リバウンド材)を不溶化材として利用する実験的検証を行い,As,Pbに対して不溶化効果の有効性を見出した。
 第8章は本研究の結論である。本研究で得られた知見は,わが国多数存在する新第三紀の堆積軟岩に建設されたトンネルの改築や拡幅工事,すなわち,トンネルを基軸にした循環型社会の形成に応用できる。

論文審査結果の要旨

 本研究では,課題の多い新第三紀堆積軟岩におけるトンネル拡幅について,支保選定や補助工法の提案に有益な指標を見出し,設計,施工の現場作業にフィードバックすることを目的とし,約70年前に建設された鉄道トンネルの拡幅工事で得られたデータに基づき検討した。
 第1章は本研究の序論である。本研究の背景,研究概要や本論文構成について述べる。
 第2章では,既往研究について紹介し,課題や本研究との相違点を抽出した。
 第3章では,本研究対象である既設鉄道トンネルの建設背景,これまでの経過,構造諸元と研究対象が位置する周辺地の地形・地質の概要を示し,道路トンネルとして再利用を図る拡幅計画の詳細について述べる。
 第4章では,既設トンネルの現況評価と周辺地山の特性に基づく既設トンネルの掘削損傷領域:EDZ(Excavation Damaged Zone)の推定を行った。既設トンネルのひずみと地山の限界ひずみと対比させ,既設トンネル周辺地山に塑性化した領域,すなわち,EDZが存在していると評価した。EDZの形成過程を鑑み弾性波速度Vp に着目した。既設トンネル周辺地山のVpの分布を考察することでEDZの推定が可能であると考えた。
 第5章では,VpによりEDZを推定し,推定結果をRQD(Rock Quality Designation)によるボーリング所見,および掘削直後の切羽を対比させて検証を行った。アーチアクションが有効に作用するトンネル本体部で相関性が認められ,VpによるEDZの推定に対する有効性を示した。
 第6章では,トンネルの拡幅掘削,すなわち,EDZを掘削した場合の地山の変位挙動について述べる。既設トンネルの変位量とFEM解析による拡幅掘削時の推定変位量,および施工時に計測した実変位量,さらに近傍の新設トンネル施工時に計測した実変位量を対比させた。EDZの掘削では変位が抑制される傾向を示し,この知見による拡幅トンネルにおける最適な支保設計の可能性を見出した。
 第7章では,拡幅トンネルの設計法の提案を行った。VpよりEDZを推定し,拡幅断面とEDZの関係を把握することで,最適な支保構造の設計と補助工法の選定を可能とした。また新第三紀の堆積軟岩では掘削ズリから重金属の溶出が懸念されるが,トンネル施工時の余剰材である吹付けコンクリートの跳ね返り材(リバウンド材)の不溶化材として利用する実験的検証を行い,As,Pbに対して不溶化効果の有効性を見出した。
第8章は本研究の結論である。
 以上から,本研究で得られた知見は,わが国に多数存在する新第三紀の堆積軟岩に建設されたトンネルの改築や拡幅工事に応用できる。よって,本論文は博士論文に値すると認めた。