環境・エネルギーシステム材料研究機構の研究紹介

 
環境・エネルギーシステム材料研究機構長 香山 晃


 環境・エネルギーシステム材料研究機構は昨年3月に発足した新しい研究組織です。「環境・エネルギーシステム材料」とは,私たちの生活している環境を維持しながら私たちが安心・安全に暮らし,さらに生活を向上させてゆくために必要なエネルギーを供給するシステムとシステムに必要な材料のことです。
 東日本大震災後,日本のエネルギー政策では環境とエネルギーを両立させ,安心・安全な生活環境を作り上げる努力が必要であると強調され始めています。この考え方をいち早く取り上げ,室蘭独自の新しいアイデアとこれまでの研究の積み重ねを活用する為に大学が一丸となって活動する組織を作り上げようと努力しているところです。
 最も重点を置いて研究してきたのは高い安全性とすぐれたエネルギー生産効率を有する原子力発電システムや核融合発電システムのために必要となるセラミック複合材料の研究です。私たちが開発し,工業化を進めているセラミック材料を原子炉の炉心に用いる事で,燃料被覆管のジルカロイという金属の使用をやめることができます。これによって,福島で起こったような水素爆発の防止や炉心の溶融の防止ができます。将来の基幹エネルギー源として期待されている核融合では原子炉停止時に問題となる発熱は無く,原子炉のような高い水準の放射性物質の形成を伴わないより安全な発電システムができます。この研究は大きな国際協力への参加という形で推進されています。
 この材料はより高性能なロケットエンジンの開発にも大きく貢献します。昨年,試作を行って,現在評価中の中型ロケットエンジン用の全セラミック・スラスターノズル(図1)にもこの材料は使われています。このロケットエンジンは冷却を必要としない構造ですので,スペースシャトルの打ち上げ時に起こったような爆発事故を起こすことがありません。
 この材料の大量生産のカギとなる中間製品の製造ラインは昨年度末に完成しており,世界で唯一の専用連続製造設備として活躍しています。
 2012年1月には新しい地熱発電システムの原理を実証する実験を行う予定です。このシステムの特許申請はほぼ最終段階に来ており,承認されれば大きな影響力を持つシステムが私たちの(我が国の)ものとなります。新しい地熱発電システムでは地下から熱を取り出すだけで,現在の地熱発電で問題となっているような環境破壊は無く,システムの損傷のほとんどの原因は解決されています。このシステムに用いる新しい超耐熱高分子複合材料パイプの製造にも成功しています。現在は大学の設備の制約で1mの長さのパイプが最長ですが,将来的には10mから20mのパイプを製造する設備を導入したいと考えています。
 これらの活動の中に学生諸君や学外の社会人も参加しており,外国からの研究者の参加も増えています。




               
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更新年月日:2011年12月13日 作成担当部局:企画・評価室 問合せ先:koho@mmm.muroran-it.ac.jp