01「MONOづくり」ビジョン

「創造的な科学技術で
夢をかたちに」のを語る

室蘭工業大学は、北海道における理工学系単科大学として、「創造的な科学技術で夢をかたちに」を基本理念としています。

そして、北海道の将来に貢献することを大学のミッションとしています。

本ビジョンは、「かたち」にすべき「夢」を語ります。

2060年ごろとは、今の大学生が60歳台となっているころです。すなわち、彼らが社会の中で重要な役割を果たしているころです。

私たち、室蘭工業大学は、「学生諸君の将来の果たすべき役割や実現していきたい姿を描けないようでは、大学の役割を果たすことができない」と、考えています。

また、2060年ごろは石油に代表される化石燃料が 「限りある資源である」ことが確実に認識され、そのための対策が行われている時代であるとも考えています。

もう一つ2060年を考えた理由があります。
それは、経済循環や科学技術の大きな変革の波は約40年から50年であることです。

このビジョンで、40年後、すなわち 2060年の北海道の姿を、私たち大学の研究者が描き、これを本学の理念である科学技術でかたちにしたい 「夢」としようと考えました。

これは、シンクタンクなどによる未来予想とは異なる視点をもった科学技術の専門家が考える将来像です。

北海道を「世界水準の価値創造空間」にするためのビジョン

人口減少・高齢化が急速に進む北海道において、その将来像を作る努力が進められてきています。
その取り組みの一つに北海道総合開発計画(2016年3月29日閣議決定)があります。
この北海道総合開発計画では2050年の将来を見据え、北海道を 「世界水準の価値創造空間」とすることを目標としています。
また、北海道総合開発計画では、次の3つの目標が掲げられています:

  • (1) 人が輝く地域社会
  • (2) 世界に目を向けた産業
  • (3) 強靱で持続可能な国土

「北海道を世界水準の価値創造空間とする」という国や北海道が定めている計画・戦略の目標の実現に向け、 この 「MONO」づくりビジョンでは、本学の役割を明確にし、本学の研究戦略を策定するための基本としようと考えています。

SDGsと「MONO」づくり

2015年9月の国連サミットで採択された持続可能な開発目標 (SDGs) は、持続可能な世界を実現するための17の ゴール・169のターゲットから構成され。地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGs は発展途上の国々のみならず、日本が取り組まなければならない目標を示しています。私たちは。このビジョンを、将来の北海道におけるSDGs達成への科学技術側からの貢献を示すものにもしたいと考えています。

02技術屋が描く2060年の世界

イノベーションが景気変動の波をつくりだしてきた
「コンドラチェフの波」を語る

ロシアの経済学者コンドラチェフは 「景気は周期的に変動し、その要因としてイノベーションが大きな役割を示してきた」と考えました。この考えに基づき図のような景気変動とイノベーションの関係が報告されています。これまでに出された4つの報告を整理してみると、下の表のようになります。
「2060年ごろに向けての、次の波はどんなイノベーションによって生み出されるでしょうか?」この問いの答えを用意するために、下の表の中の、動力源や輸送に関連するイノベーションを波ごとに整理してみます。そうすると、

[第1波:蒸気機関]→[第2波:鉄道]→[第3波:エンジン(自動車)]→[第4波:航空、コンピューター]→[第5波:デジタルネットワークコミュニケーション技術]

の順にきていることがわかります。次の波を生み出すイノベーションは、物質・エネルギーの技術と情報技術が強固に結合した『情報化した物質・エネルギー技術』ではないかと、私たちは考えました。
また、表の中の素材に関連するイノベーションは

[第1波:繊維・綿]→[第2波:鋼]→[第3波:化学]→[第4,5波:石油化学]

と展開しています。近い将来、化石燃料が限りある資源と認識されると、化石燃料の価格が高騰し、原油を原料として石油化学技術で製造されるプラスチックのような素材を安く・大量に作ることが難しくなります。そのため、再生可能なバイオマスのようなものを原料としてさまざまな素材を作る生態化学ともいうべき技術や、分子や原子の配列を操り、素材を製造するMateri-Ome技術が次の波を生み出していくと、私たちは考えました。

