氏    名  于   偉 東 (ウ イトウ)

学位論文題目  廃棄物由来動物タンパク質を用いたバイオプラス
        チックスの創製

論文内容の要旨

 縫製・アパレル等から排出されたシルクを含む繊維屑や繊維製造工場不良品などの繊維産業廃棄物,さらには養鶏場や布団業者から回収された羽毛から,フィブロインタンパク質ならびにケラチンタンパク質が樹脂化したバイオプラスチックスを創製することを目的とした。最初に,シルクは他の繊維と組み合わせた混紡織物製品,交織織物製品,交撚糸繊維製品としても用いられるため,これらの廃棄物からフィブロインタンパク質のみを回収するための二つのプロセスを構築した。一つは,中性塩水溶液にフィブロインが可溶であることを利用し,シルク製品廃棄物からフィブロインタンパク質のみを固液分離することにより,比較的純度の高いフィブロインタンパク質を得ることができた。二つ目は,シルク繊維が太陽光下で黄変して脆化することを利用し,シルク製品廃棄物に低圧水銀ランプから発生した紫外線を照射し,その後,ボールミルで粉砕することにより,紫外線の下で脆化したシルク繊維と紫外線を照射しても脆化が遅いシルク以外の繊維との間で,簡単な篩分けのみによりシルク繊維のみが回収できることを明らかにした。また,回収されたフィブロインタンパク質,シルク繊維の用途開発も行い,何れからもパルス通電焼結装置を用いた加圧成形により筐体等への利用が期待される耐熱性を有する樹脂化を確認した。この樹脂化については,連続的な作製方法についても追求し,回転する加熱された二つのロールの間に水を含んだシルク粉末を通す方法により,従来のパルス通電焼結装置により作製した樹脂と同等の樹脂化を可能にした。さらに,これらの樹脂の高機能化を図るため,銀ナノ粒子が分散した樹脂の作製にも取り組み,フィブロイン水溶液に硝酸銀を加え,セリンが持つヒドロキシル基を還元剤に利用することにより,銀ナノ粒子を分散させることができた。この樹脂は,可視光下で銀含有量により赤色から橙色に発色し,さらには大腸菌を用いた抗菌試験から優れた抗菌性を確かめた。最後に,ケラチンタンパク質についても,水鳥由来のケラチンを用い,フィブロインタンパク質と同様にパルス通電焼結装置を用いた加圧成形を行い,半透明の樹脂化した成形体の作製に成功している。

論文審査結果の要旨

 縫製・アパレル等から排出されたシルクを含む繊維屑や繊維製造工場不良品などの繊維産業廃棄物,さらには養鶏場や布団業者から回収された羽毛から,フィブロインタンパク質ならびにケラチンタンパク質が樹脂化したバイオプラスチックスを創製することを目的とした。最初に,シルクは他の繊維と組み合わせた混紡織物製品,交織織物製品,交撚糸繊維製品としても用いられるため,これらの廃棄物からフィブロインタンパク質のみを回収するための二つのプロセスを構築した。一つは,中性塩水溶液にフィブロインが可溶であることを利用し,シルク製品廃棄物からフィブロインタンパク質のみを固液分離することにより,比較的純度の高いフィブロインタンパク質を得ることができた。二つ目は,シルク繊維が太陽光下で黄変して脆化することを利用し,シルク製品廃棄物に低圧水銀ランプから発生した紫外線を照射し,その後,ボールミルで粉砕することにより,紫外線の下で脆化したシルク繊維と紫外線を照射しても脆化が遅いシルク以外の繊維との間で,簡単な篩分けのみによりシルク繊維のみが回収できることを明らかにした。また,回収されたフィブロインタンパク質,シルク繊維の用途開発も行い,どちらからもパルス通電焼結装置を用いた加圧成形により筐体等への利用が期待される耐熱性を有する樹脂化を確認した。この樹脂化については,連続的な作製方法についても追求し,回転する加熱された二つのロールの間に水を含んだシルク粉末を通す方法により,従来のパルス通電焼結装置により作製した樹脂と同等の樹脂化を可能にした。さらに,これらの樹脂の高機能化を図るため,銀ナノ粒子が分散した樹脂の作製にも取り組み,フィブロイン水溶液に硝酸銀を加え,セリンが持つヒドロキシル基を還元剤に利用することにより,銀ナノ粒子を分散させることができた。この樹脂は,可視光下で銀含有量により赤色から橙色に発色し,さらには大腸菌を用いた抗菌試験から優れた抗菌性を確かめた。最後にケラチンタンパク質についても,水鳥由来のケラチンを用い,フィブロインタンパク質と同様にパルス通電焼結装置を用いた加圧成形を行い,半透明の樹脂化した成形体の作製に成功している。
 以上の知見は,繊維製品廃棄物についてサーマルリサイクル以外の新たなプロセスを提案するものであり,材料工学の進歩に貢献するところが大である。よって,本論文は工学博士の学位論文として価値あるものである。