高機能炭素ナノ材料の創製と電気化学エネルギー変換デバイスへの応用
―持続可能な社会の構築に向けて―

 
応用理化学系学科 田邉 博義


 応用理化学系学科応用化学コースでは,化学とその工学を基にして化学の専門知識とバイオシステムの基礎知識を活用して広い視点から科学技術の未来を開く人材を養成することを目標に,物理化学,有機化学などの化学系から化学工学基礎・反応工学などの化学プロセス系の専門科目,生物化学系基礎科目まで幅広く展開し,新しい化学合成法の発見や化学プロセスシステムの高効率化を目指した教育と研究を行っています。(「平成23年度室蘭工業大学概要」より)
 以下に,応用化学コースの研究室で行われている研究の一例として「高機能炭素ナノ材料を活用した燃料電池,二次電池の開発」について簡単に紹介します。

 環境・エネルギー問題を克服し,環境との共生がグローバルな課題として活発に議論されています。化学物質がもつエネルギーを電気エネルギーに変換し電気を直接取り出せる燃料電池,蓄電池等の電気化学的エネルギー変換・貯蔵技術は,その課題解決のための技術としてますます重要性を増しており,低炭素社会実現におけるエネルギー事情を大きく変革する可能性をもった一つのキーテクノロジーとなっています。
 しかし,燃料電池は,燃料(“水素”)と酸化剤(“酸素”)を持って来て小手先で達成できるほど簡単ではありません。その特性を生かすには,構成要素たる電極触媒,電解質膜,膜接合体(MEA)の機能向上,新規材料の開発は必須の条件となります。電池反応の効率的な進行のためには,反応関与物質,電子,イオンの全てがスムーズに反応サイトに供給される場所(界面)の形成・制御が求められます。一方,電解質膜には,目的とするイオンのみが選択的かつ十分に伝導され,燃料と酸化剤の混合を防ぐ薄膜であることが求められます。
 当研究室では,以上の基本的条件を考慮し,電解質膜/電極触媒層のナノ・ミクロ構造設計による固体高分子形燃料電池(PEFC:図1)部材の高性能化を以下のように検討しています。

●現状のPEFCは,資源的制約のある白金,白金合金などを電極触媒として多量に用いやっと実用に堪えられるようになっていますが,白金の資源量は乏しく高価格なので,PEFCの本格的な普及のためには非白金系触媒の開発が必要不可欠になってきます。この触媒材料開発のため,カーボンナノチューブ(CNT)という高機能材料を活用したナノコンポジット電極触媒に着目して研究を進めています。CNTは,骨格成分固有の特性に加えて極小サイズ特有の物性,高い表面活性,物質輸送・分離・貯蔵機能,細孔の内外壁の役割分担機能などの発現が期待できる機能材料です(図1)。これと高分子,非白金系金属ナノ粒子をコンポジット化することで高性能化を達成します。
●電解質膜には,中温域での作動よる電極反応速度の向上,電極触媒被毒性の軽減,非白金系触媒への代替,燃料の多様性などの利点が期待できるポリベンズイミダゾール膜を合成し,先に述べた非白金系電極触媒を戦略的に組み合わせた燃料電池部材の検討をしています。
●自然界に豊富に存在する糖などを燃料として利用でき,常温かつ中性で作動するバイオ燃料電池のナノ材料を活用した電極触媒の研究も行っています。

 また,二次電池は,エネルギー貯蔵庫として低炭素・省エネ社会の実現になくてはならないものです。マグネシウム二次電池は,高いエネルギー密度(体積あたりでLiに比べ約1.9倍の容量密度をもつ)が期待され,Liに比べ資源の豊富さ,取り扱いの容易さといった特徴があり,ポストリチウムイオン電池として近年注目を集めています。研究では,その標準電位,電気容量の大きさを考慮し,電極材料を中心に研究を行っています。
 材料の裏付けのない研究開発の帰趨は,歴史の教えるところであることを肝に銘じ,理想に向けての新規材料(電極触媒,電解質膜,MEA)に関する研究を進めています。




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更新年月日:2011年10月7日 作成担当部局:企画・評価室 問合せ先:koho@mmm.muroran-it.ac.jp