氏    名  齋 藤 隆 晃(さいとう たかあき)

学位論文題目  変数群間の時系列関連性モデルの構築に関する研究

論文内容の要旨

 生体は医薬品や食事の摂取,化粧品の使用等で物理的状態と心理的状態が変化する。物理的状態と心理的状態の関係を実験的に調べるには,物理的な測定値の時系列と心理的な測定値の時系列の関係性を正しく扱える分析を行うべきである。本研究では,客観的な物理的反応と主観的な心理的反応との間の動的な関係をモデリングし,その関連性を定量的に評価することを目的とした。そのため,本研究では構造方程式モデリングを用い,グラフィカルに関連性を表示するモデルを構築した。物理的な変数のサブグラフの時系列と心理的な変数のサブグラフの時系列からなる。本研究ではこのモデルを「時系列関連性モデル(TSRM:Time Sequential Relevance Model)」としている。
 モデルは,皮膚の状態と印象の関係を調査するために顔のパックをした実験データのセットに適用した。物理的な変数群に肌画像の特徴量を使用し,そして印象評価を心理的な変数群として使用した。特徴量は11種類の画像解析手法を肌画像に適用することで得られ,その中から物理的変数に使用するものを選んだ。心理的変数から2つのグループを変数間の相関を基準として構築した。
 物理的サブグラフはひとつの特徴量からなり,心理的サブグラフは変数集合のひとつに潜在変数を加えたものからなっていた。物理的変数の方が,測定頻度が大きかった。実験的介入によって物理的変数が心理的変数に及ぼす影響を調べるために,数時点分の物理変数からひとつの心理的サブグラフの代表変数へ弧を引いた。各要因での時間的変化を調べるため,物理的変数と心理的サブグラフの代表値それぞれについて,ある時点から次の時点へも弧を引いた。その時間的変化を表す弧のパス係数は時点によって異なる値を示した。物理的サブグラフと心理的サブグラフの間のパス係数は観測時点によって異なる値を示した。
 24人全員のデータをSEMの分析に用いた。物理変数と心理変数との間にある関連性は時間の推移により変化し,そして,実験中の事象により物理変数と心理変数とは各変数群内での時系列的な関連性が変動することを示した。TSRMによって,我々はこれらの関連性を定量的そして,視覚的に調べることが可能となった。


論文審査結果の要旨

 生体は医薬品や食事の摂取,化粧品の使用等で物理的状態と心理的状態が変化する。物理的状態と心理的状態の関係を実験的に調べるには,物理的な測定値の時系列と心理的な測定値の時系列の関係性を正しく扱える分析を行うべきである。本研究では,客観的な物理的反応と主観的な心理的反応との間の動的な関係をモデリングし,その関連性を定量的に評価することを目的とした。そのため,本研究では構造方程式モデリング(SEM: Structural equation modeling)を用い,グラフィカルに関連性を表示するモデルを構築した。物理的な変数のサブグラフの時系列と心理的な変数のサブグラフの時系列からなる。本研究ではこのモデルを「時系列関連性モデル(TSRM:Time Sequential Relevance Model)」としている。
 モデルは,皮膚の状態と印象の関係を調査するために顔のパックをした実験データのセットに適用した。物理的な変数群に肌画像の特徴量を使用し,そして印象評価を心理的な変数群として使用した。特徴量は11種類の画像解析手法を肌画像に適用することで得られ,その中から物理的変数に使用するものを選んだ。心理的変数から2つのグループを変数間の相関を基準として構築した。
 物理的サブグラフはひとつの特徴量からなり,心理的サブグラフは変数集合のひとつに潜在変数を加えたものからなっていた。物理的変数の方が,測定頻度が大きかった。実験的介入によって物理的変数が心理的変数に及ぼす影響を調べるために,数時点分の物理変数からひとつの心理的サブグラフの代表変数へ弧を引いた。各要因での時間的変化を調べるため,物理的変数と心理的サブグラフの代表値それぞれについて,ある時点から次の時点へも弧を引いた。その時間的変化を表す弧のパス係数は時点によって異なる値を示した。物理的サブグラフと心理的サブグラフの間のパス係数は観測時点によって異なる値を示した。
 24人の女性のデータをSEMの分析に用いた。物理変数と心理変数との間にある関連性は時間の推移により変化し,実験中の事象により物理変数と心理変数とは各変数群内での時系列的な関連性が変動することを示した。TSRMにより,これらの関連性が定量的でかつ視覚的に評価することが可能となった。
 本論文で示した時系列型のモデルは,個人の心理的感覚と肌の状態という物理的状態間の関連性を把握することで今後の感性工学分野への貢献が非常に大きいと考える。よって提出論文は,博士学位論文として価値があるものと認める。