コンドラチェフの波の検討例

(The Economist. Aug 11th, 2014: Innovation in Industry Catch the waveから日本語版を作成)
図には5つの景気の波とその波をもたらしたイノベーョンが書かれています。
現在(2019年)は5つの目の波の終わりの時期にいると、この著者は示しています。

視 点1
エネルギーの視点

■ 2060年はエネルギーの制約を認識した社会

丹保さんは次のように指摘しています:「原油生産のピークは2030年代と予測されている。そして、2060年代に至ると化石燃料の資源制約が極めて強く認識された社会となる。」(丹保憲仁:大変革の21世紀近代の終焉から後(脱)近代への発進、公益財団法人はまなす財団、2018年 3月)

■ 再生可能なエネルギーを使う社会

エネルギー源が化石燃料から、水力、風力、太陽光・熱やバイオマス、地熱等になっていると、私たちは考えています。

■ エネルギーをうまく使う社会

3Dプリンターの普及により、消費地の近くで「もの」が簡単に生産されることになり、「もの」を運ぶためのエネルギーがほとんど不要な社会になります。また、情報技術との連携により、エネルギー効率が向上しています。現在でもガスを用いてまず電気を作り、そのあとの残ったエネルギーは電気は作れないが温水なら作れるので、給湯に用いる(エネルギーのカスケード利用と呼ぶ)仕組みがあります。このように、エネルギーの質を考えた、賢いエネルギー利用や、質の悪いエネルギーをうまく使うことができるような社会になります。

■ エネルギーをうまく貯め、うまく配る社会

「今、どこで、どんな質のエネルギーが必要か」をセンサーが捉え、必要な量と質のエネルギーが配られる世界になっています。そして、この仕組みの中には、高効率・高容量の蓄電池のようなエネルギーの貯蔵システムも利用されています。

■ データ消費とエネルギー消費が同価値化した社会

「情報技術と強く結びついたエネルギー技術が人類活動を支えています。データを利用して、エネルギー消費を減らしています。この意味で、私たちは「データ消費とエネルギー消費は同じ価値を持った社会」と呼びます。

視 点2
環境・資源管理の視点

■ 資源を消費しない「MONO」の長寿命化が実現した社会

エネルギーの制約により、地球規模での大量輸送は現実的ではない社会となり、なるべく資源を消費しない社会になっていると、私たちは考えます。すなわち、社会で使用するインフラや個人が使用する多様な 「MONO」の超長寿命化と徹底した高効率の循環利用が進んでいるということができます。

■ ストック系素材を大事に使う社会

私たちは現在、ストック系の素材をさまざまな用途に利用しています。このストック系素材は産地が限られていることが特徴で、2060年には遠くから運んでくることがエネルギー制約から難しくなります。そのため、まずは超長寿命化が図られ、長く大事に使う社会になっています。そして、寿命を迎えたものは、破壊・再生され、北海道というような小さな領域内での循環利用が行われていると考えています。分子や原子レベルまでの破壊・再生方法が実用化されています。本当に高い価値を持つ素材のみが広く世界に流通します。

■ フロー系素材をものづくりの基本にした社会

現在私たちが使用しているプラスチックのような石油化学製品は、石油資源が乏しくなるので生産が難しくなります。そのかわりに、光合成によって作られた有機系炭素化合物は多様な分子化学構造を有しており、この化学構造をうまく利用して、多様な素材が生産される社会になっています。

