氏    名  中 里 直 史(なかざと  なおふみ)

学位論文題目  NITE法SiC/SiC複合材料の要素技術の高度化及び統合に関する研究

論文内容の要旨

 本論文は,高温・中性子照射等の過酷環境下での使用を想定したSiC長繊維強化型SiC基複合材料(SiC/SiC複合材料)の作製技術の高度化および材料特性の高性能化に関する成果をまとめたもので,7章からなっている。
 第1章は「序論」で,研究の背景,目的および意義について述べている。先進的SiC/SiC複合材料の作製技術であるナノインフィルトレーション遷移共晶相(NITE)法の優位性・必然性を説き,NITE法の実用化を推進するための湿式法から乾式法へのプロセスの転換の必要性を言及し,本研究における乾式NITE法を用いたSiC/SiC複合材料の実用化に向けた要素技術の高度化及び統合の意義について述べている。
 第2章では,SiC/SiC複合材料に関する基礎として,その構成要素の基礎物性,製造方法の特徴と,高温・過酷環境下での耐環境特性に関する研究成果を系統的にまとめている。次いでNITE法の現状までの成果をまとめ,実用化に向けた課題点について言及している。
 第3章では,NITE法の中間素材作製に関する知見を体系的にまとめ,グリーンシート形成における最適なスラリー設計を検討し,均質な中間素材の作製条件を提示している。
 第4章では,中間素材を用いた乾式NITE法による高密度・高強度マトリックス形成の為のプロセスの高度化として,モノリシック材を用い,成型温度の最適化,及び焼結性低下要因の抽出・明確化に基づいたSiC粉末の選択により,高密度・高強度マトリックス形成を可能とすることでマトリックス形成技術の高度化を実証している。
 第5章では,複合化プロセスの高度化として,プリフォーム段階での中間処理技術の適用により,重要な課題であった成型時の体積収縮に伴う繊維構造の崩れを大幅に低減可能とし,成型体の高密度化・高強度化にも成功している。次いで繊維構造設計のための繊維配向依存性の解明から,実験値と破損則により強度異方性予測図を構築し,複雑形状部材作製における繊維構造設計への知見を提示している。
 第6章では,乾式NITE法での複雑形状部材成型の基本的な成型技術の成立性を示すと同時に,技術課題の抽出から更なる高度化への指針を提示している。さらに高性能化プロセス(2ステップ・プロセス)の原理・実証から,高密度・高強度化が認められたことから,2ステップ・プロセスの有効性を示している。
 第7章は総括で,これら一連の研究は乾式NITE法を用いたSiC/SiC複合材料の実用化に向けた要素技術の高度化に留まらず,それら技術の統合により,NITE法SiC/SiC複合材料の新たな高度製造プロセスの可能性を示している。


論文審査結果の要旨

 本論文はナノインフィルトレーション遷移共晶相(NITE)法を用いたSiC長繊維強化型SiC基複合材料(SiC/SiC複合材料)の作製技術に関する研究についてまとめている。SiC/SiC複合材料は主に原子炉の燃料被覆管への適用が期待されており,燃料被覆管には高密度,高強度,高熱伝導率等が要求される。NITE法はマトリックス原料であるSiCナノ粉末を液相焼結することで,繊維束内の空隙に緻密なマトリックスを形成する複合材料製造技術である。本研究で用いた乾式NITE法はハンドリング性に優れた乾式の中間素材(グリーンシート,プリプレグシート)を使用することで,従来の湿式法と比較し,実用化を目指した作製プロセスとなっている。乾式NITE法SiC/SiC複合材料の更なる高性能化には,作製プロセスの高度化が必要不可欠である。特に中間素材作製技術,マトリックス形成技術,複合化技術の高度化が重要である。本研究では乾式NITE法の各要素技術の高度化を行い,それら技術の統合による,新たな作製プロセスの提示・実証から,乾式NITE法SiC/SiC複合材料の高性能化を実現している。以下,主要な成果を示す。(1) 中間素材作製技術において,スラリー設計(SiC粉末の選定,バインダーの選定,混合方法の改善)の検討により,均質な中間素材の作製を可能としている。(2)マトリックス形成技術の課題であった焼結性低下の要因を,中間素材及びモノリシックSiCの化学分析により,明確にしている。さらに焼結性低下の要因に基づき,粉末表面特性が異なるSiC粉末の適用により焼結性を改善することで,高密度・高強度マトリックス形成を可能とし,マトリックス形成技術の高度化を達成している。(3)複合化技術の課題であった成型時の体積収縮に伴う繊維構造の崩れを,プリフォーム段階での中間処理技術の適用により大幅に抑制している。これにより最終成型体の高密度化・高強度化を実証し,複合化技術の高度化を達成している。(4) 最終的に(1)〜(3)の成果を用い,高度化した要素技術の統合により新たな作製プロセスを示し,乾式NITE法SiC/SiC複合材料の高性能化を実証している。これら一連の研究はNITE法の作製プロセスの高度化に加え,NITE法SiC/SiC複合材料の高性能化に至っており,SiC/SiC複合材料の実用化に大きく寄与する。
 以上のように,本論文は博士(工学)の学位論文として価値あるものと認める。また,平成25年1月28日の論文審査公開発表会における,論文内容の口頭発表と発表に関する質疑・応答の結果,合格と認める。