バイオガスの放電プラズマ改質による水素生成技術開発
―低炭素社会の実現に向けて―

 
情報電子工学系学科電気電子工学コース 佐藤 孝紀


 私達のまわりにある空気は高性能な絶縁体(電気を通さない物質)ですが,高い電圧が加えられると,突然,導体(電気を通す物質)へと変化します。このミステリアスな現象を絶縁破壊といい,その結果,明るい光を発する放電プラズマが現れます。図1は,市販されている観賞用の放電プラズマのプラズマボールの写真です。中心部分に高電圧が印加され,そのまわりから赤紫色の放電プラズマが外側に向かって伸びています。蛍光灯,プラズマテレビなども身近にある人工の放電プラズマで,雷やオーロラは自然界の放電プラズマです。




 放電プラズマ中には,気体分子,電子,イオン,光子など様々な種(しゅ)が高密度で存在し,それらが高速で飛び交い,衝突を繰り返しています。このような種の中で電子は,温度に換算すると数万℃以上に相当する高いエネルギーを持っていて,衝突相手の分子を分解することが可能です。「バイオガスの放電プラズマ改質による水素生成技術開発」という研究は,放電プラズマ中にある高エネルギー種を用いてバイオガスを分解し,クリーンエネルギー源として注目されている水素を生成する技術の開発を目的としています。なお,バイオガスとは,家畜排泄物などのバイオマスをメタン発酵させて生成されるガスで,その組成はおおよそメタンガス60%と二酸化炭素40%です。
 図2はバイオガスの放電改質と水素の生成を大まかに示したものです。メタンガスは温室効果ガスですが,それを分解して作られる水素ガスは代表的なクリーンエネルギー源となり,燃料電池や水素エンジンの燃料ガスとなります。また,バイオガスを放電プラズマで処理すると,硫化水素などの臭気物質処理も同時にできるというメリットもあります。




 表1は低気圧グロー放電プラズマを用いて,メタンガスや種々の揮発性炭化物質を分解したときの水素転化率を示しています。最高で,メタンガスに含まれる水素の83.5%を水素ガスに転化できることが実験で明らかになっています。




 図3は,私たちが考える低炭素社会―二酸化炭素の排出量を少なくし,地球温暖化を抑制することを目指す社会―でのエネルギーフローの一例です。北海道ではたくさんの家畜が飼われていて,その排泄物からバイオガスの製造が可能です。また,風力,波力,太陽光などの自然エネルギー発電も可能です。この電気エネルギーを用い,私たちが開発する放電プラズマ装置を使ってバイオガスから,クリーンエネルギー源である水素を生成する技術を実用化し,低炭素社会の実現を目指しています。




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更新年月日:2011年9月9日 作成担当部局:企画・評価室 問合せ先:koho@mmm.muroran-it.ac.jp