ストック系素材とフロー系素材

私たちが使用している素材はストック系素材とフロー系素材の二つに大別することができます。

●ストック系素材とは鉄やコンクリートのような無機系素材で、人類が利用していない地下資源等も含めて考えると、その地球上での総量は一定のものです。

●フロ一系素材とは、大気中の二酸化炭素を原料として光合成により作られる有機系炭素化合物をここでは指します。一般的には「バイオマス」という言葉で呼ばれているものです。この「バイオマス」は地球上では太陽光により常に合成され、微生物をはじめとする地球上の食物連鎖による生化学的反応や燃焼のような化学反応でもとの二酸化炭素に戻っています。つまり、循環しています。そのため、ここではフロー系素材と呼ぶことにしています。

視 点3
モビリティの視点

■ ひと・MONOのモビリティが3次元化された社会

平面(2次元)的に張り巡らされた道路や鉄道の線路の維持・管理には多くのエネルギー・時間・労働力が必要です。これからは、点と点をつなぐインフラに多くの資産が投資され、空 (3 次元)を飛んで、ひとやMONOが移動する社会が実現します。

■ ドラえもんの「タケコプター」社会

空を飛ぶ道具は高価なので、みんなで共有(シェアリングエコノミーと呼びます)し、必要な時に必要な場所へ移動(個別オンデマンド移動と輸送と呼びます)できる社会になっています。

■ 宇宙でエンターテイメントを楽しむ社会

私たちは芸術や知的好奇心を大事にしています。これは将来も変わらないと考えます。ヒトの精神解放のーつとして宇宙に対する興味が高まり、地球外への旅行、宇宙空間を用いたエンターテイメントが実現します。

「MONO」にIDがついた社会

ブルームバーグやINGは、2050年ころに、世界の物流の1/4以上は3Dプリンターを用いたデータ物流になると予言しています。つまりこれまで船などで運ばれていた車や家電などは、単にデータだけが送られ、部品の作成や組み立ては現地で行う方式が進むということです。この時に重要なのは、同じデータで作られたMONOは全く同じものになるということです。そうすると、ある型の自動車のブレーキに同じID をつけると、故障履歴などとIDを紐付けることができないことになってしまいます。ブレーキの材料など、私たちが使っている自動車一台ごとの部品に違ったIDがつくことにより、品質管理が格段にしやすくなり、いいMONOが流通するという状況が加速されます。購入するあるいはレンタルする車の過去の状況がIDで簡単にわかります。つまり、IDは現在の信用に代わる役割も果たすことになります。これらのIDを利用してより信頼性が高く、健全な中古車市場を形づくることができる社会になります。

2060年の農家の生活

農園主Aさんの一日を紹介しましょう。彼の農園は、25haを超える規模の大規模農園です。10人ほどの社員と20名ほどのアルバイトにより運営されています。主力商品は、トマトやキュウリなどの野菜です。栽培から選果、パッキング、販売先への輸送までも一括で行っています。彼の農園は、年間売り上げが2億円、計上利益率10%強を実現しており、30代半ばの彼の年収は約550万もあります。
彼の仕事はいわゆる畑仕事と呼ばれる農作業中心ではなく、環境制御コンピュータの設定・操作、収量予測、アルバイトの就労スケジュールの管理、販売先とのやりとりといった農園の運用全般に関わる幅広い業務です。彼の農園では、AIやロボット、各種センサー技術が積極的に導入されており、単純な肉体的負担の重い労働はありません。その一方、最新の栽培ノウハウ、栽培のための最新機器の調査や導入、さらには市場ニーズの調査、分析に基づく栽培戦略の策定といった農園経営の重要な部分に関わる業務内容が求められています。彼の勤務時間は朝9時から夕方5時までとほぼ決まっており、終業後には子供の保育園・幼稚園への迎え、夕食の準備など子育てや家事を担うことが十分可能な、仕事とプライベートが両立しやすい働き方となっています。

03北海道を「世界水準の価値創造空間」にするために

目 標1
北海道をメトロポリスと基礎生活圏域からなる
新しい自律分散型地域構造とする

国立社会保障・人口問題研究所による北海道の将来人口推計によると、2015年国勢調査では約538万人であった道内人口は、2040年には約419万人、2060年には約308万人まで減少するとされています。

