災害時に有効な支援体制を目指して

 
全学共通教育センター 前田 潤


 私の専門は臨床心理学です。私は,本学に赴任する前には,伊達赤十字病院で心理判定員として患者やその家族の支援に携わっていました。病院に勤務していた2000年に有珠山が噴火し,赤十字の職員として初めて災害支援に携わりました。これを契機に,本学に赴任して以降,私は災害時に組織的に心理支援を行うための体制づくりを研究課題として,日本赤十字社(JRCS)や国際赤十字赤月社連盟(IFRC)と協力して研究を進めてきました。
 これまで私の研究室で進めてきた研究は,組織的心理支援体制を構築するための「災害支援教育」,実際の災害での「災害支援」そして,「災害実態調査」の3つに集約されます。

1. 災害支援教育
 IFRCは,世界各国の災害や紛争などへの支援活動を行っています。日本では「こころのケア」と言いますが,国際機関では「メンタルヘルスと心理社会的支援」と述べて,重要な支援活動とされています。そして多くの被災者に効果的な支援を行うためには,支援者の教育が重要です。2003年には,JRCSは災害救護の柱の一つに「こころのケア」を挙げ赤十字救護要員の教育研修を開始しました。教育研修の研修マニュアル,研修方法を作成し,実際に救護要員に対する教育研修に協力をしてきました。
 災害支援教育は,実際に有効なものとならなければなりません。単なる座学ではなく体験学習を取り入れる必要もあり,体験学習の技法であるサイコドラマの研究も行っています。

2. 災害支援
 国内ばかりか世界各国で災害が頻発しています。こうした災害の実際的な支援で,こころのケア活動を展開する日本赤十字社への協力を行っています。2003年宮城県北部連続地震,2004年新潟県中越地震,2005年福岡県西方沖地震,2007年新潟県中越沖地震,2009年宮城岩手連続地震,そして2011年東日本大震災では急性期から中長期にわたる支援活動を展開するために日本赤十字社や日本臨床心理士会と組織づくりや実際的な支援活動を行ってきました。

3. 災害実態調査
 世界各地で起きている災害には,地震や水害,津波などの急激に発生する自然災害もありますし,事故や事件などの人為的災害もあります。その他に,干ばつ被害や砂漠化など影響の表れが緩慢な災害もあります。こうした多様な災害の調査のために日本国内だけでなく「イラン」「USA」「中国」「イタリア」「内モンゴル」などで断続的,継続的に調査活動を行ってもきました。被災からの復興過程には各国の特性が反映してくるのです。

 本学で心理学の専門家は私一人しかおらず,研究室に日本の学生は一人もいません。しかし,環境科学・防災研究センターで,本学の先生たちと共同研究を進め,科学研究費補助金を得て,全国の専門家と共同研究を進めてきました。災害支援は,心理学だけでなく,多くの専門家が共同して有効な支援体制を築くための研究が欠かせません。東日本大震災に見舞われて,ますます,英知を結集する必要が出てきました。学術横断的な新しい研究体制を多くの専門家と共同して作っていきたいと考えているところです。





2007年 石川県能登半島地震で救護活動を行った石川県支部の日赤職員との記念撮影 
 
 

2009年 イタリア・ラクイラ地震でのイタリア赤十字社の支援活動調査にて(左から二人目はピエロの姿をしたドクター・クラウンと呼ばれる心理支援スタッフ) 
 
 
2010年 国際赤十字赤月社連盟が行った心理社会的支援スタッフトレーニングワークショップの南アジア大会に東アジア代表として参加(右端は本学客員教授 日本赤十字社 国際救援部長 槙島敏治先生)

               
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更新年月日:2012年2月2日 作成担当部局:企画・評価室 問合せ先:koho@mmm.muroran-it.ac.jp