■ メトロポリス:北海道のハブ

札幌~苫小牧周辺の道央圏をメトロポリスと呼びましょう。ここは、世界を結ぶ空路や北極圏航路等の海外との交易機能+企業の本店機能+プロスポーツや劇場などの文化活動機能を持ち、道内の基礎生活圏達と高速ネットワークで接続された、北海道のハブです。

■ 基礎生活圏:北海道の農林水産業を支える場所

地域拠点となる基礎生活圏域を再構築しましょう。災害に強く、教育や高度な子育て、高齢者の生活環境、医療、文化活動を支える生活拠点空間とそれを囲む生産空間から構成されます。ここでは、自然再生エネルギー、水・食料、経済が循環し、生活の質が高く維持されます。生産空間は、農林水産業の生産現場だけではなく、美しい自然や景観が保全され、世界中の多くの人々を魅了する価値ある空間です。そして、自然再生エネルギーの地産地消が行われる脱炭素社会のテストフィ ールドとしての役割も持ちます。

■ 生産空間:自動化の進んだ農林水産業

農林水産業の自動化とそれに応じた働き方が文化レベルで普及し、より品質が高い農林水産物の生産や加工が行なわれます。

■ 道央圏メトロポリスと基礎生活圏域、そして世界へのネットワーク

自動運転車両や空飛ぶ車といった交通手段、都市間を高速で結ぶ公共交通など、多数の交通手段を柔軟に組み合わせた、人間の生活パターンに応じた多様な移動のサー ビス化が進みます。また、農林水産業を支えるネットワークも必要です。鮮度を保ったまま、海外市場に直接輸送できる物流インフラがその例です。道路や港湾施設といった物流インフラには、モノを単純に移動させるための機能だけではなく、何がどこに流れているのか、その状態はどのようになっているのかまで可視化、制御できる機能も付与されます。

目 標2
北海道を付加価値の高い素材の世界への供給基地とする

■ 研究開発型中小企業の競争力強化を図る

現在、北海道企業の99.8%が中小企業です。付加価値の高い素材を生産するためには、弛まない技術開発への投資と技術力向上が必要です。中小企業のネットワーク化を図り、大学のような研究開発機関を核としたグループを形成し、中小企業を研究開発型にしていきましょう。

■ 北海道の優位性を発揮できるフロー系素材の利用

化石燃料系を原料とした、プラスチックに代表される現在の石油化学は人間生活に欠かすことのできない素材を生み出しています。しかし、化石燃料の枯渇・エネルギー構造の転換とともに、バイオマスなどのフロ ー系素材を原料とした、カ ーボンナノファイバーをはじめとする機能性素材の製造が主流となります。フロ ー系素材を多く生産する、北海道こそがその重要な生産基地とならねばなりません。

目 標3
北海道を高品質・高機能食素材の世界への供給基地とする

■ 病気を生み出しにくい食生活を常識にする

我が国の農業・食品産業は、戦後の十分な栄養源を確保するための大量生産に始まり、人体に有害な物質を極力含まない安全安心な食品の生産、そして、より美味しい食品の生産、さらにはより高機能な成分を含む食品の生産へと変遷してきました。

■ 食品に含まれる機能性成分とそれらの複合的作用の情報を食品とともに供給する

北海道は、全国の農地面積の1/4を占め、我が国最大の食料供給基地です。もし、北海道で生産される食品に含まれるビタミンや機能性成分、また、それらが複合的に作用して生み出される機能を、迅速、正確に評価し、食品と共にその情報を消費者に提供できれば、食品はより付加価値の高いものとなります。そのためには、革新的なセンシング技術が必要です。

目 標4
北海道で物質とエネルギーの自立化とID化をめざす

■ エネルギーの自立が必要です

2017 年度の北海道の貿易赤字 8000 億円のうち、6300 億円が鉱物燃料の輸入によります。北海道は風カ・地熱・太陽光といった再生可能エネルギーの宝庫です。情報技術との融合によって、エネルギー消費を抑える努力も必要です。エネルギーにはID が付与され、エネルギーの質・源を選択しながら賢く利用します。

■ 物質の自立も目指しましょう

さまざまな社会インフラや建造物、MONO の超長寿命化を実現しましょう。そして、「補修をするか・新しくするか」を判断する仕組みを導入し、MONOの利用をやめる場合には、「MONO 破壊図」に則って適切に破壊し、新たな価値を付加する仕組みを用意しましょう。

エネルギーにIDがつくと

家庭や企業の電気エネルギーはどうやって発電されたものかは意識されていません。一部契約によって「グリーンエネルギーを使っています」と宣伝する場合もありますが、本当にそこで使っている電気が例えば室蘭の風力発電所で 作られたものかどうかは判別できる仕組みとはなっていません。これは、電気は貯めることが難しいため、ほとんどは 発電と同時に消費されるという性格を持つためです。リアルタイムで流れている電気にIDを付ける(電気に色を付ける)とどんなことができるようになるでしょう。電気を使う人がIDを指定して使うことができます。これにより、価格やCO2の環境負荷も考えた選択ができるようになります。また、電池の技術が進んで蓄電池などに必要な電気を十分に貯めることが可能になると、電気の地産地消ができ効率的、経済的そしてエコな電力消費が実現します。

目 標5
北海道を宇宙にむけた基地とする

■ 宇宙旅行の先進地にしましょう

国内旅行や海外旅行へ行くような感覚で宇宙旅行へ。遊園地に行くような気分で無重力体験飛行を楽しむ。家族や気のおけない友人と一緒に宇宙ホテル滞在ツアーに参加する。宇宙への出発・帰還基地を作ろうとした場合、北海道は東または南にひらけた広大な敷地を有し、漁場や航路との干渉が少ないなど、建設に適した多くの条件を満たしています。北海道に宇宙港を作りましょう。

■ 宇宙への玄関口としての宇宙港(スペースポート)

ロケットの開発・運用に携わる人たちだけでなく、多くの観光客や取材・マスコミ関係者が集い、人々の心を霙わせ、緊張感と高揚感に包まれる場です。物資や人の往来が活発化し、近隣地区にはホテルも整備されます。ロケットや人工衛星などを作る機械系産業、電機系産業、地上設備や装置の整備を担う土木・建築・プラント・エンジニアリング系産業、電気や水などのインフラ・エネルギー系事業も集まってくる場所になります。

目 標6
北海道を大いなるテストフィールドとする

■ 北海道は昔からフロンティア精神にあふれる地です

広大な大地、豊かな自然、道民のオープンな性格、東京や大阪という影響力の大きい地域から地理的に離れていること。それでいて、飛行機を使えば日帰りで東京往復ができるという恵まれた地域です。北海道は面積で日本の22%に当たる83,456 km²でありオランダの倍くらい、人口では552万人でデンマーク、フィンランドと同じくらい、オランダの1/3くらいです。

■ すでに、チャレンジは始まっています

大樹町で成功した小型ロケットの打ち上げ基地、自動運転車を用いた交通サービスの実験などすでにいくつかの分野では成功例も出つつあります。

確かな研究力をベースとした教育力で未来を描く

室面工業大学では、2019年4月に工学部から理工学部へと改組再編を行い、AIやデータサイエンスなどについての工科系大学にふさわしい高度な情報教育を全学的に取り入れるなど、これからの時代に必要な知識に裏付けされた人材の輩出に向けた大きな教育改革を行なっています。
これからも、室蘭工業大学は、確かな研究力とそれをベースとした教育力で、MONOづくりビジョンで掲げた未来の実現に向けて、北海道地域の発展に貢献していきます。
北海道の未来をわたしたちとともに創っていきませんか。
皆さまのご支援、ご協力よろしくお願い申し上げます。

室闇工業大学長 空閑良壽

04北海道の将来のために室蘭工業大学がめざす科学技術貢献

貢 献1
自律分散型地域構造を構築するための研究

自律分散型地域構造は、人口20万人~30万人程度の地域を基礎生活圏とし、都心部までの移動時間をおおよそ1時間程度の範囲に収め、それを高速ネットワークで接続させる国土の時空間構造の提案です。新しいモビリティ技術により、小人口社会であっても自律可能な人口を維持し、自然再生エネルギーの利用拡大を図り、域内消費を均衡させることで、文化的に豊かで、エネルギー的に頑強な地域構造の形成を進めるための研究が必要です。これにはモビリティの進化だけではなく、エネルギー技術の進化、これらを結びつける情報技術の進化が必要となります。国土空間の中で北海道が果たすべき役割に着目した、データサイエンスと融合した計画支援プラットフォ ームの構築と、それを用いた戦略的な空間整備技術の研究が重要となります。また、基礎生活圏の機能を維持・管理し、進化させていくためには、情報・エネルギー・物質の全てに精通した高度な 「コミュニティ・ エンジニア」ともいうべき人材の育成を行う必要もあります。

貢 献2
付加価値の高い素材づくりのための研究

これまでの本学の実績(高付加価値素材製造の合金配合や熱処理条件最適化と品質評価法開発、希土類をはじめとする、多様な元素の利用・ 回収技術の検討)をさらに発展させていく必要があります。その一つの例として、超長寿命化を想定した新しい複合材料の開発があげられます。また、北海道を新しい素材の供給基地としていくためには、中小規模の企業群のネットワーク化に必要な技術の平準化を図る方法が用意されねばなりません。産官学の連携による、新しいネットワーク形成が必要となるでしょう。また、分子・ 原子配列の制御のためのシミュレーション技術と高度な構造スキャン技術の連携法の開発も必要となります。化石燃料系を原料とした石油化学素材は、化石燃料の枯渇・ エネルギー構造の転換とともに変化を余儀なくされます。木質系 バイオマス等のフロー系素材を出発点とした、カーボンナノファイバーをはじめとする多様な機能性素材の製造プロセスを開発する必要があります。すなわち、フロー系素材に対する、接合・ 成形・ 分離技術の開発です。

貢 献3
高品質・高機能食素材供給基地のための研究

北海道の特徴的な産業である、農水産業・ 食品分野に特化した革新的センシング技術の開発と、それを用いた農水産業・食品分野のマテリオームマップ作成に挑戦することが重要です。具体的には、(1)食品に含まれる様々な物質の構造と機能を短時間に極めて大量に解析可能な革新的センシング技術の開発、(2)それらを活用したビッグデータベースの作成、(3)膨大な情報から、構造単位と機能単位を抽出するとともに、それらの機能性を維持、さらには向上させる栽培、加工、流通技術の社会実装、(4)様々な物質の相互作用により創生する機能の解析、および新たな機能性物質の予測デザイン、製造(5)これらの情報をまとめたマテリオームマップの農水産業・食品分野の作成、を行うことになります。

貢 献4
物質とエネルギーの自立化とID化のための研究

エネルギーの自立化を図るためには、エネルギーの製造・配分・貯蔵技術と情報技術の結合したシステムと、高度な省エネルギーシステムの開発が必要です。これらを達成するには、(1)出力が変動する再生可能エネルギー (VRE)の配分システム、(2)低質エネルギーの利用技術やカスケー ド利用技術、(3)エネルギー貯蔵技術の研究開発が必要です。また、人工光合成技術の開発により、家庭用・移動体用カーボンレスエネルギーヘと展開することができるようになります。物質の自立化に向けては、「『もの』の製造」→「道内流通」→「利用」→「道内流通」→「破壊」→「道内流通」→「物質の再構成」→「『もの』の製造」のループを作る研究が必要となります。なお、ここでいう 「破壊」とは、原子・分子レベルまでの破壊と、一定の機能を有する機能単位までの分解の両者を指します。また、物質の状態を測定するセンシング技術開発も必要です。加工・分解の技術開発のゴールはスーパー3次元プリンター、シュレッダーというハー ドと3次元プリンターのインクに相当する多様な素材、ならびに世界標準化された一定の機能を保持する機能単位を作ることになります。素材に関わる技術は、原子・分子スケールでの接着・成形・切断・分解の技術でもあります。また、機能を有する素子やパーツのような機能単位については、世界標準規格ともいうべき標準化技術とシステム要素としての機能単位を対象とした、接合・成形・分離技術です。超長寿命化も重要な要素となります。このための技術はライフサイクル設計技術というべきもので、「もの設計」・「もの破壊」・「物質設計」を総合化した「もの」の一生を設計する技術の開発に進むことになります。このようにして、物質の循環・自立のシステムの情報化と階層化が進み、かつ、社会システムとしての総合化が可能となります。

貢 献5
宇宙の基地とするための研究

宇宙へのアクセスは、ロケット技術と有翼の航空技術が高度に発展して実現します。また、高頻度での運航を前提とする宇宙観光旅行では、機体そのものの信頼性だけでなく、あらゆる事態を想定した上で、緊急帰還などの非定常運用も含めた輸送システムの構築が必要となります。そして、宇宙輸送系においては、エアブリージング(Ramjet, Scramjet)エンジンや複合サイクルエンジンの開発によりスペースプレーンが実用化され、身近で手軽に宇宙旅行を楽しむ時代となります(宙の移動革命と呼びます)。2地点間の高速・大量輸送においては、超音速エンジン、軽量・耐熱材料、ソニックブーム低減などの技術革新が必要です。一方、身近な移動手段については、エアシェアリング+オンデマンドによる “タケコプター社会”の実現に向けた、3次元輸送における多数機運航管理と衝突回避の技術、AIを活用した自律制御や無人機の運行管理システムヘと展開するための技術開発が必要です。

05世界に先駆けて新しい学術基盤を創生するための研究

研 究1
Materi-ome Information Cloud

Materi-ome(マテリオーム)とは、material(物質)とome(総体)を 合わせた造語です。人間の生活を取り巻く様々な物質(食物、糞尿、薬、車、飛行機、家、スマホ…etc.)の構造と機能、そして、これらの変化やお互いの関係性を総体として考えるものです。生体系の 同化経路に対応するMONOの設計図、異化経路に対応する破壊図を総合化して代謝MAPというべきマテリオームマップを作るものとも言えます。マテリオームマップ作成のためには、まずは、様々な物質の構造、状態、機能をできるだけ短時間で解析・情報化するセンシング技術の発展が必須です。さらに、これらの物質間の相互作用に関する情報を加え、それらを多面的観点から取りまとめるためのデータベースプラットフォームの構築も必要となるでしょう。そして、無機・有機素材から各種産業・ 活動(農業、食品、医療、建築、乗り物、電気製品…etc.)での製造や利用に関するすべての情報を、マテリオームという統一したものの見方で整理し、高解像なマップを作っていくことになります。

研 究2
IDization

マイナンバーのように国民にIDをつけるという営みは多くの国で昔から行われてきました。デジタル革命と相まって、同じような物が容易に複製でき、また一方で著作権のようにオリジナルを作った人へのリスペクトが求められる時代、IDを人だけでなくMONOにつけることは非常に重要です。さらに再利用を効率的にする観点からもIDへの期待が高くなっています。これまでの大量消費時代では多様性は無視され、同じ品質で安価ということが重要視されてきました。今後はそれぞれの個に適合する物やサービスが求められることになります。そこではMONO に関係する人のプライバシーを保護しながら、人やMONO、エネルギーなどのID体系を設計していく必要があります。IDを付けることで、「MONOの設計、生産、消費、破棄あるいはリサイクル」という「MONO」の一生の設計が可能となりますが、その実現にはセキュリティや社会的受容性がきちんと設計され、かつオープンなプロセスを用意していく必要があります。